クランネちゃん親衛隊とギルドマスター
冒険者登録も無事終わり、町をまわって見ていると、何やら広場に人が集まっていた。
「我が力は彼女のために!」
「「「彼女のためにっ!!!」」」
「彼女に近づく害虫を駆逐せよ!」
「「「駆逐せよっ!!!」」」
「我ら彼女の盾となる!」
「「「盾となるっ!!!」」」
⋯⋯うわぁー。怪しい宗教かな?近づかないでおこう。
「「「我らは『クランネちゃん親衛隊』!!!」」」
「何じゃそりゃ!!!」
あ、しまった思わず叫んじまった。すると全員に号令をかけていたおっさんがこちらに気づいてしまった。
「む?そこのお方。我らが活動に興味がおありか。どうです?我ら『クランネちゃん親衛隊』の一員となってみませんか?」
「いえ、間に合ってますので。」
あのアホシスター、前にいつもご飯かなんかを奢ってもらっているようなことを言っていたが、まさか親衛隊なんぞがあるとは⋯⋯。
「まあまあそう言わずに。活動内容だけでも聞いてください。我ら親衛隊は女神クランネちゃんに不当に近づく害虫を駆除し、クランネちゃん周辺の治安を守る活動をしているのです。」
「は、はぁ⋯⋯。」
おかしいな、俺、神を統べる者だけどクランネなんて女神知らないなぁ⋯⋯。
「さらにクランネちゃんを個別で護衛する役目は隊員で平等に取り決め、これを破るものには制裁をくだします。」
「いえ、特に興味はないので結構です。」
「それは残念です。ですが我々はいつでも同士の加入を待っていますぞ。貴方もその内気が変わるでしょう。その時は是非、親衛隊員になってください。」
そう言っておっさんは親衛隊のもとに帰っていった。
もしパンツ持ってるなんて言ったらどうなんだろう?⋯⋯考えるのはやめよう。
何とも奇妙な出会いであった。
気を取り直して依頼を受けるため冒険者ギルドへ
「こんにちはー。」
「!?⋯⋯来たぞ来たぞ!!」
「ギルマスを呼べ!」
あっという間に取り囲まれた。ギルドへ来ると絶対に面倒ごとに巻き込まれる気がする。
「なんなんだ?俺は依頼を受けに来たんだが。」
と周りの冒険者に聞いてみた。
「いいからちょっと待ってろ。すぐにギルドマスターが来る。」
なるべく目立ちたくないから偉い人の知り合いは増やしたくないんだがあなぁ。そんなことを考えていると、ギルドの奥の部屋からいつもの受付嬢さんと共に金髪で長髪の若い青年がでてきた。
「こんにちは。あなたが冒険者シオンさんですか?」
「ああそうだが⋯⋯君は?」
「失礼。私はギルドマスターのハンターと申します。」
こんな若い青年がギルドマスターなのか。
「私の顔に何か?」
「いや、ギルドマスターが思ったより若かったんでな。」
「あぁ、私は純粋な人間族ではなくてエルフ族でして。これでも年は150を超えていますよ。」
「そうだったのか。」
「エルフを見るのは初めてですか?」
そもそも純粋な人間族以外を見るのが初めてなんだが。そういえば、前に買った本に種族について書いてあった気がする。
エルフ族は主に『大森林』と呼ばれる人間界西部の地域に住んでいて、長い寿命、尖った耳に種族ぐるみで整った容貌、高い魔法適正が特徴だ。
またエルフ族のような純粋な人間族でないものは亜人種と呼ばれる。
他の亜人種は、身体に様々な動物の特徴がある『獣人族』、魔物を従え人間族と敵対している『魔人族』、人間界と天界を行き来し、神の使いとして働く『天使族』などがいる。
世界の人口の大半を占めるのが純粋な人間族のため、この世界は神々からは『人間界』と呼ばれているのであった。
「ああ、初めて見た。エルフならばその若そうな見た目でギルドマスターをやっているのも納得だ。」
「では自己紹介も終えたところで、本題に入りましょう。シオンさん、ギルドマスターの部屋まで来てもらえますか?」
「わかった。」
断れるムードでも無かったので、素直に了承した。すぐに受付嬢さんに案内されてギルマスの部屋まで通されると、さっそくギルドマスターことハンターさんが口を開いた。
「単刀直入に聞きましょう。何故、勇者のジョブを選ばなかったのですか?」
「興味無いからだな。」
「あなたは旅の途中で魔物に襲われ、財産を失い、毎日の生活費を稼ぐため冒険者になったと聞きましたが。」
いつの間にそんな事まで調べてたんだ。それにしてもそんな理由で門兵⋯⋯カイを誤魔化したんだったな。忘れてた。
「まあ、そうだが。」
「勇者になれば使えきれないほどの莫大な資産も、名声も手に入りますよ?」
「だが、国や教会、ギルドからの指令も受けるだろう?そういう面倒なのは苦手なんだ。」
「誰もが欲しがるその栄誉を『面倒』ですか⋯⋯。では勇者になる気は現時点で全く無いと?」
「そもそもジョブを変えることなんかできるのか?」
「できますよ。クラッシア教国の『大聖堂』という所で神様に祈ることで、転職ができます。」
クラッシア教国⋯⋯どこかで聞いたことが⋯⋯そうだ!確かヒズミルとは違う聖女がいる国だったか!
「まあ、できたとしてもなる気は無いな。」
「残念ですね。わかりました。ではシオンさんは普通の冒険者として扱わせてもらいますね。」
「それで頼む。」
そう言って席を立ち、そのまま退室した。
「ふむ⋯⋯他国の勇者が潜入してきた⋯⋯という訳では無さそうですね。しかし彼の考えが読めません。やはり監視をつけましょう。」
そうハンターが呟く。すると隣にいた受付嬢が
「彼を普通の冒険者として扱うのでは?それに彼はすごく田舎な所から来たと言っていましたが。」
と返答する。
「もちろん両方、私の言葉も彼の言葉も嘘に決まっているじゃないですか。あんな怪しい方を野放しにするなんて恐ろしい。」
ギルドマスターは用意周到な男だった。
退室した後彼はそのままギルドを出る。するとある事に気づいた。
「あ、やべ、また依頼受けるの忘れてた。」
彼が冒険者として仕事が出来るのはいつになるのだろうか⋯⋯。




