もっといろんなことを学んでまた戻ってくる。
オークの集落でお世話になることになった私は、ゴブリンの村に置いてきたものを取りに行きたかった。
「オークの方々、私の荷物を取りに行きたいのですが……」
なんちゃって珈琲は別にいいのだけれど、やはり私が書いていたものだけはどうしても必要だ。せっかく書いてきたものをみすみす手放すだなんて……、あり得ん!
「じゃあ、一緒に戻ろう」
ゴブリンが、笑みを浮かべて言うのだが……。いつもの裏のない笑顔ではない。
「私、荷物を取りに行くだけだから」
「うんうん。そうだね」
「すぐにここに戻るからね」
「今はそう思っているんだね。わかったよ」
「……」
これは、絶対に情に訴えて引き止める奴だ。児ゴブリンが縋りついて来たら……、無下にできないだろうな。
「オークさん、一緒についてきて欲しい。私、ここに戻りたいの」
オークのおかんたちに、瞳ウルウルの上目遣いで強請ってみた。
「エーレちゃんがそう言うなら、勿論一緒に行くよ」
「やった!オークさん達、大好き!」
キャッキャと飛び跳ねて喜ぶ姿を見たゴブリン達は、膝をついて落ち込んでいた。
そして、来た魔界樹林の道をゴブリンとオークの雌達とで戻ることになった。
残りのオーク達は私の寝床を作ってくれるらしいからちょっと楽しみだ。
「そう言えば、崖とかあってちょっと危険なんだけど、大丈夫ですか?」
オークの雌達に確かめた。
「ああ、私たちはね、この筋肉があるからね」
そう言って見せてくれた腕の力こぶはびっくりするほどの盛り上がりを見せた。ゴブリンの長よりも立派な筋肉でした。
「よかった。皆さんの筋肉は素敵ですね」
「「「!!!」」」
ゴブリンの雌達が一斉に私を凝視する。何かまずいこと言ったかな……。
「エーレちゃん!あんたはわかってる!女の筋肉はね、男のものと違って無駄がないのよ~。エーレちゃんも一緒に鍛錬しましょうね~」
うわぉ~。そっちか……。
曖昧に返事だけしておいたけど、勿論私はするつもりないよ。その時間はいろいろと学ぶことがあるのよ。
そうして行きよりも早くゴブリンの村に到着し、急いで借りていた小屋へと向かった。箒とか雑巾なんてものがないから掃除ができないけれど、使っていたものを小屋のテーブルの上に一カ所にかためておいた。そして日記とヴィヴァント・アポローグを鞄に入れて部屋を見回した。
魔界にやってきて一番最初にお世話になったゴブリンの村。彼らと一緒に寝泊まりは生活習慣が違うから無理だった。そこで、森の人が使っていた小屋を借りて生活をしたのだ。
本当に恵まれていた。逃げ出してきたころは、心がざわついて夜中に何度も目が覚めた。そんな時、窓から見る月がきれいで癒されたものだ。
月……。
今まで何とも思わなかったけれど、魔界にもあるんだね。
あとで日記にも書いておこう。
そして外に出て扉をゆっくりと閉めた。
感謝の気持ちを込めて、丁寧に。
「……」
私は次の瞬間、今閉めた扉を勢いよく開け、テーブルに駆け寄った。
インクとペンを忘れてるじゃん!!
戻ったついでに、なんちゃって珈琲も持って行くでしょ!!
そうしてゴブリンの村に最後の挨拶をするのはやめてオークのおかん達とここを去った。
あ、最後の挨拶もしないなんて薄情者だと思われるかな。
いや、最後の別れにはするつもりないし、本当に児ゴブリンに縋りつかれたら出ていけないからね。
一緒には暮らせないけれど、私はゴブリン達のことは嫌いではない。
もっといろんなことを学んでまた戻ってくるつもりだ。
ちょっと短めの話になりました。
続きは週末に。




