きのこ汁
森の中心にある台風の目のような小さな空白地帯には、紫色の湯気がもんもんと立ち上がっていた。
「・・」
その毒々しい湯気の元凶である鍋を楽しそうにかき混ぜているのはミルだ。なにが上機嫌なのか、少し鼻歌まじりで手を動かしている。
確かに例の毒キノコは食べられるとミルから聞いた。煮れば毒素が湯気となり排出され、その味はなかなかだと。
しかし、ここまで露骨に「僕は毒ですよ!」と言わんばかりの湯気を出されては、疑わずにはいられないのが正直なところだ。
「ミル、それほんとに食べられるんだろうな?」
「さっきからそればっかりね。大丈夫だって言ってるじゃん」
そんな断言されてしまっては、俺は黙るしかなかった。
ーーーー五分後
「はいどうぞ」
手作りだろうか。少し歪な形のお椀によそられて差し出されたのは、味噌汁のような色をしたスープだった。というかきのこの味噌汁そのものである。鼻孔をくすぐる強い味噌の香り。目を凝らせば味噌汁特有の濁りも見れる。たった数日も離れていないというのに、とても懐かしい感じがした。
しかしこのきのこが問題なのだ。濁った紫をしているこのどこからどうみても劇物のきのこが食用など、どう考えても納得できない。できれば食べたくないのだが、ミルの視線がそれをさせまいと俺の顔から外れない。
・・・・食べるしかないようだ
俺は観念して、一つため息をついてから、きのこを汁ごと口に入れた。
「・・」
俺は目をぎゅうっとつぶって、食欲に任せてそのままお椀を傾けていき、お椀の中の味噌汁を全て飲み干した。
そして俺を襲ったのはーーーー
「う、うま!!」
強烈な旨味だった。見た目は味噌汁だが、味は豚汁に近い。だが具はキノコ一つだけのはず。そうなると、あの明らかに毒キノコであったきのこが、肉にも劣らぬ存在感を持っていたということだ。
そんなまさか
俺の驚きが通じたのか、ミルは目が合うとにっこりと笑った。
「おいしいでしょ?初めて食べた人はみんなそういう顔をするの」
そりゃそうだ。この紫色のキノコがこの味だぞ?驚かないほうがおかしいだろ。
結局俺はキノコ汁をお代わりして、計三杯で満足して椀を置いた。
ごちそうさまでしたの挨拶はやはり習慣なのか、抜けることはなかった。
最近忙しくて投稿が・・
なんてね。ただ展開を考えていただけです。遅れて申し訳ありません。




