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神様が仕事を放棄して下界に降ります  作者: 三宮 琳
第二章〜白女神祭の大波乱〜
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肩叩き剣

 翌朝、俺は早くに起きて朝食を取り、魔物狩り大会の準備をしていた。


 と言ってもルールを覚えるだけだが。昨晩、教会の職員さんにお願いして持ってきてもらった魔物狩り大会のルールブックによると、内容はこんな感じだ。


 アルアーラの街周辺の魔物を狩る。狩った魔物の決められた部位を集めて本部に届ける。魔物によってポイントが決まっている。ポイントのトータルが最も高いチームの優勝となる。入賞した者には景品が当たる。


 ルールは簡単だな。効率よくポイントを取るコツとしては、高得点の魔物ほど討伐した後に剥ぎ取らなければならない部位が大きくなる傾向があるらしいので、


 小さな魔物を大量に狩ってまとめて本部に届け、堅実にポイントを稼ぐ。


 大きな魔物で一発大量獲得を狙い、小まめに本部に届ける。


 のどちらかの狩り方が推奨されている。


 無作為に狩ると、荷物がオーバーして移動が極端に遅くなったり、部位を捨てないといけなくなったりするらしい。


 だが、俺には容量無制限の『収納』スキルがあるので無作為に狩っても問題ないだろう。


 と、まあこんなところだ。引き受けるからには足でまといにだけならない程度の働きはしよう。


 そう決めて、会場へと向かうのであった。

















 魔物狩り大会の本部であるアルアーラ王国外壁前には多くの冒険者達が集っていた。


 さて、勇者達はどこにいるのか。探すことになるのだったら教会から一緒に来ればよかったかな。


 「あ、おーいシオン君!」


 と、俺を呼ぶ声がしたのでそちらへ振り向く。案の定、勇者達だった。今日も朝から爽やかだなあ。俺なんか最近、休暇に来たはずなのに面倒事を抱え込みすぎて、また目が濁ってきたのに。


 と、そこで勇者パーティーに何人か足りない人物が居ることに気づいた。


 「おう、おはようブレイブ。あれ?王女様と神官娘は?」


 「面白いあだ名で呼ぶんだね、彼女たちならまだ頭が痛いって言って向こうで横になっているよ。会場には来ているから安心して!」


 そんなんなら休めばよかったのに。いや今からでも遅くない。


 「大丈夫か?今回の参加は見送るか?」


 「僕もそうやって提案したんだけどね。彼女達が絶対に出るって言って聞かないだ。」


 あ、あっちの2人の意向でしたか。それは覆りそうにない。


 仕方ない、あいつらが倒れてるのはほんの少しだけ俺のせいでもあるから診てやるか。


 ブレイブ2人のところまで案内してもらう。すると、


 「頭がガンガンしますわ。」


 「神様、未熟な私にどうか救いを。このままでは勇者様にご迷惑が⋯⋯。」


 こいつらどんだけ酒弱いんだよ。まあいいや、丁度神様に祈ってたみたいだし、白女神ではないけれど聞いてやろう。


 「2人とも大丈夫か、これを飲んどけ、酔いが覚めるポーションだ。」


 と言って、二つの小瓶を取り出し渡してやる。


 もちろん中身はポーションなんかではない。ただの水だ。


 2人がポーションを飲みきったところを見計らって、俺は力を使い酔いを飛ばしてやった。なんたる神の力の無駄遣い。


 事実が判明したら君たち貴族や冒険者達の学校の教科書に載れるんじゃない?


 神々の王に二日酔いを治してもらった王女と神官って。まあ、勇者パーティーのメンバーの時点で教科書に載る可能性は充分か。


 「あら、頭痛が引きましたわ。」


 「本当です。私も何ともなくなりました。シオンさんありがとうございます。」


 「感謝しますわ。」


 はいはいどういたしまして。感謝なら俺を解放するという行動で示してくれない?だめ?


