種明かしと契約
20200709 魔術陣の説明の部分を大幅に書き直しました。
昏睡からさめた三日後。アキラはアレックスの呼び出しに応じ朝一番にギルドへとやってきていた。
「弁当持参や言うたけど、料理人連れてくるとは思わへんかったわ」
「勝手についてきたんだ」
「家にいたら片目を理由に病人扱いで料理もさせてもらえねぇんだよ」
コズエの作った黒い眼帯をつけたコウメイは、鍋とフライパンに食材と調味料の一式を持参していた。
「まあ、そのうちコウメイも呼び出す予定やったし、順番に話し終わらすか」
「台所あるんだろ、ちょっと貸してくれ」
「ええけど、そんかわりワシの昼飯も作るんやで」
アレックスはギルドロビーの奥にある二つの扉のうちの一つを開け、小さなカマドのある台所にコウメイを押し込んだ。
「アキラはこっちや。そろそろ来よる時間や」
もう片方の扉の中はアキラが転移して転がり込んだ部屋だった。あの日に血で汚した絨毯は地味な単色のものに取り替えられている。小さなテーブルと椅子の他には何もないような殺風景な部屋だった。アキラに椅子をすすめたアレックスは正面にあるカーテンをめくった。
「鏡?」
「遠見鏡や。誰かのせいでここの転移陣が不安定になってしもて本部から転移してこれへんかったんや」
仕方ないので直接の尋問ではなく遠見鏡を使い、危険極まりない転移魔術の検証を行うのだ。
「こいつも結構な魔力を消費する魔道具なんや。金かかかっとるんやで」
使用料を請求したいくらいだと言われ、アキラはそっと目を逸らせた。
ほどなくして壁に掛けられた丸い姿見の鏡面が揺れ、ゆっくりと色が浮かび上がり見覚えのある女性の姿を映し出した。
「……ミシェルさん」
『お久しぶりですわね……前にも増してキラキラしくなってまぁ。絵姿に残したいくらいですわ』
最後に会ってから半年ほどだが、何年かぶりのような気がしていた。ふんわりと丸みのある笑みはアキラの変色を面白がっているようだ。
『魔武具はなんとか作動しているようで安心しましたわ』
「これにはとても助けられています。ありがとうございます」
耳に揺れる魔石と銀の飾りに指先で触れた。これのおかげで種族的なトラブルは回避できていたし、精神的にも随分と支えられている。
『作品を大切にしてもらえるのは、製作者冥利に尽きますわね』
二人が懐かしく言葉を交わしている間に、アレックスが空いている椅子に腰を下ろし、転移魔術陣の書き写された羊皮紙をテーブルに置いた。
「準備は整うたで」
アレックスの言葉で空気が変わった。
『アキラ、その島で何が起きようとも我がギルドが咎めることはありません。ただし、転移魔術陣の改編に関しては見逃せません』
まろやかな笑みを浮かべていた彼女が、一転厳しくアキラを見据えていた。まずはアキラの言葉で何があったのかを語るようにと命じ、事情聴取が始まった。
+++
アキラへの事情聴取は、ミノタウロスとの戦闘については他のメンバーから聞き取った内容と齟齬がないことだけを確認して早々に終わらせ、残りは全て転移魔術の詳細説明に終始した。
「俺の知っている転移魔術陣はミシェルさんの執務室のものだから、初めはそちらへ飛ぶつもりでした」
『こちらへ来なかったという事は、遠すぎたのね?』
「遠いというよりも、細くて繋がらなかった……という感じでしょうか。俺一人なら辿って行けても、六人全員では無理だと、危険すぎると判断しました」
「どうやってこっちの魔術陣に割り込めたんや? 鍵かかっとったはずやで」
そもそも転移魔術陣は同一規模の術式同士でしか往来できないし、そのための鍵が編み込まれている。鍵の合致しない魔術陣間では転移できないはずなのだ。ちなみにミシェルの執務室の転移魔術陣は、そこを中心に多方向へ道を開いたものだ。同等の規模、鍵を持つ魔術陣であれば、アレ・テタル限定ではあるがどこへでも転移可能だ。だがナナクシャール島のものは、限られた魔術陣同士の双方向のみに限定した鍵がつけられた、出入り口の固定された転移陣だ。
