表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽物の恋人──あなたのいたアトリエ  作者: あおき華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/14

3話

「お嬢様、とってもおきれいです!」


 マーガレットはドレスアップしたソフィーを見ながら、口の前で手を合わせた。


 ソフィーは苦笑いをした。


 母が用意した赤いドレスは、胸の辺りが開き過ぎていて彼女を落ち着かない気分にさせた。


「マーガレット、この辺りを隠す物はない?」


 ソフィーは眉を下げながら、強調された胸の谷間を指差した。


「だめよ」


 母が突っぱねた。


 ソフィーは母の勧める見合い話をかわし続けていた。すると、母はソフィーの侍女マーガレットにつらく当たるようになった。ソフィーはとうとう逃げられなくなった。


 今日会う相手は銀行家のジョン・スミスだ。ダニエルがクラブで聞いていた名前だった。


「先方が会場で声をかけてくださるから、粗相のないようにね」

 




 舞踏会に着くと、早速スミスが話しかけてきた。少しお腹の出た熟年の男性だ。父より年上だろうと思った。



 演奏が始まった。ソフィーはダンスを申し込まれ彼と移動した。


 何ともじっとりした目つきの男だ。見下す様な話し方、自慢話。ソフィーは次第に頭が痛くなってきた。


 次のダンスの誘いを体調が悪いと断ると、バルコニーに避難した。外は真っ暗だ。


「もう脱いでしまいたいわ」


 スミスの話から、この赤いドレスは彼の贈り物だということが分かった。長いため息が漏れた。



「さっきの方はお父様ですか?」


 突然近くから低い声がした。 

 ソフィーはさっと振り返った。


「いや、父親は娘をあんな目で見ないな」

 

 軽蔑するような響きだった。

 逆光で相手がよく見えない。


「ごめんなさい。もう行きますので」


 ソフィーは警戒してバルコニーを出ようとした。しかし男は立ちふさがって動かない。


「貴方はかなり趣味が悪いか、そうでなければ頭が悪いようだ」


「何ですって?」


「あんな男と結婚するのはやめたほうがいい。金しか取り柄の無い男だ」


 結婚の噂を知っているようだ。


 ソフィーは男を押しのける様に会場に戻った。


「お金に困っているのかい?」

 男はまだ付いてきた。


 明るい場所で改めて男の方を見た。二十代半ば頃。黒髪で背が高い。そしてとても綺麗な顔をしていた。


 ソフィーは思わず赤い顔でうつむいた。言い返そうとしていた言葉が上手く出てこない。


「⋯⋯レディ、今の発言は失礼でした」


 誤解したのか、男の声が棘のあるものから少し柔らかくなった。


「ミス・ハワード、ここでしたか」


 スミスがやってきた。


「こちらは?」


 スミスは値踏みするように男を見た。


「私はジョン・スミスです。セントラル・ストリートで銀行業をしてましてな。ご存知ですか?」


 男はスミスを無視している。まるでそこにいないかの様に返事もしない。


 スミスは小声で毒づいた。


「まあいい、ところでミス・ハワード、婚約者を放ってばかりはいけませんよ。さあ」


 スミスが手を差し出した。ソフィーは不意に、噂話を流したのはスミス本人だと感じた。


「スミスさん。私は貴方と婚約しておりませんわ」


 スミスが表情を歪めた。


「私のドレスを着ておきながら?」


 男がさっとソフィーの手を取った。

「失礼、彼女は私とダンスの先約があるので」


 約束などしていない。


 それでもスミスから逃げたいソフィーは男に頷き、ダンスに加わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