第四話《警備隊》
煙が立ち上る、スチームパンクというほどの技術はないが、これも趣がある。バオックスは栄えた町ではないが、活気に満ちている。
比較的、巨獣の生息数が少ないのも理由だろう。巨獣の出現頻度が多い場所は、人が住まないか、警備隊によって栄えているかの二極化だ。
「良いだろ、この町。オレは誰よりもここを愛してる。仲間たちもそうだ。みんなここで育って、ランジェになった」
「生き生きとしてるな。みんな、ここまで案内してくれてありがとう」
「最後に自己紹介させてくれよ。オレは、
ライ・バオックス。何かあれば町の中央にある、塔に来てくれ。ほら、みんなも」
ライは仲間たちに自己紹介を催促する。やはりシエラだけはまだ敵対心を強く持っていると見て取れる。早速名乗りを挙げたのはルーシーだ。
「ね、私はルーシー。短い間だったから、仲良くとは言いづらいね」
「アタシは馬車守のミーイ。運送の依頼があったらいつでもな」
「弓使いのユリナよ。よろしく」
「シエラ。あんたの顔をもう見なくて清々するわ!」
もう一人いたはずだが、恥ずかしそうに馬車から顔を覗かせるだけでこちらには出てこない。
頭を下げ、挨拶をした。再び馬車に視線を移すと、そこにはもう居なかった。
「イーラは恥ずかしがり屋なんだ。それでも腕が立つガンマンなんだぜ。あと、オレたちは3日後には町を出る。塔には話をつけておくよ」
ライは手を振って歩いていく。
<うぬす>はこの優しさに浸ると同時に、ずっと疑問が湧いていた。なぜライはここまで手厚い案内をしてくれるのか。心底不思議でしょうがなかった。
気になり出したら止まらない。歩き始めたライの肩を、急いで叩いていた。
「なんで! なんで、そんなに助けてくれるんだ?」
「そりゃ、恩は売っといた方が気持ちが良いだろ。オレは商人が本業だから、人との繋がりが大好きなんだよ」
「そうか……ありがとな! これから先出会う人たちにこの町の事伝えておくよ。良い町だってね」
「助かるぜ!」
数分の間、無駄話で笑い明かした。ライは馬車に乗って、気づけばはるか彼方に小さく見えていた。<うぬす>は初めて出会った人がライ一行で良かったと心底思う。まずは、警備隊の拠点に向かう事にした。
重苦しい雰囲気が漂い、地味に汗臭い店内は奥に行くほど酒の臭いも増していく。バオックスの町の警備隊拠点。わかりきっていたが、ここは男の町なんだと真に理解した。
入ろうにも、体力的な疲弊が隠せなくなっていた。警備隊拠点の目の前の通路で倒れるように寝てしまった。しかし、前回とは違って意識がある。アナウンスの情報を集める絶好の機会だ。「シニスト」のアナウンスと同じだと考えて良いのなら……。
【身体の機能を停止しますか? YES/NO】
NO。おそらく、目を閉じて体を止めている時、このアナウンスが起動する。
……クエスト表示!
【進行中のクエストを表示します】
成功だ! このアナウンスは基本、「シニスト」の物と同じだと認識しておこう。機能停止時には身体が休まる効果を持っている可能性。それは後で実験できる。
《メインストーリー 帰還》
【クリア条件 この世界の攻略
報酬 現実世界への帰還】
世界の攻略というのは「シニスト」のクリアと同義だと仮定しよう。それ以外に今は立説できない。ならば全モンスターの討伐、簡潔に言えばその上で出現する巨獣の王の討伐だ。
尚更、警備隊になる必要性の高さに気付かされる。
力を振り絞って立ち上がる。少し背の高い草の中で眠ることを選択した。
【機能を……】
YES。食い入るように行った。
<うぬす>は意識を失った。
【身体を完全に起動しますか? YES/NO】
YES。この世界に来てから2日目。空気感にはなれてきたが、風呂に入らないことは現代人にとっては死活問題だった。とにかく気持ち悪い。ポンチョのような格好が功を奏して、風通しの良さでマシにはなっているが、マシなだけ。
とりあえず警備隊拠点が開くまで待つ。前夜に建てた、機能停止時の体力回復は確定。睡眠と捉えて大丈夫。確実な回復という点は睡眠よりも高性能だ。
正午まで待ち、扉を叩いた。受付台に立ち、自身の意向を告げる。最初に声を上げたのは受付嬢ではなく、酒を飲み老けていてた男たちだった。
警備隊になりたいって……いやいや、お前みたいなヒョロガリがか?」
警備隊ランジェ拠点の一部に笑いが生まれる。無理もない。異様な格好に、不思議な匂い、何より一番は場違いなほどの肉体の出来だろう。
周りの男達はほぼ180超えの筋肉ダルマ。
しかし、<うぬす>にはやらなくては行けない事がある。ここでは引けない。足を一歩前に突き出す。
「クリアモンスター全滅して、とっとと家に帰りたいんだ……!」
<うぬす>の冒険が、始まった。