「転移魔術陣の構成は、術式の七割が転移を可能にする魔力操作に関するもので、二割が転移先の管理情報、一割が鍵、で間違いありませんよね?」
『その通りですわ』
「俺が唯一覚えているものがミシェルさんへ繋がるものなので、それを九割ほど書きあげたところで、安全な転移は無理だと諦めました。それで転移先情報を消した状態で魔力を放って、近くにある転移魔術陣を探しました」
さらりとしたアキラの説明を聞き、アレックスは間の抜けた顔で、ミシェルは眉間を揉みながら問い返していた。
「探す、て?」
『……どうやったの?』
「書きかけの魔術陣越しに魔力を広く薄く放って、自分の魔力に反応した魔術陣の中から、最も近くで反応したものに目印をつけて、転移先情報を引っ張り出して書き写しました」
アキラがイメージしたのは船舶ソナーだ。隙間なく広範囲に魔力を放ち、転移先を探った。自分の魔力と相性が良く、術式の癖が似ていて最も近くにあったのが、この部屋の魔術陣だった、と。アキラの説明を聞いたアレックスは「無茶苦茶や」頭を抱えた。
「か、鍵はどうやったんや?」
「魔術陣に魔力をめぐらせて術式を読み取り、写し取りました。術式に組み込まれていた鍵が七つあって、そのまま複写しても弾かれそうだったので、鍵を改編して術式を上書きしました」
ここですね、とアキラは卓上に置かれている羊皮紙の一部を指差した。今は使用中止されている転移魔術陣をじっくりと目で追ったアレックスは、ただでさえ細い目をさらに窄めて深々と息を吐いた。
「……こんな簡単な改編で鍵が書きかわるんか」
「大きく変えると術式のバランスが崩れそうだったので」
『アレックス……どうなの?』
「なんなんアキラは? 正規に学んだわけやないんやろ、何でこんな事できんねんっ」
「何でといわれても……魔力をめぐらせて探るのはアレ・テタルで身につけた事だし、出来そうな方向に魔力を注ぎ込んでいったら、結果的にこうなっただけで」
アキラの説明を自身の執務室の転移魔術陣で試したミシェルは、額を押さえて深々と息を吐いた。
『乱暴ですが、やり方は間違っていないようですわね。咄嗟に思いついて実行できるかどうかはともかくとして』
「魔力バカみたいに注ぎ込んで力技でやりよったんやろ。そりゃ色も抜けるはずやわ。普通は考えへんで」
「俺は生還確率の高い方を選んだだけです」
転移している間は魔力を途切れさせてはいけない。はかなく細い繋がりに六人を託し、遠くアレ・テタルまで転移させるだけの魔力を、アキラは供給し続けることはできないと思った。だから限りなく短時間で済む転移陣を探したのだ。魔力の相性が良く、距離が短ければ全員を確実に避難させられると判断したから。
そう説明したアキラに二人は疲労困憊のまま何とか笑顔を作った。
『流石エルフですわね』
「エルフならできて当然みたいに言わんといてっ」
ドンッと拳で羊皮紙ごと机を叩いたアレックスは鏡面の向こうのミシェルに訴えた。
「こんな悪辣な改編に魔力の力押しで色々ぶち壊すようなんはエルフの流儀とちゃうわっ!」
「ん?」
『あら、知らなかったのですか?』
引っ掛かりを覚えたアキラはまじまじとアレックスを凝視した。伸ばしっぱなしのぼさぼさの黒髪に青白い肌、開いているのかも分からない細い目の人族の魔術師。
「大っぴらにしてへんだけで、隠しとるわけやないしな」
そう言ってアレックスは頬にかかった髪を耳の後ろへとかき上げた。赤い魔石の粒が耳たぶで揺れている。
「同じ……魔武具?」
「せや。悠縁の森を追い出されたエルフのアレックスや、お初に?」
ピアスを外したアレックスは種族特有の長く伸びた耳をピクピクと動かして見せたのだった。
「エルフだったのか……」
