88 ドキドキ登城イベント
明日は昼投稿です
誤字脱字報告有難うございます。恥ずか死しそう。三回見直して投稿してても間違うとかね(゜Д゜;)
日付は変わり、レッサー・ドラゴンの討伐報酬を貰いにギルドに行く日だ。
今日は念入りに身なりを整えた。
かと言って私は私に変わりないのだが、こういうのは気分だ。
でも、右の髪の毛の寝癖が直らないので、四苦八苦してブラシで直す。そうしているとキリが無いし、登城時間に間に合わなくなるので、見切りをつけて家を出る。
今日はお城で報酬を貰うので、緊張MAXだ。陛下に謁見する訳ではないけれど、庶民で騎士隊長に直接報酬を貰うなんて中々無い。城勤めは、貴族が多いからね。要するに私は肩身が狭いのだ。
公の場に出てもおかしくない、一番上等なスーツを着る。ギルドの制服は或る程度、慎ましさの中に華やかさを加えているので、こういう時には向かない。
制服ってオールラウンドな物だと思ったんだけど、可愛さの弊害か。
一人で登城するのは怖いので、城門前で”氷雪”と合流する。イクリスさんと視線を合わせる事が出来ないが、セイカさんやサーリャさんに挟まれて廊下を歩く。
豪奢な赤い絨毯が敷かれた長い廊下を、壁にかかった絵画を見ながら歩く。何度も国からの指名依頼を受けている”氷雪”は迷いなく足を進めていて、特に緊張している様子も無い。私は緊張しすぎて、酸欠になって冷や汗が出て来た。
「セルフィさん、大丈夫ですか、”鎮静”魔法かけましょうか?」
私がガチガチになっているのに気付いたセイカさんが、横から話しかけてくる。
「は、はい、お願いします」
私が魔法をかけてもらっていると、肩に乗ったベルジュが『キヒッ』と嗤う。
『たかが金を受け取るだけで、何を緊張しているのだ?胆力の無いやつだ』
私が小心者なのは認めるが、その発言はいただけない。
「わざわざ登城したんだから、いい加減ベルジュを置いていこうかなぁ。もう、下界も充分見ただろうし……」
『ウムム、まあ、普段いかない所へ行くのは緊張するかも知れんな』
ベルジュの耳が、へにょっと力無く垂れる。人の間で生活するうちに、どんどん動作が普通の生き物に近づいている。興味深いものだ。
そうして、小声でワイワイやっていると、来るように通達された部屋の前に到着する。イクリスさんはノックを4回すると、中から入るように言われる。
「失礼します」
私は”氷雪”に紛れて、そそくさと部屋に入る。
ここは騎士隊長の執務室のようで、執務机と大きな応接用のテーブルとソファが有る。座るように促されると、ジャストタイミングで紅茶が運ばれて来た。流石は城の侍女である。
騎士隊長がソファに座り部下に報酬を持ってくるように伝えると、スムーズに金貨袋が運ばれてくる。袋がすごく大きい。これは本当に、庶民の家が買えてしまうのでは。
私がドキドキしていると、騎士隊長さんのバリトンボイスが響く。
「この度は、大変な働きだったと部下から聞いた。流石Aランクパーティーの”氷雪の鷹”だな」
そこまで言うと、何故か私を見ると、トンデモ発言をする。
「君は今回の討伐で、獅子奮迅の働きをしたとか。”支配の王笏”も君にしか使えないと聞いた。城の所属になる気は無いかな?考古学科も鑑定科も元々出入りしていると聞いた」
「!!」
城に召し抱えられるなんて、普通は光栄であるし、飛びつくようなお話である。しかし、城に就職すると庶民なんて見下されるし、私の快適スローライフとはかけ離れてしまう。
確かに安定で安全だけれども!私の欲しい要素としての「平凡」が足りていない。
「大変、有難いお話ですが……」
私が断りにくく、もにょもにょと言っていると、イクリスさんが助け舟を出してくれた。
「彼女は冒険者ギルドで冒険者のフォローだけでなく、危険指定の討伐対象の弱点の”解析”もしてくれています。城にあがると、冒険者ギルドが成り立たなくなる可能性もあるので、難しいかと」
「ふむ……」
騎士隊長は、腕を組み、整えられたあごヒゲを触りながら考え込んでいる。
「では、今回のような時に助力を頼むかもしれん。それなら良いだろうか」
良くないです!!とか言いたいけど、もちろんこの場でその様な口をきける訳は無く。
「は、はい、私の力が必要な時ならば」
頼むから、必要にならないでくれ。
私の力が必要な時は、大体は危険な時なのだ。
「では、そのように。それでは報酬を受け取ってくれ」
”氷雪”の方はまとめて袋一個で渡し、私には個人の袋で渡される。手に持つとズッシリと重く、ギルドで働いている私には金貨袋の重さで大体の金額が分かるので、その金額で口から魂が漏れるかと思った。
私はソロソロとマジッグバッグに入れ、ようやく安心する。大金を貰うのも大変なものだ。
「用件はそれだけだ。今回は本当によくやってくれた。感謝する」
こうして私のドキドキ☆お城訪問は終わり、門を出てから、ようやく息を吐けた。
ノック三回=入室の合図
ノック四回=正式な場
らしいですよ。
4回は外資系だと結構使うらしいですね。




