おまけ
暫く留守にしていたあいだに見事にあちこち散らかしてくれた塔の主に、不遜にもお小言を言いせかせかと片付けながら、エティカはそういえば、と大先生に向き直った。
「大先生、わかっていらしたのですね」
「なにが」
「あの日星屑がぜったいに貯まることを」
だって豊穣祭の日を決めたのも彼だったし、三月以内と定めたのも彼だ。全てはこの星術師の手のひらの上で転がされていた、予定調和の取引に過ぎなかったのだ。
けれど大先生は「さてね」と人ごとのように白をきる。
「そんなことどうだっていいんだよ。父親を助けたいと願ったのは君。目も録に見えないのに私のもとへとがむしゃらに走ったのも君。星屑を集めるまで諦めなかったのも君。全ては君が為したこと。事実はそれだけ。それ以上もそれ以下もない」
ああでも、と偏屈な星術師は椅子ごと振り返った。
出会ったあの時と同じ壮年の美貌を湛えた男はエティカに妙に色気のこもった流し目をくれ、うっそりと囁いた。
「あの時の君はね、その名にふさわしい――――いいや、それこそ君にふさわしい名だと思えるほど凛々しく、気高く、美しかったよ。……私の可愛い、エティカ――いちばん星――」
鋭い眼差しの奥に、新緑の瑞々しい葉の色をたたえて壮年の星術師は囁いた。
からかわれたと気づいたエティカが大先生と絶叫するまで、あともう暫し――。
星術師は、桃色に染まった彼女をそれはそれは愉しそうに、観察していたという。
読了お疲れさまです。
異様に長いお話を最後まで根気強く読んで下さりありがとうございました。
星企画の締切は20までとはしていましたが、もし書きたいなあと迷っておられる方は、まだまだ募集中ですのでこれを機にチャレンジしてみてくださいませ^^
企画サイトはこちら:http://naroutm.web.fc2.com/
なろうの名だたる作者様たちが掲げた星作品を、どうぞ心行くまでご堪能ください。
あと後日あとがきを割烹に書くかもしれません。
興味ないって? ハハハこやつめ。