おとこのこ
次の子がきた。
小さな手だった。
微かに手が震えていた。
―――よくあることだ。
周囲は誰も彼を助けることはできないし、私だってできるはずがない。
彼には名を与えられるのか。
与えられないのか。
ただそれだけ。
それだけを、周りは見守っている。
これはただの作業だ。
今まで何度も、何度も自分に言い聞かせてきた。
「ねえ、ぼく、いい子にするよ」
耳がくさるほど聞いた。
その子は、ぎこちなく笑っていた。
こわばった口角を、必死に上げている。
「おてつだいだってするし。ちゃんと話も聞くしっ」
言葉が途切れながらも、必死に私に乞うた。
用意してきたのだろう。
忘れないように、何度も繰り返したのだろう。
——何度も見てきた光景だった。
同じように笑って、
同じように縋って、
同じように、期待する。
「だから……」
その先を、言ってはいけない気がした。
期待されると、困る。
分けるのは私じゃない。
そう伝えられたら、どれだけ楽なのだろう。
「……」
私は、何も言えなかった。
言えば、決まってしまう。
言わなくても、決まっているのに。
今にも絶望しそうな瞳だった。
―――見てはいけない。
そう思いながら、私は目を逸らした。
私の一言で、この子の人生はすべて変わる。
指先が僅かに震えた。
「ごめんね」
彼の瞳が濡れた。
―――迷う必要なんて、ない。
私に迷う権利なんて、ない。
私はまた、一人の自由を奪った。




