拒
次から次に来る子供たち。
喜ぶ子も、悲しむ子もいた。
私は眺めることしかできなかった。
―――私だって本当は、全ての子供に名を与えたい。
けれど、それは許されない。
役割を全うしなければ、そうすればいつかこの役から解放されると信じ続けていた。
それでもなお、私は分けるのをやめられなかった。
やめてしまったら、私の存在意義がなくなってしまうようで。
世界を壊してしまうようで。
だから今日も私は分ける。
知らぬふりして、ただ分ける。
―――誰の視線も、目に入れぬように。
そうしてきたはずだった。
だが今、久しぶりに眼と眼を合わせている。
合わせてしまっている。
名前を拒否するなんて、あっていいはずがない。
なのにその子は、名を拒んだ。
名を授けられるべき子。
なのに、なぜ。
なぜ、あなたは名を拒むの?
目を逸らせなかった。
私は手を、伸ばした。
「本当に、いらないの?」
その子は静かに首を上下に揺らした。
ここでこの子の意見を聞いてしまったら、平等でなくなる。
今まで名が欲しかったけど、名付けられなかった子の気持ちはどうなってしまうのか。
この世は二分することで、平静を保っているのに。
「ごめん、ごめんよ―――」
私は天からの指示に従えなかった。
その子に名をつけられなかった。
この視線から目を、離してはいけないと思った。
その瞬間、私に終わりが訪れた。
もう私に、分ける資格はなくなったのだ。
私は間違ったことをしてしまったのだ。
天からの命を真っ当しなかった。
それでも。
それでも私は後悔していない。
その子は泣いていなかった。
静かに、私に微笑んだ。
私には、その笑みの意味がわからなかった。
救われたのだろうか。
それとも―――
私にはなにもわからなかった。
言葉にしたかった。
けど、言葉にしてしまえば、全てが壊れてしまう気がした。
というより、役割を果たせなかった私に、言葉を放つ権利なんてなかった。