意外だと驚くよりも、なるほどと納得するアキラだった。ちょくちょく引っかかる発言もあったし、何より島にいる他の魔術師たちは虹魔石を感じ取れていなかった。自分とアレックスだけ、その意味を深く考えればもっと早く気付けていたのだろうか。
「なあ、アキラはどこの森を追い出されたんや?」
「追い出されてる前提なんですか」
「そらエルフが人族に混じってこっちをウロウロしとったら、一族から追い出されたんや思うのは当たり前やで」
稀少で排他的で人族が嫌いで隠れ住んでいる、エルフとはそういう存在だと聞かされていたのだが、アレックスを見ていると事実は異なるような気がした。あるいは彼がエルフとしては異端なのだろうか。ともかく彼の発言から、エルフは一族ごとに異なる森(集団)で暮らしているのは間違いないようだ。
『アレックス、同族の情報交換は後にしてちょうだい。今回アキラが改編を成功させてしまった事で、転移魔術陣に綻びがあることが証明されてしまいました。これはとても困るのです』
「ギルド長は心配しとるけど、こんな無茶な改編ができる奴はそうそうおらへんで」
『貴方ならやろうと思えばできるのでしょう、アレックス』
「こない手間と魔力の無駄遣いみたいなことはせえへんよ」
発想には敬意を表するが、発動させるための過程はエルフの美意識が許さない、とアレックスが主張した。
「せやからミシェルはんが心配する必要はあらへんて」
『同じ手段で改編できるのはアキラと貴方の二人だけでしょうね、ですから不安なのです』
人族の魔術師には、その魔力量や力量からも、転移魔術陣の改編は不可能。可能な者はアレックスとアキラの二人だけ。アレックスは「する気はない」と言うが信用はできない。ではアキラは?
「……俺も同じ事をするつもりは在りません」
『では契約してもらえるかしら』
「契約?」
『転移魔術陣を無許可で使用しない、また勝手に改編をしない、と契約を結びたいのです』
「違反行為として処罰するのではなく?」
ミシェルは心外だとでも言うように何度も瞬きし、身を乗り出した。
『あなたのとった手段は、全ての魔術陣に適用できる可能性のある新しい技術です。ギルドは魔術師の研究を守り発展に協力する立場にあるわ、処罰をするわけがありません。でもアキラの技術は様々な点において危険すぎるのです。だからあなたが安全策や対抗策を含めて研究するというのならわたくしはいくらでも支援します。その気がないのなら、一旦技術をわたくしに預けて欲しいのです』
「俺にメリットがありませんね?」
研究題材としてミシェルに譲渡するのはかまわない。だが再び同じような危機的状況に陥ることがないとは言い切れず、アキラはそのときの為に生き残る手段は残しておきたかった。契約で縛られれば、生存の最終手段を失うのだ。それをミシェルに説明すると、彼女は少し考えて代価の支払いを提案してきた。
『アキラ、何か欲しいものはございませんか? 契約で縛る代わりに代価を用意いたします。そうね、獣人の彼が望んでいる魔武具を作りましょうか?』
「それは彼個人が欲する物で、俺が欲しいものではありませんね」
『金銭の支払いでは納得いただけませんわね』
「金は稼げますから」
『ではアキラ、あなたの望みは何かしら?』
魔法使いギルドの長であり、錬金魔術師の頂点である彼女に望むとしたら、それは。
「ギルドが所有する冥府からでも蘇らせるという秘薬、それは欠損の再生に効果がありますか?」
アキラは黒髪のエルフと鏡面越しのギルド長とを交互に見て問うた。
コズエたちがアレックスとの雑談で聞き出した蘇りの秘薬、もしそれが実在し、コウメイの右目を蘇らせる事ができるなら、代価として要求したい。
『……アレックス、あなた中途半端に情報を漏らすのはおやめなさいと』
「世間話やで」
「秘薬は対価にはなりませんか?」
『十分になりうるわ。でも、あの薬ではアキラの望みは叶わなくてよ』
