6話
ソフィーは少しきつくなってきたドレスを新調しに、セントラル・ストリートまで来た。ライアンも一緒だ。
ライアンが選んだ仕立屋はソフィーが使ったことのない最高級店だった。
ライアンが気に入ったドレスのデザイン画をいくつも選んだ。ソフィーも一つだけ選んだ。
ソフィーは淡いブルーのドレスの値段を、店主にこっそりと聞いた。想像の十倍ほど高くてとても買えない。
「全部頂こう」
ソフィーが止める間もなくライアンは支払いを済ませてしまった。
ノース伯爵家は相当裕福なようだ。
採寸が終わった。店が並ぶ表の大通りを散策することもなく、ハワード男爵邸に戻った。
付き合ううちに、ライアンはあまり外出が好きではないことが分かってきた。
ハワード邸では管理の行き届いた屋敷ではなく、庭外れのソフィーのアトリエで過ごすのがお決まりになっている。
マーガレットと執事が渋い顔をしているが、ソフィーは気づかないふりをした。
「ライアン。あなた退屈じゃないの?」
ソフィーは皿に盛ったイチジクの絵を描きながら、ソファーに横たわるライアンに尋ねた。
「全然退屈してないよ」
ライアンのする事はソフィーを見つめたり、抱きしめたり、食べたり、たまに本を読んだりするくらいだ。
ソフィーはふと、思いついた。
「あなたの絵を描かせて」
ライアンは少し嫌そうな顔をしたが、結局付き合ってくれた。
ソフィーは木炭を持って、椅子に座るライアンの姿形をよく観察した。
少し目尻の下がった優しい青い目、高くて整った形の鼻、やや大きめの口。すべてがバランスよく配置されている。
眉毛は髪より明るい色をしていた。
彼はじろじろ見られながらも、長い脚を優雅に組んでリラックスしている。
ソフィーはつい手を止めてライアンに見とれてしまった。
「これじゃきみに触れないよ」
ライアンはじっと座りながら不満を漏らした。
そして度々中断してはソフィーの所に来る。
「今日はもう終わりだ」
ライアンはソフィーを椅子から抱き上げると、そのまま2人でソファーに倒れ込んだ。
ライアンがソフィーの頭に頬を寄せた。ソフィーもライアンの首もとに顔をうずめた。
ライアンと二人きりで過ごすこの空間がとても好きだ。だけど……。
ソフィーはライアンのシャツをつかみながらため息をついた。
彼はいつ、私たちの関係を公にするつもりなんだろう。




