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魔界樹林のヴィヴァント・アポローグ(動植物寓意譚)~生き抜くために、改革します~  作者: 蒼宙 つむぎ


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16/18

16.基本って、大事だよね

「ルド!しっかりと槍を構えて!」

「おう!」

「だから!構えがおかしいって!」

「お、おう?」


 ルドの狩猟レベルを上げるべく、魔界樹林に入ってすぐのところで槍の練習を見ること三日。私も槍を使うことが出来ないのだが、その私ですら問題ありまくりだとわかってしまうほどのダメさに大きくため息をついてしまうのだが……、仕方ないだろう。それよりも、だ。そもそもの事を確かめていない私も馬鹿だな。


「ルド、槍の扱いはちゃんと習ったの?」

「ん?習ってない。それがどうした?」


 そりゃできなくて当たり前だろ!


「ベンさんにお願いしたの?」

「あ……。してない。いつも忙しそうだし、なんていうかお願いしづらいと言うか……」


 ルドがもじもじと手を遊ばせ、小さな声で言い訳をしている。

 なんというかって……。うじうじしているその動き!イラつくわ!!


「あぁ~ん?なんじゃそりゃ!てめえの親だろうが!ダメもとでもいいからお願いしてみて、無理なら他を考えたらいいだろうが!」


 思いっきりルドの背中を叩き、怒鳴ってやった。



 ベンさんは確かに口数が少なくちょっと威圧的ではある。子供が遠慮してしまうくらいのそれは正直良くない。でも、ルドがダンに声をかけないのも良くない。ベンさんは教えてくれないようなそんな小さい男だろうか……。


「ルド、ベンさんは今どこに?」

「えっと、確か、今日は狩りはしないから武器の手入れをしていると思う」

「あら、よかったじゃない!今からお願いしに行くわよ」


 ギャーギャーと喚くルドを引きずり、武器庫のある方へと向かった。



「ベンさん、少しお話いいですかぁ?」


 少し、子供っぽさを出して話しかける。大人はこういう声や仕草を好むものだからね。


「お、エーレちゃんか。どうした?」


 木を輪切りにしただけの椅子に腰かけ、槍先を研いでいる彼が振り返る。筋肉が盛り上がっているが、研いでいる指先は丁寧で優しい。


「えっと、ルドのことで少し……」


 視線を横でふてくされているルドに向ける。

 ベンさん、気が付いてくれないかな?


「ん?ルドか?……後でな」


 え……。仕事中は余計なことしませんってか?これはあれだ。前世で言うところの社畜親父だ。勤務中は家族であろうと後回しにする奴。


 でもさ、オークってそんなに規律が厳しい種族なの?



「えっとぉ、休憩時間とかに話を聞いてもらってもいいですか?」

 あざとさを出して、今が無理なら時間あいた時にお願いをしてみる。


「……。昼になったら」


 よし!昼まであと小一時間ほどね。


「ありがとうございますぅ。ではお昼に!」


 あざとく礼を言ってさっさとこの場を去る。変に縋ったりしつこくお願いすると余計に話も聞いてくれなくなるからね。引き際も肝心。


 ふてくされルドを再び引きずり、家に向かう。今動いても仕方がない。だったらベンさんにお願いする作戦を練ったほうがいい。

 ベンさんの事をよく知る人に彼のことを聞いてみよう。



 家に着き、早速アンちゃんやダーラさんに声をかけた。この二人なら何かヒントをくれるだろう。

 そして、話をしてわかったことは……。


「えっと、ベンさんは極度の口下手に極度のあがり症?」

「うん。父ちゃんはいつも『ああ』か『そうだな』しか言わないよ」

「そうだね。それにもっと致命傷なことがあるよ……」

「致命傷、って……」


 ものすごく真剣な顔をしている(と思われる)ダーラさんを見て、ごくりと息を飲んだ。


「……あいつはね、物事を教えるのがメチャクチャ下手なんだ」

「――あ……、そう言うことね」


 これはルドが可愛そうになってきた。

 ダンさんは、前世で言うところの職人気質な親方なんだ……。

 背中を見て覚えろ的な?背中を見ても手元見えなかったら覚えられんだろう!っていつも思うけどね。


「このままだと、ルドの成人の儀。成功しないと思うの。何とかしてあげたいのよね」


 顎に手を当て、ぽつりとつぶやく。


「エーレ……。お前、そんなに俺のことが好きなんだな……」

「……ん?」

「いつも間にか呼び捨てにしてるなんてな。ちょっと照れるな」

「照れるな!ていうか、勘違いするな!」

「エーレの気持ち、よく分かった――。種族は違うけど、お前を大切にするよ。母ちゃん、エーレと番うよ」

「「「……」」」


 呆気に取られた私たち。呆れてもの言えなかった私に変わり、ダーラさんはルドを怒鳴り拳骨を食らわせ、家の柱に縛りつけていた。

 うん。変に盛られても困るからね。ダーラさんはよくわかってらっしゃる。怒った顔がいつもと変わらないように見えるけど、これは内緒。


 それにしても、ルドの狩りが上手くいかないとね。この村での居場所が微妙になってしまう。



 困ってるやつがいたら、ほっとけない。これは前世も今も同じ性格だ。

 納期に間に合わないのであれば手を増やしてその場を収め、何がいけなかったのかを確認し、次回に生かすことを導いてやる。

 少し時間に余裕があるのであれば、自分自身で何とかする方法を考えさせる。

 大体の場合、見方が限定的で視野が狭くなっているのが問題だ。

 現時点から納期までの一方通行を見るのではなく、納期から逆算し何が足りないのかを俯瞰する。

 そして、上長に相談する。


 そして、この場合の上長は――ダーラさんだ。



「ダーラさん、貴方にベンさんの狩猟技術をルドに教えてもらえるようにお願いして欲しいの」


真剣に、彼女へ願い出た。


「そうだね……。ダンもね、小さい頃は全然できなくてね。落ちこぼれだったんだよ」

「え?父ちゃんが?」

「そうだよ。母ちゃんが基本を教えたんだ。ベンは少しのきっかけでいろんなことを自分で考えて行動できるようになったんだよ」

「「「おぉ~!!」」」


 なんと!

 ここにチームリーダーがいました!

 いや、班長か?


 とにかく、まずはダーラさんにルドへ基本を教えてもらうのが近道のようだ。



 成人の儀まで――、残り十一日。




【おまけ】

最近のエーレは珈琲(もどき)を飲んできません。生活が安定しているから飲まなくても気にならないようです。

「ベン」がいつの間にか「ダン」になってしまってました(汗)

見つけたところは修正しました(汗)

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