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神様が仕事を放棄して下界に降ります  作者: 三宮 琳
第二章〜白女神祭の大波乱〜
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お酒はほどほどに

 俺は勇者達と食事に来た、が道々でかけられる声の量が凄いのなんの。それに一々勇者も立ち止まって相手をするもんだから、歩けば5分ほどで到着する酒場に、1時間もかかってしまった。


 「申し訳ない、時間がかかってしまって。」


 そういい頭を下げる勇者。カーラも申し訳なさそうな表情だ。


 「いや大丈夫だよ。俺なら気にしていないから。」


 反感を買いたくないので、無難に答える。がしかし!そこの少女達2人よ、当たり前です、というようにうんうん頷くんじゃない!俺だってご飯は1人で好きなところに行きたかったんだからな。



 俺達は酒場の店員に案内された一番広い席へと適当に座ると、メニューを見て注文することにした。


 勇者とイネアは果実水、シルフィーナは高そうなワイン。俺とカーラはエール酒をそれぞれ注文した。


 カーラさん気が合いますね。


 こう、無限に積み上がったと思われた書類を片付け終わった後にさ、安い酒をちびちびと飲んで酔っ払うのが一番俺にしっくりきたんだよ。


 だから天界にある阿呆みたいに希少で高価な酒はあまり飲まずに、下界から安酒を取り寄せていたんだわ。宰相には示しがつかないからやめてくれと言われていたが。


 庶民的だって?うるせー!俺には1本で下界の財全てくらいの価値がある神酒をぽんぽん空ける他の神々の気持ちの方がわからんわ!


 「シオン君はヒズミルの町で活動しているのかい?懐かしいなー。はじめは僕もヒズミルで冒険者をしていたんだよ!」


 と、勇者が話しはじめた。先程はどうやって勇者パーティー達との関わりを断つかばかりを考えていたので意識していなかったが、改めて見ると勇者パーティーの容姿レベル高いなー。


 まず勇者ブカイブ。転生神のお墨付きの格好よさで高い身長に高貴さを思わせる金髪、目鼻の配置も整っており、笑顔の際に爽やかに白い歯がキラめくオプションつき。


 うちのカイくんとは違ったタイプのイケメンですね。


 例えるならカイはワイルドさ溢れる容姿に寡黙な性格の静かに燃える武人。


 勇者ブカイブは全体的に爽やかで優しげな表情のキラキラしたオーラがあふれる王子様、みたいな。まあ勇者様だけど。


 ついでに取り巻きの方も見る。


『魔導姫』ことシルフィーナは豊かな金髪をクルクルと縦ロールにしているまさにお嬢様みたいな感じ。


『聖心姫』イネアは勇者パーティーの中で最も幼く、着ているローブも余っているが、サイドテールにした黒髪と柔らかな笑顔が可愛らしい。


 勇者はこの二人にカーラを加えた4人で旅をしているんだろう?そのうち2人は確実に好意を持っていると。


 ジョブはともかく、精神は普通の人間のはずなのによく我慢出来るな。いやもしかして我慢なんてしてないとか?まあいいや。考えないでおこう。


 「そう言えばブカイブ、お前は白女神様に会ったことあるか?」


 この情報は重要だ、俺が神王と白女神にバレないためにも少しでも一方的な情報のアドバンテージが欲しい。


 「いや、今回が初めてだよ。僕が会ったことある神様は転生神様だけだよ。」


 なんだ残念。しかし転生神の話も少し気になったので聞いてみることにした。


 「なあ、転生神ってどんな神様だったんだ?」


 俺の記憶だと、豊穣神と仲が良くて少しドジな神王城の新米女神、みたいな立ち位置だったと思うんだが。


 「すごく美しくて聡明で優しい方だよ!僕は覚えていないんだけれど前世は報われない生だったみたいでね、転生神様が勇者としてもう一度命を与えてくださったんだ!それに生まれ直すにあたって、僕が『聖剣の勇者』と呼ばれる所以である聖剣やこの世界に関する知識をさずけてくださったんだ!」