 「皆元気になってよかったよ!それじゃあさっそく開会式に行こうか!」


 「はいですわ!」


 「はい!」


 だめそうだなー。まあそこは期待してないからいいよ。


 と、俺も勇者に続こうと思って足を動かした矢先、くいっと俺の服が隣の人物に引っ張られる。


 勇者パーティーの舞闘家、カーラだ。


 昨日あれだけ飲んでいたのにまったく問題なしですか。亜人族とはいえすごいですね。


 「ねえ、今日はキミの本当の実力見せてもらうからね。逃げないでよ!」


 はて、本当の実力とは。この世界ごと消し飛ばしでもすればいいんですかね?ええ、片手間に出来ますとも。なんて⋯⋯俺はこのまますっとぼけさせてもらうぞ!


 そうして順調に開会式を終え、遂に魔物狩り大会の開始の時間になった。


 「じゃあ皆、昨日の作戦通り行くよ。シオン君には伝えていなかったね。今回僕達は大物一点狙いで行こうと思う。他の冒険者に大物を取られ内容迅速な行動が鍵になるよ!」


 あ、作戦とか考えてたのね。でもすまん。


 「俺、『収納』スキルあるから魔物の部位くらいならいくらでも持てるぞ。」


 どうせ勇者達に調べられたら俺のスキルなんてすぐにバレてしまうんだ。なら今教えても一緒だな。⋯⋯ちょっと投げやりになってきた。疲れているのかな。次からもう少し慎重に行動しよ。


 「そうなのかい!それはすごい!なら、手当り次第に魔物を狩ってもいいんだね。」


 と、勇者が言ったところで大会の始まりを告げる鐘が鳴った。時間はこれから5時間。冒険者達が一斉に駆けてゆく。


 願わくば何事も起きず、普通に大会が終わりますように。
















 「『聖光』⋯⋯いまだ!カーラ、ブレイブ、よろしく頼む。」


 「ナイスだよ!『炎掌』!」


 「ありがとうシオン君!『風刃』!」


 燃え盛る掌底の一撃と、風をまとった剣の一閃で大きな人型の魔物が倒れて動かなくなる。


 「こんなもんか、お疲れ2人とも。」


 「すごいよ、シオン君がアシストに回ってくれるからいつもより大分効率よく戦える。メガサイクロプスを瞬殺だなんて。」


 「キミは前衛はしないの?」


 俺が目くらましなどで魔物の動きを止め、そこに2人でとどめを刺す。というようなスタイルでここまで狩ってきた。


 あとカーラさん、前衛なんて絶対にしませんからね!


 そこで、ふと少し離れた向こうを見ると、


 「『聖結界』!シルフィさんお願いします!」


 「ええ、任されましたわ。⋯⋯『雷の息吹(ライトニングブレス)!!!』」


 瞬間、結界で動けなくなった同じ人型の魔物が激しい雷光に包まれ黒焦げになりドサリと倒れる。


 こちらも俺たちと全く同じ戦闘スタイルだ。支援役が増えて、勇者パーティーは戦いやすそうだ。でもこれ僧侶職の戦い方であって、斥候職のやり方じゃないんだよなあ。


 もっと斥候らしいスキルを作ってみるか?


 そんなことを考えていたら勇者が全員に労いの言葉をかけた。


 「みんな、お疲れ様!いい調子だね!このままどんどん行こう。」


 そう言って持っていた剣を空高く掲げる。うん、爽やかだなあ。


 と、そこで俺の視線は何気なく勇者の掲げている剣に向かった。


 ⋯⋯あれ?その剣すっごい見覚えが⋯⋯。


 具体的に言うと前に俺がボケたかと心配してた時に思い返していた、肩叩きに丁度いい聖剣と、うり二つなんだが⋯⋯。


 「なあブレイブ、その剣って。」


 「うん。これが転生神様から授かった聖剣ブレイブリーソウルだよ!」


 なんだよその小っ恥ずかしい名前は。


 「この剣は僕の魔力を込めると魔を滅し、見方を癒す光を放つんだ!」


 そうだな、魔力や神気を込めると疲労回復するようにカスタムしたな。だから肩叩きに良い聖剣だったんだよ。


 てことは、この剣は俺が失くしたんじゃなくて転生神にちょろまかされてた?ってことか?


 これは休暇明けのお話案件だな。とりあえず世界を壊すような力はないから勇者に預けておくことにする⋯⋯か?


 「そうか⋯⋯勉強になった。」


 「うん、それならよかった。それじゃあ次の魔物を探そう!」


 ⋯⋯⋯⋯その剣も面倒だなぁ⋯⋯。


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