第二十四話《試験の続き》
ハイルに出ていってくれと、3人は医療室から追い出されてしまった。何もまだ話せていない。
しかし、それは幸運だったみたいだ。
キリエの順番丁度。すでに試合も後半戦になっていた。
「それじゃあキリエ、出発〜!!!」
キリエが下に降りていった。その間、<うぬす>は疑問をサヤにぶつける。
「故郷を守るために警備隊になるって言ってたけど、今のままだとダメなんですか?」
「うん。サヤとキリエの故郷は今、禁足地になってるの。魔獣が増えすぎて普通の人だと入ることすらできないんだ。だから、ランジェになって故郷を取り戻す」
「教えてくれてありがとう。みんな願いがあってここに来てるんだね。俺も負けてられないや」
「頑張らなきゃね」
サヤと<うぬす>は自然と口調が解けていた。
話し終える時、実況の声が響く。
「第二十試合 キリエvsポポ開始!」
対戦相手は小さな手斧を持った筋肉ダルマ。はち切れんばかりの筋肉が、鎧なんだろう。上裸だ。
キリエが一瞬で距離を取る。軽妙なステップワークだ。そして一番すごいのは、上半身が一切ブレていない。
「一射目!」
しなやかかつ、強かに弦を引く。和弓に似たそれは、弧を描きながら丸まっていき、やがて限界に達した。そして、矢が放たれる。
「うらぁ!」
ポポの手斧に弾かれる。しかし、その木片が右足に軽く刺さった。ほとんどダメージはない。しかし、先制攻撃が当たったというのは大きく、戦いというのは流れであって、先に掴み切った方が勝つ。
「二射目!」
今度は2本同時に矢が放たれた。一本は余裕で防がれる。しかし、弾ききれなかった残りの方が右足を掠める。
「あちゃ〜、失敗……次つぎ!」
「もう怒ったぞ! その態度、舐めているな!」
ポポが手斧を投げ捨てた。コロシアムを照らすランタンに当たる。ランタンを固定していた石細工ごと破壊してしまった。
砂埃が舞い、キリエの視界が奪われる。
「ふんぬっ!」
直線的超高火力パンチ。普通とは思えない殴り方だった。ポポは腰や足を使うことなく、動きながら腕の力だけで衝撃を与えていた。
戦闘センスは圧倒的にキリエに分がある。
キリエの呼吸が少し浅くなる。矢筒で守ったものの、衝撃は内側まで届く。もし、ポポの体使いが完璧ならば、死んでいただろう。
「三射目……!」
壊れた矢筒から、まだ打てそうな矢を選定する。
キリエはまた構えた。そして放つ。驚いたのは、それが3本同時だと言う事。中々の技である。
「ふんっ! ……ぬぅ……!」
蛇の様に相手を捉える矢。その勢いに押され、ポポは右足を捉えられてしまった。血が流れ出す。
「これで……動けないね……。続ける?」
すでにキリエの次なる攻撃は、ポポの心臓を的確に狙っている。勝負は決した。はずだった。
「ぅぅぅぅううぐぅ!」
ポポは自らに刺さる矢を抜く。流血再び。
その抜かれた矢を投げた。今度は正確にキリエを狙って。
キリエはなんとか、弓でいなす。
しかし手のひらは勢いに耐えられなかった。弓を落としてしまう。
槍の様に矢を構えた。
ポポは気絶寸前、まだ歩く。止まらない。
「これ以上近づいたら刺す……!」
「あぁぁ……! うぁ!」
キリエが突く直前、倒れた。ポポはその巨大を地面に伏せた。攻撃のためではない、本当の限界値。人に許された活動を超えたのだ。
キリエはその巨体をコロシアムの端っこに寄せる。そう、ポポは"負け"を言う前に意識を失った。
◇◇◇
数十分後。砂埃もとっくに落ち着いている。
「……ここは?」
キリエは絶対に外さない距離で、ポポの頭に矢を向けている。観客は固唾を飲む。二つの執念が最後までぶつかった結末を見逃すまいと。
「キリエの勝ち。あんたの負け。認めてくれ」
「負けた。良い試合、だった」
勝者と敗者は互いに肩を組み、共に会場を後にした。その後別れ、ポポは医療室に歩いていく。
爽やかな結末。
キリエが席に戻って来た。
「本当にいい試合だったね。お疲れ様、キリエ」
「ありがとー! サヤもそろそろ試合でしょ?」
こくとくとサヤは頷いた。
<うぬす>は友情を眺めながら、その場を去る。さっきの男、ポポ。彼に聞きたいことがあった。
あのタフネス、普通の人間ではあり得ない。いくら高ランクの警備隊でも、人間だ。限界の後は動けない。
人族と他の種族とのハーフか?
ゲーム「シニスト」には4種族ある。人、エルフ、ドワーフ。最後に竜人族。
竜人族は故郷から出てこない西に棲む種族だ。そして、他の種族から忌み嫌われている。巨獣信仰のため。
もしポポが竜人と関わりがあるのなら、なぜこんな公の場に……? もしや、北だけではなく西の方にも異変が起きているのか?
矢継ぎ早に<うぬす>は医療室に向かった。




