森の怖気
ミルは自分のことは話したがらない。ただ無口とは全く違うようだ。自分以外のことはごく普通に話してくれるので、俺はこの世界についていろいろ聞いてみた。
この異世界は元の世界のようにいくつかの国に分かれており、それぞれ複雑な勢力図を描き合っているらしい。ここはラグジャイルという国の端っこの森で、幸いラグジャイルの管轄意識が甘いらしい。だからこそ俺もミルも今平和にゆっくりと食料採集できるというわけだ。
ところで俺だが、ミルには名前でタクミと呼ばせている。
「タクミ、これはすごい危ない色をしているけど、煮れば美味しく食べられる」
「え、マジで?」
「うん、マジマジ」
自信満々に頷くミルの指す先には、いかにも毒をもっていそうな紫色のキノコが生えていた。いやいや、いくらなんでも無理があるだろ。これは一口でも食べたらアウトな奴だ。俺はそう思ってミルに伝えると
「もちろん生はダメだし、触るのも危ないけど、煮れば毒が湯気になって抜けるの」
だそうだ。
それからも俺は危なそう植物についてミルに尋ね、その度に警告されたり驚いたりした。この異世界、植物については元の世界の知識は全く当てにならなそうだ。
聞いたところによると食人植物は当たり前、龍をも殺す毒もあるらしい。それだけの多種多様な植物があるなら、この異世界はよほど広大なのだろう。
そんな中、俺はなにか薄ら寒い感じがして突然後ろを振り向いた。
「どうしたの?」
ミルが怪しい者を見る目で俺に聞く。だが俺は答えないまま、後ろをじっと見つめた。
あるのはただの茂みのみ。木も無言で立ち尽くしているだけだ。
「・・・・いや、気のせいだよ」
そうだ、多分お腹が減ってるんだ。少し気分が悪くなってぞくぞくしただけだろう。俺はそう決めつけて、ミルに先を促した。
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