91 見えるんです
いつもお読みくださり、有難うございます。
明日もお昼に更新します。
次の日に出勤してみると、そこは地獄だった。
スキルが暴走して、わざわざ使わなくても、そこかしこの冒険者の情報が見えてしまうのだ。昨日より酷い……。昨日買い物に出た時は人込みさえ避ければ、こんな情報の海に埋もれる事はなかった。
武器・防具の耐久力、所持金、貯金額、利き腕、身長体重、冒険者ランクなどなど。プライバシーの侵害もここに極まれりだ。貯金額なんて、一番知られたくないやつである。我がスキルながら、失礼すぎる。以前と違って触れなくても見えるので、ただただ情報の暴力である。
「ベルジュ……」
私が情けない声を出すと、ベルジュは呆れたように肩(?)を竦めて、ため息を吐く。
『練習するしかあるまいな』
しかし、今現在見えているのが問題なのであって、今の私に窓口業務はツラい。しかも、持続時間も長くなったらしく、気持ちが休まらない。
自然と、窓口に来る人の目も見れなくなって視線が下を向いてきた。今日は依頼書に集中しよう。
「おう、嬢ちゃん、具合でも悪いのか?ずっと下向いてるけど」
顔を上げて声の主を確認した後、赤裸々な個人情報が見えてしまったので、慌てて顔を伏せる。
「あー……エインズさん、実はちょっと目が痛くてですね……」
そこには、馴染みの中堅冒険者、エインズさんが居た。
「おい、それなら今日は帰った方が良いんじゃないか?」
確かに、誰も彼もの情報を勝手に見る事が出来るのは、相手に失礼だよね。ギルド長に言って少しお休みをもらおうかな。
「そうですね、無理しないで上に聞いてみます」
「おぅ、休んどけ休んどけ。冒険者もギルド嬢も身体が資本だからな」
私は自分の窓口を締めると、横のアリスさんに断ってギルド長室に向かう。あやうくアリスさんのスリーサイズが見えてしまう所だった。ヤバイよ、このスキル!!
「ーーーーーと言う訳で、スキルが安定するまでお休みいただきたいのですが……」
「アラ、それは大変ねぇ。スキルが強くなるのは、ギルドにとって良い事だけれど……流石にそこまで見えるのはプライバシーの侵害ね」
今この瞬間も、私はギルド長から目を逸らしながら話している。いらん情報が入ってくるからだ。
「じゃあ、暫くお休みでいいわヨ。ギルド内には適当に言っておくわ」
「有難うございます」
私は更衣室で制服をささっと着替えると、冒険者ギルドを出る。しばらく人手の居る所へ出ない方がいいので、食料も買い足しておこう。
そうして、下を向いたまま馴染みの店の店員さんをやりすごし、買い物袋を抱えて帰る。今日はマジックバッグを持っていないので、普通に重たい。家まであと50mという所で角から歩いてきた人にぶつかる。
「わ……」
「セルフィさん!?」
「ひぇっ……」
ぶつかった人は、まさかのイクリスさんで、今一番会いたくない人だった。鞄で視線が合わないようにガードする。イクリスさんは散らばった物を袋に戻してくれながら話しかけてくれる。
「どうしたの、セルフィさん、いつもは仕事してる時間だよね、具合でも悪い?」
「これには訳が有るんです。ちょっと問題が有りましてね……」
まるで、浮気をしているのがバレたかのような言い草が口をついた。
道端で会話をするのも何だという事で、少し歩いた場所の噴水まで行き、ベンチで目線を合わせないように、横を向いて座る。
「そっか、道理で……」
「私も好んで人の情報を見たい訳じゃないんですけど、まだ制御が出来なくて」
隣で考え込んでいる風のイクリスさんの雰囲気が漂ってくるが、いやな予感がする。
「じゃあ、俺で練習すれば良いんじゃないかな?」
「!!」
結婚とかするかどうかも分からない相手の、月収とか知りたくないよ!!
「すみません、まだ覚悟が無いので、また後日!」
私はベンチがガゴンと音が立つほど勢いよく立ち、家へダッシュで帰る。
危なかった……。
『お前、根性が無いな』
ベルジュが投げやりに話かけてくるが、根性論の問題じゃない。
「ベルジュも言ったじゃない、人間じゃないものを鑑定して慣れろって」
今すぐ走れ、急げ私!!
家に着いてドアを勢いよく閉めると、目を揉む。スキルを常時使っているようなものなので、目が疲れる。でも、以前は10分がスキルの持続時間だったが、まだ見える。見えたり見えなかったりだ。
これを使いこなせば、探索などで随分楽だろうが……いや、私の仕事は鑑定だ。最近、毒されている。それもこれも、私の立場が弱いからだ。
もう、”支配の王笏”で国を乗っ取っちゃう?そうしたら仕事しなくてよくない?そんなやけくそな考えを持ちながらソファにうつ伏せに寝転びながら、益体も無い考えばっかりが浮かぶ。
因みに”支配の王笏”は呪われアイテムなので、国に返しても返しても、きちんと部屋の机に戻っている。勘弁して。しかし、ベルジュと違って〇m問題は無いのでそれだけは安心である。多分、所有者の名義が私になっているとかじゃないかな。……迷惑な事には変わらないけど。
この時はまだ、ベルジュの鬼特訓を受けるとは思わなかった。案外スパルタなのである。
マジックバッグで「時間経過が無いなら温かい料理をあらかじめ入れておけばいいのでは?」といった疑問を頂いたのですが「物が腐らない冷蔵庫的な物」と思っていただければ。(魔法瓶的な物に入れれば、温かい物も持ち込めます)
あと、挿絵って有った方が良いのか、想像力の邪魔になるからいらん!とか有りますか。
以前セイカとセルフィのキャライメージは載せたりしたのですが、今まで自分が外に向けて文章書いてこなかったので、他の人がどう思うかが分からないんですよね。
だからアカウント持ってないと、書き込めないと(定期)




