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解析スキル「アナライズ」でチートだけど、私は鑑定士なので受付嬢と冒険者はお断りです!~呪いの兎型アーティファクトを添えて~  作者: 夢咲みやと
第二部 オーバーキルと宝石と

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93 希釈してお届けします

朝に1話更新しております。遡ってお読みください。

 次の日に出勤すると、早々にギルド長に呼び出される。

 二階に上がってギルド長室の扉をノックをして中へ入ると、もう既に紅茶セットが置いてあった。

 ギルド長はソファに座ると、向かいに座るように手の平で指し示している。


 私が座ると、ギルド長手ずからお茶を淹れて、前に置いてくれた。


「その顔だと、もう街の騒動は耳に入ってるみたいネ」


「現場に居合わせましたからね。生憎、敵には遭遇しませんでしたが」


「今回、箝口令を敷いてあったから、もう少し後に頼む予定だったのだけど、遭遇しちゃあ仕方ないわね。もっとも原因はまだ特定しきってなかったのだけど」


 おっと、藪蛇だったかな?


「それじゃあ、捜索はセルフィちゃんにお願いしちゃうわ、”解析は”グレードアップしたんでしょう?あとは”氷雪”に声掛けておいてね」


「ちょっ、私が頼むんですか!?ギルドから依頼してくださいよっ」


「依頼は出すけど、先に他の依頼を受けないで欲しいから、声掛けておいて欲しいのよぉ。セルフィちゃん仲が良いでしょ」


 私が”氷雪の鷹”を利用してるみたいじゃないか、あんまりだ。言うだけ言ってギルド長は「よろしくねん」と言い残してどこかへ消えてしまった。


 私はお茶と一緒に部屋に取り残され、しばし考え込む。スキルが扱いきれないからと会うのすら拒んだ相手と、次に会うのが依頼って何だかなあ……。


『お前の仕事場の長とやらは、随分と下の者を酷使するのだな。お前は実は下僕だったのか?』


「私はれっきとした正社員だよ!」


 ベルジュがジトっと見てくるが、確かに部署のトップではないのなら下っ端と言わなくもないかも知れない。分かりたくなかったな、そんな現実。


 今日の仕事は鑑定室なので、ひたすらに意識を飛ばしつつも機械的に解析をする。虚無りながらも仕事をこなしていると、気が付けば終業時間だった。



 更衣室で私服に着替えて職員用出入口から出ると、イクリスさんが待っていた。


「あれ、イクリスさん?」


「こんばんは、セルフィさん。スキルが安定したから、いつでも良いってメッセージを貰ったから晩御飯でも一緒にどうかなって」


「大丈夫ですよ、行きましょうか。どこか行きたい所とか有りますか?」


「気軽にご飯食べられる所に行こうか。セルフィさんは、あまりお酒飲まないもんね」


「ははは……」


 前にカクテル一杯でべろべろになってしまったので、今回は醜態を晒さないように気を付けよう。イクリスさんに連れて来てもらったのは”朝焼けの輪舞(ロンド)”と言う静かな酒場だった。


「心配しなくても、ご飯だけを食べに来る人も多いから安心してね」


《朝焼けの輪舞》のドアを潜ると、高級店とアリスさんと一緒に行く《夜霧のワルツ》との中間のような店だった。

 普通に座ろうと思ったら、イクリスさんが椅子を引いて座らせてくれてしまった。そういう高級店では無いので、私達は滅茶苦茶浮いていた。


 店員がメニューを聞きに来たので、とりあえずサラダと飲み物の他にラザニアとピラフを頼んでシェアする事にした。


 雑談から入り、昨日と今日の事を話題に出す。


「そんな事が有ったんだ、セルフィさんに何も無くてなによりだよ」


 きゅん!

 などと言っている場合では無い。


「ギルドの方から依頼を頼みたいけれど、私からも声を掛けてほしいと言われて……立場を乱用してますよね、ひどいものです」


「頼られるのは嬉しいし、今は新しい依頼を受けているわけでは無いし。一応、皆に召集掛けて聞いてみるね」


「有難うございます」


 その後には、希釈された甘い雑談して過ごし、家まで送って行ってもらった。




 「と言う訳で、”氷雪会議”を開きたいんだが」


 イクリスさんの開会の言葉に、ガイアスさん以外がしらーっとしている。例によって何故か私も出席していた。これ、本当に謎なんだよね。


「可愛い子をゲットした男は違うわねぇ、余裕が有って」


「セルフィさん、イクリスさんで大丈夫ですか?」


 サーリャさんは髪を指にくるくると巻いて弄び、セイカさんも前のめりに言ってくる。


「二人共、そこまでにしておけ」


 ガイアスさんが片手を軽く上げて、2人を制す。

 ブーイングが起きてはいるが、2人とも冗談で、ただの悪ふざけらしい。


「場所はイストン通りを中心に7件。よくも市民に隠せたものだな」


 イクリスさんが感心しながら、頷く。一般市民は首に二個の穴が開いてる、イコール、ヴァンパイアが繋がるかどうか。私も知っているのは、ギルドで見た図鑑だけだ。そうやって考え込んでいる私をフォーローするように皆に言う。


「皆、受けるだろう?」


「セルフィちゃんの依頼なら受けるわよ」


「決まりですね」


 それぞれが頷いている中、ベルジュはとうとう立体刺繍を完成させていた。図案は、とある絵画で、少し前に買った画集を見て参考にしたのだろう。そういう所だけは、本当に高スペックだ。鼻高々にサーリャさんとセイカさんに見せびらかせている。


 見せびらかすのは何とかならないかとは思うんだけど、元々承認要求が高いのかも知れない。遺跡の中で眠っていたし、その前は願望器を手に入れた人を破滅させるのがお仕事だったから、やっぱり物足りないのだろうか。


 そう考えると、平和に過ごしているだけ今の方が100億ポイントマシである。今度は私も少し褒めてやろう。……うざい雰囲気じゃない時にね。


「それじゃあ、しばらくは見回りって事で。今回はまだセルフィさんに頼める案件か分からないから、この事については後々話すね」


「はい」


 自分で望んでいるとは言え、こういう時に疎外感を感じるなぁ。自身が平穏を望んでいるから一緒に冒険に行くのは難しいんだけど。私は、担当案件になってホッとした事と、疎外感の二つの感情がごちゃまぜになり、複雑な気分だった。


 けれど、そんな事を言っていると、やはり、いつでも事件はあちらから来るのだ。

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