↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人形伯の愛し方~異世界転生したら罪人認定されました。赦免のためにコミュ障辺境伯と偽装婚約します~  作者: 甘酒ぬぬ
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/55

1-9 魔素不耐症

(いやいやいや! こんなことくらいで……!)


 手が小刻みに震えるくらいスカートを握りしめる。

 からかうだけのつもりが、調子に乗って手ひどいカウンターを食らってしまった。


「どうかしたのか?」

「……どうかしました! 人の想定を越えてくるのやめてください!」

「顔が赤いな。熱でもあるのか?」


 正面にまわり込んできたアルドがエメルの額に触れる。


「大丈夫です!」

「そうでもない。自分で確かめてみろ」


 アルドはエメルの手をつかみ、額に当てさせた。


 熱い。

 頬だけでなく、頭全体が茹でられているようだ。

 照れただけでここまで熱くなるものだろうか。


 自覚した途端、急に足に力が入らなくなった。

 膝から崩れ落ちる。


「すまない。自分のことばかりに気を取られ判断を見誤った」


 すんでのところでアルドに抱き止められた。


「あはは、たぶん色々あって疲れちゃっただけですよ。ご飯も食べてないし、単にエネルギー切れかも」

「軽視しない方がいい」


 アルドはぴしゃりと断言する。怒ったような、厳しい声音だった。


「もしかして……私が具合悪い原因、知ってたりします?」

「……部屋に戻る道すがら話そう」


 ふわりとエメルの身体が浮く。

 抵抗する間もなく、アルドに抱きあげられていた。


 アルドの身体から、何か甘い香りがする。

 飲まされた謎の薬がこんな匂いだった気がした。


「そ、そこまでしてもらわなくても……」

「問題ない。これで二度目だ」

「いや回数の問題じゃなくて」

「運ぶのに支障のない重量だということはすでに把握している」


「……デリカシーないって言われたことありません?」


「もし君が望むのであれば紐でも括りつけて引きずって行ってもいい」

「お手数おかけして申し訳ありません現在の輸送方法でお願いします」


◇


 長い廊下には、アルドの規則的な靴音だけが響いていた。

 廊下だけでなく屋敷全体から人の気配を感じない。

 ミラが言っていたように、本当に使用人を雇っていないのかもしれなかった。


「……そろそろ、教えてもらってもいいですか」


 エメルはおずおずとアルドを見上げる。


「おそらく、魔素不耐症(まそふたいしょう)によるものだ」

「まそ……?」

「裏の森は立ち入り禁止にしていると言ったろう。あそこには特殊な魔素が充満していて、魔術の素養がない者が立ち入ると全身症状を引き起こす。治療せずに放置すれば、最悪の場合、死に至る」


 死という言葉に、エメルの心臓がきゅっと冷たく締め付けられる。


「治療方法は簡単だ。定期的に魔力安定剤を摂取する。症状が重い時は一日に数回。快方へと向かえばその頻度も減っていく。決して治せないものではない」


 改めて尋ねる必要がないくらい詳細な説明だった。


「迷惑かけてばっかりですね、私」


 エメルはアルドの身体に頭を押し付ける。


「生きている以上、他人に迷惑をかけない者などいない」

「……慰めてくれてるつもりですか、それ」

「事実を述べたまでだ」

「じゃあ、勝手に慰められたと思って感謝します」

「君はしばしば特殊な考え方をするな。私には真似出来ない」


 アルドはなんとも言えないため息をついた。

 感心しているのか呆れているのか。

 感情の起伏の少ないアルドの顔を見上げていても、答えは出なかった。


「森が立ち入り禁止なのには、ちゃんとわけがあったんですね。でもなんで私、森の中なんかで倒れてたんだろ。さすがにそこまでは知らない――ですよね?」

「興味がない」

「私がどこから来たかとか、全然気にならないんですか」

「それを知ったところで何かが変わるわけでもない。君がどこの誰であろうと問題ない」


「人のこと罪人呼ばわりしたのに?」


「君の素性と犯した罪に因果関係があるのか? どこの誰であろうと、あの場所に立ち入った時点で不法侵入が適用される」

「関係ありません! というか冤罪です!」


 語調を強めた瞬間、エメルは思いきり咳き込んでしまった。なかなか咳が止まってくれない。


「喋り過ぎだ。体調がすぐれないのだから、少しおとなしくしていろ」


 そう言われた途端、エメルの目蓋が重くなった。目を開けていられない。


「……わたし、大丈夫、ですよね」


 不安から、つい尋ねてしまう。


「身体の治療と生活の保障をすると言ったはずだ。私は約束を違えない」


 ずっと正面だけを見ていたアルドが、ようやくこちらを向いてくれた。


「はは、すごい自信ですね」


 頬の肉がこわばって、上手く笑顔を作れたかわからない。


「信じて、ます……」


 伝えられた安心感からか、直後に目蓋と意識が完全に落ちた。

1章最終話までお読みいただきありがとうございます。

もしよければリアクションやブクマ、↓にある☆☆☆☆☆評価で応援していただけると更新の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。