86 戻ろう戻ろう帰り道 Side:イクリス
昼にも更新しておりますので、宜しければ一話戻ってお読みください。
明日はからは、まごう事無きお昼更新です。
「セルフィさん!」
レッサー・ドラゴンを倒すやいなや、腰のフックを外し、すぐにセルフィさんの元へ走る。座っている彼女の目をセイカが魔法で温めているようだった。
「あ、終わったんですね、お疲れ様です」
セイカの手の平の下から、セルフィさんが覗き見る。まだ瞬きの回数が多く、視力が完全に戻った話ではなさそうだが、セイカが見てくれていたのなら大丈夫だろう。
胸が一瞬チクチクはしたが。
「大丈夫?鑑識スキルで目も酷使したし、王笏の行使時間も長かったけど体に負担は?」
「目の方はいつもの事なので、大丈夫です。王笏は……いつもと違う疲れが有るので、これが魔力が減ってるって事なんですかね?初めてなので、良く分かりませんけど……」
へにょっと、頼りない笑みを浮かべるが、汗で前髪が肌に貼りついており、相当疲労している事が伺えた。
『今のそいつの内包魔力は、かなり減っておるぞ。この場は他の者に任せて、さっさとテントに連れていけ』
俺はそれを聞くと、セルフィさんを抱きかかえた。
「ひゃっ、ちょっ!自分で歩けます!!」
『誰が触って良いと言った!!この卑猥な奴が!!』
自分がテントに運べと言ったのに、ベルジュに肩に乗られ、ガンガンとシールドで肩の辺りを攻撃される。自分で連れて行けと言ったりやめろと言ったり。どちらにしろ、セルフィさんが疲労しているのに、キャンプ地までの徒歩ニ時間はきついだろう。魔法で回復するのにも限度がある。
セルフィさんは顔を赤くし、手で顔を完全に覆っているが、ベルジュは俺の頭の上に乗り、とすとすと地団太を踏んでいる。これをいつもセルフィさんの顔の横でやってるのか……それは確かに鬱陶しい。肩にベルジュが居る時にいつも嫌な顔をしていたのでどんなものかと思っていたが、これなら無理も無い。
セルフィさんが腕の中で完全に大人しくなってしまったので、そのまま勝手に運ばせてもらう事にした。
……耳元のベルジュと後ろを歩いているサーリャの呪詛を聞くのはしんどいが、気付かないふりをさせてもらう。レッサー・ドラゴンを倒したのだからこれくらいの役得はいいだろう。
彼女が本気で嫌がるのなら、もちろんこんな事はしないが、今の所はそのような様子はない。耳まで赤くして完全沈黙している。
最終キャンプ地の公園に着くと、じたばたとセルフィさんが暴れるのでそっと降ろす。
「有難いけど、恥ずかしすぎます……すごく人が沢山居たんですよ」
「大丈夫、みんなドラゴンに集中していて俺達に気付いてなかったよ。現場はガイアスを置いてきたし」
「えっ!?任せてきちゃったんですか」
「状況説明とか、同じ場所に居たし、あいつの方が多分説明上手だしね」
置いてきたと言うか、セルフィさんを連れて行くように言ってくれたのは、ガイアスだが。サーリャは不満げだが、セイカに宥められている。
『フン、ようやく手を離したか、不行跡な奴め』
「ベルジュ、抱っこじゃなければ、おぶさって帰って来るしかないぞ」
『それでは、余計密着するわ!』
「二人共やめてぇ……」
セルフィさんが、目の前の俺とベルジュの間の言い合いに恥ずかしさが天元突破したのか、その場で蹲って顔を覆ってしおれていた。
本人には悪いが、気になっている女の子の仕草にグッとこない男はいないだろう。
「まあまあ、ニ人とも……一人と一匹ですかね?とにかくやめてあげてください。セルフィさんが限界ですよ」
セイカを見てから、もう一度セルフィさんを見ると、フルフルとしていた。セイカが背中をトントンと叩き、深呼吸をさせている。
ごほん
セルフィさんが咳ばらいをして、立ち上がる。まだ顔は赤いが、表情を作れるくらいには復活したらしい。
「イクリスさん、有難うございました。それとベルジュは変な言い方やめて、心配して連れて来てくれたんだから」
下心がミリも無かったとは言えないので、一瞬ぎくりとした。
セルフィさんが「とにかく」と一回タメを作り、次の瞬間に満面の笑みを浮かべた。
「祝・レッサー・ドラゴン討伐ですよね!」
場がパッと華やいだかと思ったら、セルフィさんが、すぐにがくんと膝をつく。
「どうしたんだ!?」
俺が焦って支えに行くと、はは……と力ない笑みを浮かべる。
「やっぱり、結構疲れたみたいですね……ちょっと休み……」
それ以降は寝息が聞こえて来た。
「やっぱり疲れてたんですね。普段魔法使わない人が、魔力を行使してたんですから当然です。
サーリャさん、着いていてあげてくださいね、イクリスさんは、テントに運んであげて下さい」
何か有ったのかと思って驚いたが、疲れて寝落ちしただけの様だで、真底ほっとする。
「ほら、早く運んであげなさいよ」
サーリャが後ろからせっつく。最近サーリャから俺へのあたりが酷い。
テントでそっと寝袋の上に寝かせると、肩からマントを外してセルフィさんに掛けた。早く目を開けてくれないだろうか。
頬を指の背でそっと撫でたら、サーリャから冷気を感じたので、慌ててテントから出る。
早く街に帰りたい。そうしたら……
気が向きましたら、★やブクマなどしていただけたらと思います。
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