魔法使いギルドに保管されている冥府の秘薬は、その名の通り死者を冥府から呼び戻し目覚めさせる錬金薬だとミシェルは語った。
『あれは欠損を再生させるものではないの』
そうですか、とアキラは目を伏せ短く息を吐いた。
『コウメイの目がアキラの望みなら、そうね……義手や義眼に特化した凄腕の錬金魔術師を紹介するのはどうかしら。彼の作る義眼なら欠損前と遜色ない、いいえ、欠損前よりも良くなるでしょう』
一般的な義手義足や義眼は、失われた部分にはめて見た目を補うものがほとんどだ。義足は歩くためには不可欠だが、義手や義眼は装飾でしかない。失われた機能を補完するのは錬金魔術師の作る魔武具になる。
『彼の作る義眼は装飾としても一級品です。なにより生体との接合技術が優れていて、義眼との一体感は生身と変わらないと評価されております』
これなら対価になるかしらと微笑まれ、アキラは満足の笑顔で頷いた。
契約魔術をいつどのように執り行うのかを決めていると、ドアがノックされた。
「もう五の鐘鳴ったぜ、飯はどうするんだ?」
コウメイの声が「休憩ぐらい取れ」と繰り返す。扉の外の声を聞き取ったミシェルは目を輝かせた。
『あら、昼食はコウメイが作っているの?』
「弁当持参言うたら料理人連れてきよったんや」
『わたくしも頂きたいわ。ご招待いただけます?』
「ええー、今から魔術陣戻すんめんどいんやけど」
『ギルド長の命令です。今すぐ魔術陣の道を開きなさい。改編知識に関しては、やはりアレックスとの契約も必要そうね』
アレックスもエルフだ、アキラ式の改編割込みを成功させられる豊富すぎる魔力を持っている。思想から判断しても、自分よりはアレックスの方にこそ契約で縛る必要があるのではないかとアキラは思うのだった。
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「ハルク貝と香草のスープに、レト菜とピリ菜の和えサラダ、薄切り魔猪肉のピカタにマッシュポテト添え、デザートはサツキちゃん作のピナ果汁のシャーベットだ」
急遽四人に増えたが料理人が困ることはなく、テーブルには料理を盛りつけた皿が次々と並べられる。
「相変わらずあなた達の食事は冒険者の作るレベルを越えているわね」
「そりゃ美味い飯は手っ取り早くストレス解消できる手段だからな。慣れた故郷の味があれば狩りにも身が入るってもんだろ」
「ええなぁ、ワシも毎日美味い飯食いたいわ」
「金華亭の食事も美味いじゃねぇか」
「あそこで飯食うてたら三回に一回は暴れる酒飲みに皿ひっくり返されるんやで、早食いが身についてもうてなぁ」
いくら美味い飯でも、慌ててかき込んではまともに味わうこともできないとアレックスが愚痴った。
ナナクシャール島で漁れるハルク貝を食べるのは初めてらしく、その味を気に入ったミシェルはコウメイからレシピを買い取り、アレックスには上司命令として定期的にハルク貝を送るようにと命令を下す。サボリ癖のあるアレックスには細かな雑用まで全て指名して押し付けておかないと同僚に振り分けてしまうらしい。
「ええー、せっかく釣竿返してもろうたのに」
「あんたがエルフの森を追い出されたのも分かる気がするぜ」
料理を運び込もうと部屋に入ってアレックスがエルフだと知ったときは驚いたコウメイだったが、エルフ耳が露わになり高貴で神聖な方向に見た目の補正が入ったというのに、言動は昼行灯のままのガッカリ感。これはエルフ族から叩き出されても仕方がないと納得した。
食事を終えデザートを食べながらコウメイも交えた事情聴取に戻った。
「義眼?」
アキラが望んだという対価が自分の義眼だと聞いたコウメイは、隣で平然とデザートを味わっている友人を振り返った。
「アキの契約なんだろ? 自分の必要なもの貰っちまえばいいじゃねぇか」
