休暇とは何ぞや
さて、リリが買われるまでの期限が3日間。それまでに金貨5枚を稼がなければならない。
平均的な冒険者の稼ぎは1日に銀貨5枚ほど。その100倍の金額を2日間で、となるとEランク冒険者である俺の正攻法での稼ぎ方では間に合うわけもない。
やはり交渉するならアイツか⋯⋯。なるべくなら会いたくないんだが⋯⋯。
俺はそんなことを考えながら宿を出て冒険者ギルドへと向かった。
ちなみに昨晩、あの後はリリをベッドに寝せて、俺は部屋のソファで寝た。
悩み事を話して少し気分も楽になったためか案の定、俺の事を襲おうとしてきたので、ちょっと神の力を使って眠ってもらった。
俺が宿から出たら目覚めるようにしているので問題ないだろう。
そんなことを考えているうちに冒険者ギルドへついた。
「ギルドマスターにちょっと交渉があるんだが⋯⋯。」
そう受付嬢のお姉さんに言伝を頼む。程なくしてギルドマスターの部屋への入室許可がおりた。
「昨日ぶりですねシオンさん。交渉とはどうなさいました?やはり考え直されたのですか?」
堅実そうなこの男がエルフのギルドマスターであるハンターだ。
「その交渉なんだが⋯⋯。」
「まずは話を聞きましょう。」
「俺は理由あって目立つのが嫌だ。もちろんやましい理由ではない。一切の罪を犯してないと神に誓える!」
神はおれだけどね!
「だが、早急に金が必要になった。だから誰も手をつけれないようなAランクの討伐以来を受けたい。」
「勇者の資質があると言ってもEランクの貴方では無理があるのでは?それに規則で1つ上のランクの依頼までしか受けることはできません。」
「それも含めて交渉だ。今回、俺が倒したという魔物の名声はすべてギルド職員のものにしていい。そのほうがヒズミルの冒険者ギルドに箔が付くだろ?」
「ふむ⋯⋯。」
よし迷っているな。もうひと押しか。
「もし俺が死んだら、もちろん俺の責任でいい。俺が『勇者』であれば死なせたギルドは非難されるだろうが、俺は『勇者』の資質だけ持ったただの冒険者だからな。どうだ?ギルドの名声も上がり、長く放置されていた高難易度のわずらわしい依頼も減るんだぞ?」
「そうですね⋯⋯。いいでしょう。ですが報酬は通常の7割とさせて頂きます。」
コイツ足元見てきやがったな。まあいい。普通の冒険者として扱えと言って昨日の今日だ。俺が譲歩すべきだな。
「わかった。ではAランクの討伐を全部受けよう。」
「全部ですか。貴方はいったい何者何ですか⋯⋯。いえ詮索はやめておきましょう。」
「いややましい事なんて無いって言っただろう?あぁ、でも監視するならもっと上手くやれよ。昨日からずっと視線を感じて鬱陶しかったぞ。」
ギルドマスターから許可も出たことだし、早速狩りに行こう。
「監視に気づいてましたか⋯⋯。Aランクの暗殺職や斥候職を持つ者たちに依頼したのですが。⋯⋯やはり只者ではなさそうですね。」
シオンが部屋を出た後、またも一人呟くハンターであった。
受けたAランク依頼は6つ、いずれも金貨1枚の報酬だ。
今回は依頼達成料のみを貰うので、倒した魔物の死骸はそのまま放置してギルド職員に報告し、回収してもらう手はずになっている。
ということで、どんどん片付けていこう。
今回は時間もないし、高難易度依頼が行われる場所の2日間の立ち入り禁止もハンターに協力してもらったので、詮索はしないとの言葉を信じて神の力をある程度使っていこうと思う。
流石に遠くから雷でも落として一歩も動かずに達成。などとなると正体がバレそうなのでそんな事はしないが。
それでは以下ダイジェスト版。
まずは1体目、ヒズミルの森の最奥部に住み着いたという『毒竜』討伐。なんか身体の表面がドロドロしてて触りたくなかったので石を投げつけて消し飛ばした。
2体目、同じくヒズミルの森、最奥部。毒竜の毒によって突然変異したとされる『ポイズンスライム』の群れの討伐。100匹以上いたが、一帯に本気の神気を込めた『聖属性魔法』の『浄化』をかけたら普通のスライムに戻った。
3体目、ヒズミル遺跡の周りを徘徊する『ブラックゴーレム』。身体が黒く光る金属でできた、かなり高い防御力を持った魔物だという事だったが思いっきり殴ったら砕け散った。
このあたりで日が暮れてきた。
4体目、ヒズミル草原に縄張りを持つ『カースボア』。なんか見たことある魔物だなと思ったら初めて人間界に来て戦闘した猪型の魔物の親玉だった。同じく殴った。
5体目、再びヒズミルの森。夜行性の『ドレッドバット・ロード』でっかいコウモリだった。殴った。
6体目、ヒズミル古戦場跡地の『エルダースケルトン』。御冥福を祈って殴った。
冒険者ギルドに戻ると夜明け近くになっていた。夜勤のギルド職員のおじさんに依頼達成を伝え、また宿に行こうかと思ったが、ギルド職員さんが仮眠室を貸してくれるとのことだったので有難くご厚意にあずかった。
翌朝、疲れもあったので目覚めたのは昼過ぎであった。
神の力で不眠不休でも大丈夫なようにもなれるが、そんな事をしたら無限の仕事と戦わないといけない。という神王城にいた頃のトラウマから俺は人間族と同じように眠り、食事するように自身の身体を調整していた。
仮眠室からギルドのカウンターの方へと向かうとそこにはギルドマスターのハンターが待っていた。
「おはようございます。まさか1日で依頼を達成してしまうとは。」
「ああ、運が良かった!」
「白々しいですね⋯⋯。まあいいでしょう。こちら報酬の金貨4枚と大銀貨2枚になります。」
あれ?6つクエスト受けたのに?
「どうかされましたか?ちゃんと通常報酬の7割分ですよ?」
⋯⋯忘れてたぁぁ!そういえばそんな事言ってたな!やばい時間足りないかもしれない。
前に売った服の代金は全部本に変わっていた。
いそいで何か依頼を受けようと掲示板を見ると
「何もないだと!?どういうことだ?」
Eランクの常時ある採集依頼以外は何もなくなっていた。
「おう、謎の新人じゃねえか。何でも昨晩のうちにギルド専属冒険者やギルド職員達がAランク依頼を全部片付けたみたいなんだとよ。それで皆負けてらんねえってことで盛り上がっていてな。」
な、なんということだっ⋯⋯。このままでは目標金額に大銀貨8枚分足りない。神王の名にかけて⋯⋯とか言ってたのに、足りませんでした。じゃカッコ悪すぎる。何とかして稼がなければ。
『神王』は大銀貨8枚のために必死に『働こう』とする。
休暇中に必死に働くシオンくん