 ⋯⋯なんか全く俺の知ってる転生神と違うんだが。俺、もしかしてボケたかなぁ⋯⋯。神王城にいた時からちょっと不安だったんだよ。


 仕事を全部終わらせたと思ったら、手付かずの仕事が大量に出てきたり。凝った肩を叩くのにちょうど良かった聖剣をどっかにやって失くしたり。夜に書類を書き終えて眠ると翌朝には未完成のまた違う書類が置いてあったりと。


 と、俺が不安に駆られていると、他に注文した料理の数々が運ばれてきたので、一旦会話を切り、食事に集中することにした。

















 いやー、美味しかった。お店の方も勇者の来店だったから腕によりをかけたのだろう。


 大変満足し、俺達は教会へと帰ってきた。


 「よいしょ。」


 そう言って俺はグッタリとしたカーラを横たえる(・・・・・・・・)


 「ごめんね、カーラを運ぶのを手伝ってもらっちゃって。」


 勇者がすまなさそうにそう言う。


 「いや俺のせいでこんな風になったようなもんだからな。これくらいは当然だよ。」


 「そっか、ありがとう。よいしょ。」


 そう言って勇者もシルフィーナとイネアを横たえる。


 「うぅ⋯⋯頭が痛いですわ。」


 「クラクラしますー。あれ?勇者様が2人になりました?」


 そう、勇者パーティーの女性陣3人は、皆酔っ払って動けなくなっていた。


 原因を作ったのは俺だ。


 食事初めてしばらくするとカーラが闘技場の事はどういうことかと他に聞こえないよう問い詰めてきた。


 答えるつもりのなかった俺は、その時ちょうど目に入った酒を使い、飲み比べで勝てたら教えてやると返答した。


 もちろん身体を酔わないように作り替えて。


 しかし、俺はここでミスをしていた。カーラはかなりの酒豪だったのだ。さらに忘れかけていたがカーラは竜人族。ほとんどの亜人は酒に強いのだった。


 かれこれエールを10杯は飲んだかと思う時に、勇者が呟いた。


 「カーラもシオン君もあんなにお酒を飲めるなんて尊敬するなあ⋯⋯。」


 その言葉が今まで引き気味に俺たちの勝負を見ていたシルフィーナとイネアの2人に火をつけた。


 2人は酒場の店員に一番強い酒を頼むと、制止する勇者を振り切って一気にそれを飲んだ。と同時にぶっ倒れた。


 慌てて勇者とカーラが介抱しようと席を立ったので、視線が他に向いた今がチャンスとばかりに俺は力を使ってカーラを眠らせた。そのまま勇者には酔って眠ってしまったと言っておいた。


 そして今に至るのである。


 「ここまで運んでくれたらもう大丈夫かな。シオン君ありがとう。」


 いえいえ、俺もカーラから逃げることができてよかったよ。


 「どういたしまして、それじゃあ明日から祭りだろ?俺はそれに備えてもう寝るかな。」


 「うん、わかったよ、そういえばシオン君は冒険者だったね。明日の魔物狩り大会にも出場するんだろう?

 もし良ければ僕達のパーティーに一時加入してくれないかい?大会のパーティー人数制限は5人なんだ。なるべくいい結果を出したいし、せっかくだから仲良くなった君も含めて制限丁度のメンバーで挑みたい。」


 いやいやまた知らないイベントが出てきたよ、魔物狩り?しかも勇者パーティーに一時加入って⋯⋯


 「悪いけど俺はそれパ⋯⋯」


 ス⋯⋯って言いたかったんだけれども、これまた勇者の両サイドからこちらをじーっと見つめる目。


 「うぅ⋯⋯。」


 「うーん⋯⋯。」


 呻きながらもこちらに向ける目には勇者様をガッカリさせたは許しませんよ、との強いメッセージが宿っている。


 筋金入りだな!


 「⋯⋯わかったよ。」


 「本当かい!よかったよ!それじゃあまた明日、おやすみ!」


 「あー⋯⋯うん。おやすみ。」


 明日もまたカーラを誤魔化さないといけないのか⋯⋯。しかも勇者パーティーは目立つなぁ。いや断りきることのできない俺の弱い意志が問題なんだけども。


 そうため息を一つして自分の部屋へと向かうのであった。



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