間話「依頼」
ハリムは困惑していた。
依頼は数しれず受けてきて、失敗などなかった。
しかし、今回の依頼は特別だ。
子供を殺してほしいという依頼だってのだから。
「しかもまだ七歳かよ……」
暗殺部隊『紅き疾風』の頭ハリム・ジルークは頭を抱えた。
自分の娘と同い年、それを手に掛けることに動揺を隠せない。
報酬は今までの依頼と比べたら桁外れの高額だ。
しかし、紅き疾風の掟として、子供は殺さないと決めていた。
部隊の仲間ほとんどが家族を持ち、もちろん子供もいる。
だから依頼を受けて殺すのは悪名高い犯罪者ばかりであった。
「これだから貴族ってのは嫌いなんだよ」
金を出せばなんでもやってくれると思われているが、彼らにも人としてのプライドがあり、無差別殺人をするような事は絶対にしない。
そうなればそこら辺の野盗と同じだからだ。
「カリーナ」
ハリムが呼ぶと一人の女が現れた。
「はい、如何致しましたか?」
「この手紙をアルファール家に届けてくれ」
ハリムはしっかりと蝋で封をした手紙をカリーナに渡した。
「早急にだ」
ハリムは真剣な顔つきで言った。
「はい、確かに。早急に届けて参ります」
カリーナは懐に手紙を忍ばせ、一瞬のうちにその場から消えた。
「ふう……」
ハリムは深く溜息を付き、軽く頷いた。
「これでいいんだ」
ハリムの決意はかたかった。
そして、この決意が後に世界を巻き込む様な出逢いと争いになるのであった。




