77 支配を練習してみよう
明日も、お昼です。
すみません、75を投稿し忘れておりました汗
少し巻き戻ってお読みください。
今日は、冒険者ギルドの模擬戦が出来る部屋に集合である。
ここは冒険者同士が鍛錬したり、試験したりする場所で、壁や天井はあらゆる衝撃に耐えられる(例外有)想定で作られている。
私の方はベルジュの鉄壁の守りが有るし、”氷雪”も手加減は出来るであろうと、”支配の王笏”+ベルジュvs”氷雪”である。
ベルジュ曰く、私の内包魔力はかなり有るそうなのだが、体外には一切出ていないらしい。今回は、それを王笏に生かす練習なのだ。
ちなみに、王笏は今現在の所は私しか使えないし、レッサー・ドラゴン使えるという事で私が預かっている。ベルジュを肩に、王笏を手に……しまらない事この上ない。
『さて……腕が鳴るな』
ベルジュが腕まくりをするようなしぐさをする。君、まくる袖無いけどね。
「ベルジュが本気でやると相手が呪われるからやめて、私の防御だけに徹して」
私がそう注意すると、明らかに不満げに耳が揺れた。耳がびしばし私の顔に当たって、痛くて鬱陶しい。
君が本気で挑んだら、元が呪いのアーティファクトなんだから、練習にもならずに相手が呪われるでしょうが。スペックだけはいいので、もう少し考えて欲しい。
一瞬どろどろした気配が肩から漂ったが、私が叱った途端にそれが霧散した。こ、こいつ本当に呪いをかけるつもりだったな?
「じゃあ、僕が精神防御の魔法を使うので、その上からセルフィさんが”支配の王笏”を使ってみてください」
セイカさんはそう言うが、呪われた武器である。セイカさんの力と”氷雪”の事は信用しているが、私の力は未知数だ。
だからこその練習なんだが。
「レジスト・ドミネーション!はい、セルフィさん、どうぞ」
セイカさんに促されて、”支配の王笏”を高く掲げる。王笏の先端から糸のような黒い光が出る。”氷雪”の皆にも効いた様子はない。
『バカ者、もっと本気で出力を上げろ!』
「いったいな、えいっ!」
自分の邪魔をされたベルジュが、耳で私をしばいた。
しばかれてイラッとした私は力んで”支配の王笏”を握った。そうすると太めの黒い荊が出てが出て、”氷雪”に躙り寄る。彼らが一瞬動きを止めると、セイカさんが呪文を唱える。
「”覚醒”」
セイカさんの呪文に、みんなの体がビクッと震え、再び動き出す。彼はクレリックで精神防御力が高かったので付け焼刃の私の王笏が効かなかったのだろう。
それでもAランクパーティーの動きが一時的とは言え止まったのなら、一般人相手ならどうなるのだろう。私はその様子を想像して、しばし愉悦に浸った。
「すごいな、セイカの精神防御の魔法を掛けても一瞬何が起きたか分からなかった」
イクリスさんが感心しきりに言う。
「それで練習中なら、実戦経験を積めばかなりレッサー・ドラゴン戦で期待できますね」
”氷雪”はそう相談しているが、私としては複雑である。それは或る程度は敵に近寄れと言う事だ。
ああ、この王笏捨てちゃダメかな。私がうらぶれているとサーリャさんがやってきて、私の頭をなでなでしながら言う。
「セルフィちゃんは、よくやってるわ。最前線は”氷雪”と”放浪”に任せて、なるべく距離を空けるように頑張るわ」
サーリャさぁん……おっと、涙が。
『どちらにしろ呪いの力が貯まり切っておらんから、もう一件か二件、その手の仕事をする必要があるぞ』
忘れてた。この間も霊と言うか幽霊事案だったが、次もそうなんだろう。つくづく呪いに縁が有るな、私。どうしてこうなった。
「そうだと思って、依頼の目星をつけておいた」
イクリスさんが依頼書と思われる紙を一枚ピラリと出す。
「相続されて持ち主が変わるたびに、家族が謎の死を遂げるドミュ・バリュールを調べてほしい。」
ドミ・パリュールと言うのは、3~4種類の揃いのモチーフで出来たパリュールと違って、2種類以下で構成されたアクセサリのセットだ。
「これって呪いに見せかけた、一族で粛清を行っているとかじゃなくてですか?」
暗に疑わしいと私が言うと、ガイアスさんが首を振る。
「これは自分の知り合いから持ち込まれた依頼なのだ。受け継いだ当主が亡くなるので、傍系などに相続をさせたりすると、やはり受け継いだ人が亡くなるらしい。子供を残せるかが一族の中でも問題になっている。捨てても戻って来てどうしようも無いとの事だ」
あ、直系じゃなくてもダメなんだ。それは確かに何か有る。
「神殿ではダメなんですか?」
「神殿でやると多分壊れてしまいますね。浄化すると形が崩れ去るでしょうから」
私とセイカさんが話をしていると、ベルジュは内容に反して、あっけらかんと答える。
『フム……そういうものは大抵は先祖が何かしらをしたようなものが多いぞ。宝石にはニンゲンの感情は残りやすい。武器や防具などより一般の者も手にするから、そう言った物も多いぞ」
ガイアスさんの知り合いから受けた依頼じゃ断る選択肢は無いだろうし、受けるしか無いだろう。
「まあ、依頼は依頼として、セルフィさん、もう少し練習してみようか」
あ、忘れててくれなかったんですね。
こうして、私は日が暮れるまで”支配の王笏”の訓練をさせられた。
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