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解析スキル「アナライズ」でチートだけど、私は鑑定士なので受付嬢と冒険者はお断りです!~呪いの兎型アーティファクトを添えて~  作者: 夢咲みやと
合同探索・遺跡ダンジョン

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74 草木も眠る丑三つ時には霊と話そう

誤字脱字報告有難うございます。

明日もお昼更新です。

 草木も眠る丑三つ時。

 場所は、寂寥感(せきりょうかん)漂うリュール神殿。


 何もこんなに遅い時間じゃなくて良いんじゃないだろうかと思う。私は本来、朝方な人間なのに、それをこんな夜中に出てくるなど正直やめたいが、そうもいかない。


 季節は秋、鑑識科から表舞台に引っ張り出されてから季節が二つ過ぎた。秋の冷たい空気でブルッとしていると、セイカさんに上着を掛けられる。


「あ、ありがとうございます」


「僕は大丈夫ですから、一枚羽織ってて下さいね」


 何だか、最近セイカさんには妹みたいにお世話されているな。今まではサーリャさんにいじられてたけど、元々は世話焼きなんだろう。


「そもそも、ただの廃村ですし神殿が廃れちゃうのも仕方ないのでは?」


本来真っ暗である筈の村の入り口は、セイカさんとサーリャさんの魔法の灯りで、昼のように明るい。これでは幽霊が出ようとしても出現出来ないのではないだろうか。


 私の顔を見て何かを察したのか、イクリスさんが少し灯りを落とすように二人に言う。明るすぎたら幽霊も見えないからね……。彼らはぼんやりとした人影なので、個体識別は難しいのだ。


 光を少し押さえたら、まあ、いるわいるわ……見渡す限り、霊、霊、霊である。


  噂の朽ちた神殿方向へ行ってみると、近づくにつれて更に霊が多くなっていく。さながら街路樹のように道の両側にたたずんでいる。


「普通に廃村ですけど、これって誰が依頼出したんですか?」


 幽霊が出るなら昼間通ればいいだけだし、誰かが依頼する意味が分からない。


「それが、かつてここに住んでいた人の依頼で、村人に安息をもたらして欲しいらしいんだ」


 イクリスさんはそう言うけど、これはやっぱり浄化して終わり案件では無いだろうか。それに対し、セイカさんは首を横に振る。


「一人二人のレイスならともかく、村が丸ごととなると、何かしら原因が有ります。これは単純に全体を除霊して終わり、では無いと思います」


 ”何かしら”も有って欲しくないんだけどな、こっちは。でも、呪いの力がベルジュに集まらないといけないので、世の中はままならない。私は宇宙へ心を飛ばし、しばし虚無になる。




神殿へあと少しと言う所で、人型を保った女性の霊が1人ベンチに座っていた。こちらが驚いて立ち止まると、女性も驚いて顔を上げる。


「あ……私の事が見えるんですか?あなた達のような方を待っていました」


そこには、ひざ下の、暗めのオレンジのワンピースに白いエプロンの素朴な格好をした女性が居た。茶色の髪の毛をサイドテールにして肩に流している。純朴そうな薄い青色の瞳がゆらゆらと悲し気に揺れていた。


 しかし、女性の足元には影が存在していない。これが意味する事とは、まあ、そう言う事だ。申し訳ないながらも、私はイクリスさんの影に隠れた。

 

 女性は寂しそうな笑顔で立ち上がる。


「待っていたんです。私の姿を見ても、すぐに浄化しない人を。宜しければ、話を聞いて下さいませんか」


 全員が頷くと、女性は一軒の家に私達を案内する。


「この家は比較的家の中が奇麗なので、ここにしましょう」


 村の中は荒れ、まともな形を保った家は少なかった。その中で天井が有る家に案内される。私達は顔を見合わせながらもテーブルの席に着く。女性は台所にお茶を淹れに行ったようだが「あ、もう出来ないんだった」と呟いて戻って来た。


「あなた達は、この異変を調べに来た冒険者と言う事で合ってますか?」


「ああ、そうだ」


 女性の問いにイクセルさんが首肯する。その後にすぐに疑問を投げかける。


「先ほど【私をすぐに浄化しない人】を待っていた、と言っていましたけど、どういう事ですか?」


「それは、私の話す事を聞いてもらえないと根本的な解決にならないからです」


 女性は訥々と話す。


「元凶は、この村の神殿の見習い神官なのです。この神殿が祭っていた”浄化の指輪”を悪用したのです」


「それだけを聞くと、祭っていたものの名称だけだと悪用しようにも出来ないように聞こえるが?」


 ガイアスさんの言う通りだ。浄化をしたからと言って、それ以上に人に何かが起こるとも思えない。


「見習い神官は、”反転の鏡”と言う物を使いました。その為に不浄をもたらしたのです。それは瞬く間に疫病となって村を覆いました」


「あなたは随分詳しいんだね、まるで自分が当事者のようだ」


 イクリスさんの言葉に全員が頷く。


「それは……」


 彼女は一瞬言い淀む。


「かつて、彼は私の恋人でした。ここの神殿長は問題のある人で、権力欲と財の築く事しか考えていない人でした。その聖遺物を他国の商人に売ろうとしたのです。この村は重税にあえいでいて、神殿に苦しめられていました。

 彼は神殿長さえ何とかすれば良いと思ったのでしょうけど……疫病は広がり続けたのです。その頃には”反転の鏡”に毒されて、”浄化の指輪”でもどうにもなりませんでした」


『その”反転の鏡”とやらは、どこで手に入れたのだ?』


「それが、分からないんです。いつの間にか手に入れて『これで、もう心配いらないから』と私に見せてきました」


『フン、どちらにしろお前の恋人とやらは、神殿長を元々始末する筈だったのではないか?』


「!!」


「ベルジュ!!」


 私が大きな制止の声を出しても、遅かった。


「そうですよね……いくら神殿長が悪い事をしていたと言っても……」

 

 彼女の透明な涙が、ほろほろと落ちては宙に消えていく。

 しばらく彼女が落ち着くのを待っていると、ようやく彼女は泣き止んだ。


「彼は神殿に居ます。”浄化の指輪”を反転したことで死人の魂を吸い続けています。ここの村を吸収し終わったら、更に他の村や町に行くでしょう」


『そやつは、既に正気を失っておるな。しかし、目的はすり替わっておるだろうな』


「どう言う事?」


『魂を吸い取る事自体が目的になっておる。ここに居る幽霊も、魂を吸い取られれば、輪廻転生の輪に乗る事も出来ずに飲み込まれていく』


 私とベルジュの話を聞いていたサーリャさんは、髪の毛を指に巻き付けてくるくるしながら呟く。


「じゃあ、取り敢えずはその”反転の鏡”をぶっ壊せばいいのかしら?」


 過激派でいらっしゃる。しかし、現状それしか手は無いと思う。


「それじゃあ、神殿に行ってみようか。君、案内をお願いできる?」


「はい、どうぞこちらへ」


 彼女は頼りげない輪郭を揺らしながら、神殿への道を歩き出した。


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