問いかけ
朝日が昇りゆく風景から目を離して、俺は目の前の幼女に向かい合った。真剣な顔をして口を開く。今から口にすることは、相手にいい思いをさせないとわかっているからだ。
「君はなんでここにいるの?」
赤空を映していた瞳が俺を映す。朝日の光を残した視線が俺の視線とぶつかった。
「・・・・」
そのまま数十秒。女の子と俺は見つめ合ったまま、お互い一歩も引かなかった。一瞬目を逸らしそうになるが、俺は自分の心に鞭を入れていっそう目に力を込めた。ここは引けない。俺は俺のことを洗いざらい話した。そっちにも話してもらわないと不公平なのだ。
だが女の子の視線も、意志も、揺らぐ様子はなかった。
互いの視線が交じり合って何分経っただろう。その拮抗が永遠に続くかと思われたその時、ちょうど女の子が顔を伏せて一言。
「わたしの名前はミルよ」
「・・そっか」
名前だけか。
まあいいや。俺が気になっているというだけで、絶対的な必要性があるわけでもない。名前が知れただけでもよしとしよう。
「ミル、ね」
「それ以外は話す気はないわ」
ただ名前を反復しただけの俺を、ミルはきっぱりと拒絶した。そのはっきりとした意思表示にされた俺は苦笑してしまう。
「うん、名前だけでもありがたいよ」
まったく。最近の小学生は生意気だ生意気だと騒がれていたが、ミルに比べればかわいいものだろう。
ただ彼女には彼女なりの、複雑な理由があるようだ。
俺はそれ以上追求せず、立ち上がって尻についた土を払った。
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