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人形伯の愛し方~異世界転生したら罪人認定されました。赦免のためにコミュ障辺境伯と偽装婚約します~  作者: 甘酒ぬぬ
2章

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2-3 即行でバレました

「――大変申し訳ありません!」


 アルドの私室の扉を開けるなり、エメルは深々と頭を垂れた。


 ちらりと部屋の中を窺うと、床に座り込んで何やら作業をしていたアルドと目が合う。

 アルドの周囲には部品のようなものが散らばっている。


「簡潔に説明してくれ」

「……ヒューさんに偽装婚約がバレました」

「そうか。問題ない。いずれ話すつもりだった」


「…………ぇええ?」


 半泣きのエメルを尻目に、アルドは何事もなかったかのように作業を再開してしまう。


「俺が言うのもなんだけど、もうちょっと気遣ってやれよ……」


 エメルの後ろに立っていたヒューが額を押さえて目を伏せた。


 結局、エメルは洗いざらいヒューに喋ってしまった。


 不法侵入のことから偽装婚約、魔素不耐症でアルドの治療を受けないと死んでしまうということまで。


 ワンチャン情状酌量してもらえないかという下心もあり、少しだけ大げさには話したが嘘は言っていない。


 アルドにも詳しい事情を聞くということで裁定保留となり、現在に至る。


「何が問題だ。私が説明する手間が省けた。褒めたいくらいだ」

「人命を盾に無茶な要求してんじゃねーよ! 魔素の影響なのか倒れる前の記憶もないみたいだし。女の子に無闇にストレスかけんな!」


 ヒューはアルドの胸倉をつかんで立ち上がらせた。


(あ、思ったより同情してくれてた)


 エメルはほっと胸を撫で下ろす。


「そういう君も少なからず負荷をかけたのではないのか? どうせ無理に聞き出したのだろう。彼女には自ら吹聴する利点がないからな」


 アルドの指摘に対し、ヒューは押し黙って手を離した。


「や、やめましょう? そんなギスギスしないで。お腹すいてるから必要以上に刺々しくなっちゃうんですよ、多分」


 エメルはアルドの腕を引っ張り、ヒューから距離を取らせる。


「ふむ。では食事にするか。作業効率も落ちてきたところだ」


 アルドは椅子に掛けてあったフロックコートを羽織ると、足早に部屋から出て行ってしまう。


「ほんとマイペース過ぎるんだけど……!」


 エメルは慌てて後を追った。


◇


「ちゃんとしたご飯用意するのでちょっと待っててください!」


 キッチンに着くなり、置いてあったパンをそのままかじろうとするアルドを押し留め、食卓に着席させた。

 ヒューと一緒に三人分の食事を手早く運ぶ。


「アル! 飲み物はコーヒーでいいか?」


「あぁ――いや、コーヒーはもう飲まない。別のものにしてくれ」


 アルドの返答にヒューは一瞬驚いたようだったが、すぐに食器棚からティーポットを手に取った。


「エメル嬢は?」

「お二人と同じものをお願いします」

「気なんて遣わなくていいのに」


 ポットにお湯を注ぎ終えたヒューは弱々しく微笑み、ティーカップを三つ取り出す。


「……さっきは申し訳なかった。あんな、詰め寄るような真似をして。あいつの性格を考えれば、そもそも信用できない人物を屋敷に留めておくわけがなかった」

「いえ、そんな……。要人警護のお仕事としては、当然の判断だったと思います。私の素性が知れないのは本当なので」


「……やっぱり俺と付き合わない?」


「結構です。間が持たない時に口説く癖やめた方がいいですよ」

「わりと真面目な提案だったんだけど……まぁ、俺は『ヒューさん』で、あいつは『アルド』だもんな」


 ヒューはにやっと口の端を持ちあげた。

 ティーポットから紅茶の良い香りがほんのりと漂ってくる。


(なんとなく流れで呼び捨てのまま来ちゃっただけなんだけど……)

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