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魔界樹林のヴィヴァント・アポローグ(動植物寓意譚)~生き抜くために、改革します~  作者: 蒼宙 つむぎ


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17.体力と基礎

前話で「ベン」さんを「ダン」さんと書いてしまってました(泣)

見つけたところは修正しました。

「てめぇら!ちんたら走ってんじゃないよ!」


「「「はい!」」」


「まったく!体力なさすぎだろぅが!」


「「「イエス!マム!」」」


 ただいま、絶賛しごかれ中の私たち。


「なんで私も一緒に鍛えられてるのよ」

「本当だよ。ルド兄だけでいいよぉ」


「ほら!そこの女子!文句言わない!あと五周追加しようか?」

「「ごめんなさい!もう言いません!(今は)」」


 ゼエゼエと息を切らしながらなんとか言われていた走り込みを進める。

 昭和のスポコン真っ青なしごきは人間の私にはきつい。魔人のアンちゃんですら息が上がっている。ルドは……、思っていたより走れているようだ。男と女の違いは魔人でも同じなのだろうか。……いや、違うな。ダーラさんのあの筋肉、程よく弾力がありベンさんよりも質がいいのではないだろうか。


 ダーラさんに言われた通りに集落の外周を三十周走り膝をついて一生懸命酸素を取り込もうと息を急いたので肺が少し痛い。隣のアンちゃんも同じように息が荒く脇腹を押さえている。私たちは休憩が必要だ。


 ルドはと思い目で姿を探すと、息は少し荒いものの立っていられるようで腰に左手を当てて汗を右腕で拭っている。いわゆる、イケメンのスポーツしましたっていう姿……なんだけど、しているのはルドだからね。ときめかないね。



「さて、女子は今日はこのくらいで終わろうか。ルドは今から槍の基本動作をするよ」

「はい!」


 そう言って二人は槍を片手に家の裏手に向かって行った。



 あ、あの日のお昼にベンさんが家に戻ってきたけれど、結局ダーラさんに教えてもらうことになったので一緒にご飯を食べて仕事に戻ってもらった。勿論、食後のお茶をすすっているときに少しだけ説教させていただきましたけどね。言葉が足りない、と。




「エーレちゃん、動けそう?」

「ん……。あと少しこのままでいたいかな」

「あ~。よかった。私もちょっと動けないかな」

「そっか。ちょっと安心した。私は人間だからって言うのもあるけど、ほとんど動かない生活を送っていたからさ。本当に魔界に来てから体力になさに落ち込んでいたんだよね」

「そうなんだ。でも、私と変わらないくらい動けてるじゃない。だったら、同い年の人間の子供より体力ついたんじゃないかな」

「そう?私、体力ついた、よね」


 アンちゃんの顔を縋るように見上げた。アンちゃんは満面の笑みで首肯する。



 オークは猪のような相貌で、美醜で言うとよくないとされる種族だろう。

 けれど、そのキラキラとした笑顔は本当にかわいくて、そして美しい。

 もしも彼らを馬鹿にするような人がいたら、私は最大の軽蔑を覚えるだろう。



 それよりも、ルドの鍛錬はどうなっているだろうか。あと一週間しかないのだけれど……。ダーラさんから聞いた時は基礎を叩きこんでいると言っていたが、間に合うのだろうか。




 更に三日、毎日の体力作りに基礎の動きをひたすら、――ただひたすら反復練習を続けたルド。

 流石にあと四日後に成人の儀なので焦りの顔になっている。


「母ちゃん……。俺、このままでいいのかな」


 お昼時、ご飯を食べながらルドが不平を鳴らす。


「ああ、今、変な技術を教えたところで役に立たんだろう。それなら基礎を極める方が手っ取り早い」

「そんなこと言っても!狩りが出来なかったら俺は……」

「できるよ。あ、実地もやんないとね。明日から森に入るかね」

「え?森の中?え?魔獣を狩るの?」

「そうだよ。小さなものなら何とかなるでしょう。狩りのことはみんなに話しておくよ」


 ダーラさんは本当にしっかりとしている。

 狩猟にはちゃんと数が決められているから、小さい魔獣であっても申請をするらしい。少しぐらい……と思ってしまいがちなのにね。

 でも、それをなし崩しにしてはいけないのだろう。



 次の日、朝からルドとダーラさんが森へと向かう。私とアンちゃんはお留守番だ。


「小さい魔獣であっても怪我をするからね。ちゃんと守ってくれる大人とか武具を扱えるようになったら奥に入ってもいい。ルドの成人の儀が終わったら短剣くらいは扱えるように訓練するかい?」

「え?いいの?」

「勿論だよ。アンも一緒にするだろう?」

「っ!!する!!」

「じゃあ、決まりだね」


 ダーラさんはそう言って息まくルドと森に入って行った。




 その夜、ルドは何も狩れず帰ってきた。落ち込むその姿に声を掛けられず、ルドは夜ご飯を半分残してさっさとお風呂に入って寝てしまった。


「母ちゃん、ルド兄落ち込んでたね」

「ああ、そうだね」

「何か元気づけられたら……」

「余計なことはしない方がいい。こういうのは何度も経験して学んでいくんだ。これまで狩りが出来ていなかったからね。落ち込みも大きいのさ」

「そういうもんなのかな……」


 アンちゃんは納得いっていないようだ。


「そういうもんだと思うな。変に慰められてもうれしくないと思うよ、ルドは」


 アンちゃんの肩に手を置き、そっとしておいてあげようと促す。


「エーレちゃんがそう言うなら、そうする」


 口をとがらせ、仕方なさそうに言う彼女は、やっぱりかわいい。


「狩りが出来た時に、いっぱいお祝いしよう」


 ね、と言って笑顔を見せる。


「そう、だね。お祝い、いつでもできるようにしておかないとね」


 やっとモヤモヤが晴れたようだ。




 成人の儀の前日。今日も朝から森へと向かうダーラさんと元気のないルド。

 彼はまだ、一匹も狩りが出来ていない。


次話、ルドの成人の儀を書こうと思います。

部族の成人の儀っていろいろあるので、どのようなものにしようか迷い中……。

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