ミノタウロス戦での右目欠損はコウメイの運が悪かっただけでアキラのせいではない。違反時にペナルティをくらう契約の対価をコウメイのために使うのは筋が違う。
「もう合意して終わった話だ」
「終わってねぇよ。俺は初耳だ」
「今のところ俺には欲しいものは無いんだ。後日に預けておく事もできるが、欲しい物がないままだったら無駄になるだろう。だったらコウメイに貸し付けた方がマシだ」
そっぽ向いて「タダじゃない、貸しだ」と言うアキラの口角が照れ隠しにかきゅっと固まっていた。
「……わかった。ありがたく借りておく」
片目の生活には慣れたが、冒険者を続けるには不安が残っていた。それを払拭できる最良の手段を譲ってくれたアキラに感謝するしかない。コウメイは生身の目と変わらない性能の義眼が手に入ったなら存分に借りを返す、そう決意した。
「全員そろっているのだから、契約まで済ませてしまいましょう」
ミシェルがたびたび転移してくるのは魔力と時間の無駄だからと、この場で魔術契約が整えられた。
「まずは契約内容の確認です。アキラは転移魔術の改編及び無断使用しないこと。これを破った場合はギルドへの魔力供給を科することとします」
「魔力供給?」
「契約破ったら奴隷の腕輪みたいなヤツでアキラを縛って、魔力の大半を自動的にギルドが奪うんや。見た目は奴隷落ちしたようにしか見えへんし、こっちの事情は考慮せえへんでがんがん吸い上げよるからな」
魔力での力押しを阻害するペナルティは、確実に契約を守らせるだろう。
「改編技術を預かる対価として、コウメイの義眼を作る錬金魔術師を紹介します。紹介状と義眼の作成代金はわたくしの負担とします」
「ちなみに、普通に作ってもらうとしたらいくら位かかるものなんだ?」
「材料別で五十万ダルからです」
「うおぉ、予想してたが高けぇな」
生身の目と変わらない義眼だ、金で解決するというなら言い値を払う覚悟はあるが、流石にその金額を溜めようと思うと数年がかりになるだろう。
「別ということは、材料は持ち込みか?」
「そこは流石に、あなた達で頑張ってもらうしかありませんわね」
「ん? 材料ってなんだ?」
「魔石ですわ。自分の目になるものだから、相応しい魔石を獲得してくださいな」
魔武具のオーダーは材料は持ち込みが基本だ、別途で加工製作代金が必要になる。費用も材料も丸抱えでは流石に申し訳ないので、相応しい魔石とやらの獲得に頑張るつもりだが。
「もしかして、シュウの魔武具もノルマ以外に魔石が必要なのか?」
「もちろんよ。ちゃんとそう説明してありますわ」
虹魔石百個か三十万ダル。それしか頭になかったし、多分シュウの頭にも残っていないだろう。家に戻ったらシュウにきっちり説明せねばと二人は小さく頷きあったのだった。
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契約内容を書き記した羊皮紙に上書きされる契約の魔術陣。
ミシェルが描き、アキラの血がなぞり、二人の声で契約が発効する。
「「血により結する」」
魔術陣から光が立ち、そのまま浮かび上がり手首に巻きついて落ち着いた。
「刺青みてぇだな」
一見ブレスレット風の模様がアキラの左手首に記されていた。契約違反をすればこれが反応して魔力を没収するのだろう。
「これが紹介状ですわ。気難しいおじ様だけど、それがあれば便宜を図ってくれるでしょう」
手早く書いた紹介状をアキラに渡し、アレックスとも同じ契約魔術をかわしたミシェルは、これで後始末は全て終わったとばかりに転移魔術にて帰っていった。
「あ、そや。近いうちにアキラに手伝い頼みたいんやけど」
全ての後始末を終えた帰り際、アレックスがアキラを呼び止めた。
「頼み?」
「討伐依頼や。ワシと一緒にミノタウロス屠りにいかへんか?」
それは、ちょっとそこまで買い物に、という程度に軽いノリの指名依頼だった。
※ちょっと色々盛りだくさん過ぎた回でした。




