81 パーティーの後は探索へ
明日はお昼更新です
3日経って、例の”氷雪会議”の会場入りの日である。私は前日から仕込んでいたミルクゼリー(果物マシマシ)のタッパーを4つ携えて店に行った。
会議室には既に”氷雪”が揃っており、笑顔で出迎えてくれた。しかし、冒険者が特別に借りてる部屋に、鑑定士の私が入っているのは異物感がぬぐえない。
みんなはそうは思っていないみたいだけど。
しかし、テーブルの上を見ると、またもや食事やお菓子が溢れており、もはや、ただのパーティーになっている。
「あ、セルフィさん、そのタッパー何ですか?」
「牛乳が余ってたので買い足して、果物を入れたミルクゼリー作ってきました」
「うわー、美味しそうですね、楽しみです!」
セイカさんと私がキャッキャしていると、イクセルさんの咳払いがかかる。
「ちゃんと会議もしような」
ピタッ
私とセイカさんの動きが止まると、ガイアスさんが目の前に王都で有名なお店のガレットを置く。
「この調子では、会議は或る程度は食べてからでないと進まないだろうな」
その通りである。
「じゃあ、食べながらでいいから進めよう」
全員頷くか、既にイクリスさん以外の口には、物が詰まっている。
「昨日、国から通達が有った。騎士の先導で遺跡の街中まで行くそうだ。しかし、セルフィさんじゃないとドアは開かないから、その間は先頭にいかなければいけないと言われた」
騎士の数は50。それと、冒険者パーティーは”氷雪の鷹”と”放浪の風”で行くそうだ。
「正直、騎士の力は未知数。この国の騎士は対人戦を想定して訓練してるからね。セルフィさんとベルジュで足止めしている間に弱点を総攻撃かな」
「レッサー・ドラゴンの弱点って、首の逆鱗よね。龍種は全部そうだけど」
サーリャさんが果実水を揺らしながらグラスを見ている。……いや、果実水では無い。えっ、アルコール臭がするんだけど!?呑んでるじゃないですか。
「大きさは20Mほど。これでもレッサー・ドラゴンでは小さい方だ。城で会議したんだが、側面からセルフィさんとベルジュ、その前を俺達、逆の側面が騎士、”放浪”が正面だ。”放浪”のアルファがナイトだから、ヘイト取ってくれないとね」
大きな敵の実践なんてした事が無いから、想像するだに、知らずに汗が出て手が震える。今までの敵ですら怖かったのに、その大きさが数倍にもなるのだ。
手の震えに気付いたのか、イクリスさんが後ろ手にそっと手を重ねてくる。それだけで少し落ち着いた。
「”鎮静”の魔法も有りますから、以前より少しは動きやすいと思いますよ」
セイカさんが優しく微笑んでくれる。周りを見ても、全員が信頼できる人達だ。
「はい、皆さんの役に立てるように頑張りますね」
私が決意を新たにしたところで、やっぱりベルジュが水を差しに来た。
『そうは言っても、今回はワシとセルフィ頼みなのだから、五体投地で崇めると良いぞ』
私を巻き込まないでくれるか。私はお菓子の敷紙で紙風船を作り、そこにベルジュを閉じ込めた。『何をする!』と叫んでいるのだが、風船が辺りをぐるぐる回るだけだった。キャタピラに似ていて、そのコミカルな動きに溜飲を下げる。
「それにしても、どうやって穴からレッサー・ドラゴンを誘い出すんですか?」
私がふと思いついてイクリスさんに聞いてみる。相手の巣穴で戦っても不利だし、それでは、こちらも先ほど言った立ち位置での立ち回りが出来ないだろう。
「そこは議会でも色々な案が出たんだけど……何か軽く攻撃をする事になって、城の魔法騎士が数人で魔法攻撃をすることになった。魔法が効いてくれればいいんだけどね」
『レッサー・ドラゴンに魔法は殆ど効かぬぞ』
「えっ」
紙風船をバリバリと破ってベルジュが現れる。
『やつは下位とは言え、龍種だけ有って魔法抵抗力は高い。気を引ければ良いが、蚊に刺されたほども感じなければ、巣穴から出て来んだろうよ』
前に読んでいた、ことわざ辞典が活用されている。呪物から「蚊に刺されたほども感じない」とか出てくるとか言うのは、ベルジュくらいだろう。うちの呪物すごいぞ。
「じゃあ、魔法以外にも方法を準備しておかないとダメって言う訳か。何がいいかな」
イクリスさんは考え込んでいる。
私は、セイカさんが持ってきたドーナツを眺め、その原料について考える。
「粉塵爆弾でも出来たらいいんですけど、遠すぎますよねぇ」
ドーナツの穴から外を覗いてみてから、もぎゅっとかぶりつく。
「それだ!」
ん?
「小麦粉を風魔法で巣穴に舞わせて炎魔法を打ちあげるんだ。炎魔法は遠隔で発動しないと、こちらまで被害が来るけど……サーリャなら出来るな?」
イクリスさんが、サーリャさんを見て言う。
「余裕よぉ。そんな事も出来なかったら、”氷雪”に居られないって」
「セルフィさん、こう見えてもサーリャさんの魔法コントロールは緻密ですから。安心して良いですよ」
「一言余計だわね」
「二日酔いだけは、やめてくださいよ!?」
何だかんだじゃれ合ってるサーリャさんとセイカさんを見て、何とかなるような気がしてきた。
「では、自分は今から知り合いの錬金術師に会って、粉塵爆弾の元を作ってくれるように頼んでくる」
ガイアスさんはそう言うと席を立った……ミルクゼリーのタッパーを一つ抱えて。一人一つ準備したとはいえ、皆の私への料理への期待値が高すぎて怖い。
さて、明日は討伐任務の始まりだ。
どうなることやら。
ありがとうございました。
66話の花咲乱れる喫茶店の「アガンパス」という花の写真を66話に貼っておきました。
写真無いとイメージ沸かないですよね。あまりメジャーな花ではないのかも?私の近所の公園にはめっちゃ咲いているのですが。




