狼幼女と朝日を浴びる
「ーーというわけでして」
「・・・・」
狼少女、ならぬ狼幼女に必死の形相で説明を求められた俺は閉口を破り、なんとか全ての説明をした。女の子はどうにも腑に落ちないのか、理解できないのか、首を傾げて目を細めながら聞いていた。
しかしその沈黙も、俺が気まずい空気に冷や汗をかく前に破られた。
「それってほんとなの?」
・・まあ、そりゃそうか。こんなこと言って素直に信じてもらえた時はそれこそなにかありそうで怖い。
しかし本当のことは本当なのだ。
俺は女の子の綺麗な目を真っ直ぐに見つめ返して頷いた。
「うん、ほんとだよ。最初から最後まで」
「ふーん、そ」
自分から訊いてきた割には随分と薄い納得だ。まあいい。
それで、このあとどうするかだ。
俺は日の出の近い薄紫の空を見上げ始めた女の子をさておいて、下を向き何もない地面を見下ろして思考に集中する。
まさかうまく行くとは思っていなかったので、ここからは全くのノープランだ。急いで妙案を捻り出さなければ。
でもなぁ・・・・
思考に集中しなければとは分かっていても俺はどうしても我慢できず、空を見上げたままの女の子を盗み見る。
見ず知らずの男の賭けの一言に引っかかるほど純情で、ましてやその男の境遇を聞くなど、逆にこちらが心配してしまう。はっきり言ってお人好しすぎるのではないのだろうか。
そんな愚痴みたいな文句は、実は頭の片隅に浮かんでいるだけだった。
朝日が浮かび月が沈むその瞬間、なに色とも判別できそうにない、表現できないぐらい美しい光が地平線から空へ流れこんでくる。女の子の刃のような髪の毛がその光を反射して、鉛色が鮮やかな光沢を孕んだ。
本当はそれに見とれてしまっていた。




