7話
ソフィーはヴィクトリアの主催するお茶会に招待された。
居間には令嬢や夫人が10人ほど集まった。社交的な彼女には友人が多い。ヴィクトリアを中心に話が弾んだ。
「ソフィー、あなた凄く綺麗になったわ」
隣のエミリアがソフィーをまじまじと見つめた。
「そんなことないわ。あなたこそ本当に綺麗よ」
エミリアは艶のある赤い髪を綺麗に結い上げている。ハツラツとした、とても華やかな人だ。
「誰かいい人ができたの?」
ソフィーはうつむきがちに微笑んで、首を横に振った。
ライアンはまだプロポーズをしてこない。そんな中、ソフィーは彼のことを友人にうまく説明できなかった。
「エミリア、あなた大事な話があるんじゃなくて?」
ヴィクトリアが身を乗り出しながら、エミリアを促した。
エミリアはすくっと立ち上がった。
今日の彼女の笑顔は自信に満ちあふれている。
「皆さん、わたくし、エミリア・クランリーは婚約致しました。お相手はノース伯爵家のライアン・カッセルさんです」
大きくはきはきとしたエミリアの声が応接間に響いた。
歓声があがった。皆立ち上がり、手を叩きながらエミリアを祝った。
ソフィーは口をぽかんと開けてエミリアを見上げた。
彼女は間違いなくライアン・カッセルと言った。
「ソフィー?」
エミリアが眉をひそめてソフィーを見下ろした。ソフィーはあわてて立ち上がり、小刻みに震えながら支離滅裂な祝いの言葉を述べた。
頭の中が真っ白で、自分が何を言っているのかも分からなかった。
翌日、新聞にはエミリアとライアンの婚約の記事が小さく掲載されていた。
昼前にはライアンが訪ねてきた。
「帰ってもらってちょうだい」
ソフィーは泣き腫らした顔を隠して執事に伝えると、ベッドにもぐり込んだ。
外からライアンの声が聞こえる。彼女を呼んでいた。
ソフィーはカーテンを閉めて耳を塞いだ。それでも彼の叫びは聞こえ続けた。
すがるように名前を呼ぶ声。
ソフィーは唇を噛み締めて、会いに行きそうになる自分を必死に抑えた。
翌日以降もライアンは続けて訪ねてきた。
ソフィーはひっそりと庭の奥のアトリエに逃げて、一人で籠もるようになった。




