73 ”氷雪”秋のポイント集め
明日はお昼更新です
さて、呪いを集めるような機会をどこで得るかと言うと、やはりギルドの依頼ボードだろう。正直、私には依頼の良し悪しは分からないので、”氷雪”にお任せだ。
”流浪”にも誘われたのだが、私の働きや動きなどを考慮して、フォロー出来るのは”氷雪”なので、遠慮申し上げた。彼らと行動を共にする意味が無いと思う。
私は依頼ボードを見ていても仕方無いので、その間する事が無く、フラフラしている事が許された。これはこれで退屈な物だ。何だかんだ言って最近はずっとフィールドワークだったので、落ち着かないと言うか。いやだいやだ、ワーカーホリックの様だ。
「何もやらない」をやろう。
とはよく言った物である。
この空き時間には、お日様に当たって光合成するに限る。人間は朝日を浴びる事で、体内時計がリセットされるのだ。地下の日の届かない場所に潜るなど、正気の沙汰では無い。早く依頼を終わらせたい。
せっかくなので、空き時間を利用して本屋に行く事にする。
私はベルジュと本を選ぶと、レジに持っていった。私が探していたのはファッション雑誌なのだが、ベルジュは何故か刺繍の本だ。また折り紙の本かと思ったのに、ここに来て趣味が変わるとか。
結局は手芸店で刺繍の道具を買わされた。着々と趣味を広げているが、ベルジュ用のコンテナBOXがいっぱいになってきているので、そろそろ断捨離させねば。折り紙は飽きたらしいし。あれだけメタリック折り紙欲しがってたのになぁ……飽きるのが早い。
噴水の所のベンチで刺繍の本をベルジュに見せていると、後ろから聞き覚えのある声がかかった。
「セルフィ嬢か。今から依頼の打ち合わせをするのだが、一緒に来れるだろうか」
声の主は、ガイアスさんだった。手には王都で三時間並ばなければ買えない、有名菓子店の包み紙を持っている。これ、本人が並んでいるのかな。それとも実家の使用人なのだろうか。中味が気になるので、今すぐに氷雪会議会場に行きたい。
「丁度いい依頼を、もう見つけたんですか?」
「見つけはしたが、セルフィ嬢の意見を聞こうと思って、集まるところだったのだ」
「あれ、探させちゃいましたかね」
「いいや、皆で菓子やら飲み物を持ち寄るので、その辺を回ってるぞ。見当たらなければサーリャが自宅かギルドを探しに行っていただろう。今日無理をせずとも、こちらである程度精査する事は出来るしな」
あらら、どうやらお手間をお掛けしたようだ。
「丁度良い、自分と一緒に来てくれるか」
「はい」
荷物を持ってくれるというガイアスさんに丁重に断りを入れて、そのままいつもの防音室に向かう。刺繍の本を持たせておかないと、自分のだとうるさいからね。幼児かな?
ガイアスさんに扉を開けてもらって中に入ると、既にイクリスさんとセイカさんが居た。セイカさんにさっと椅子を引かれて座らせられてしまう。……何故か上座に。”氷雪”じゃなければ、「にがさねーよ」と言われ、怪しい壺とか買わされそうな配置である。
”氷雪”の場合は純粋な厚意なんだけど。
「ただいまー、セルフィちゃんが見つからなーーーーーあら、来てくれてるわ」
サーリャさんがドアを派手な音をさせて入って来た。手には、何故か大量のサンドイッチを持っている。他に炭酸水やサラダなどの持ち寄りで、テーブルのサイドテーブルの上は、ちょっとしたパーティーだ。私は急な参加なので、手ぶらだ。肩身が狭い。
座った私の前にコップが置かれ、炭酸水が注がれる。
「セルフィさん、炭酸水平気ですよね?」
ニコリとセイカさんが微笑む。せ、接待だ、接待されてる。イクリスさんは依頼書を纏めて後ろの机に置く。
「とりあえず、ご飯を食べてから依頼書を見ようか」
サイドテーブルの食べ物がテーブルに並べられ、サンドイッチ、有名菓子詰め合わせ、そしてサラダバー宜しくサラダが広げられる。
和やかに食事が続けられるが、私は未だにこの空間に慣れない。
腹八分になり、食後のお茶になった所でイクリスさんが依頼書を広げる。
「取り敢えず、コレなんかどうかと思うんだけど」
廃神殿に出る、神官のレイス?
『こんなもの、一発で成仏出来そうでは無いか?』
ベルジュがセイカさんを見ながら、依頼書にごろりとうつ伏せに 転がる。
「ちょっとベルジュ、見えないって」
首をつまんでサンドイッチに刺さっていたピックを何本も渡しておく。そうすると、何本ものピックを紙ナフキンに等間隔に刺しだした。なんだそれ。
「レイス関係だと、ただの幽霊退治になるかも知れませんけど行ってみます?」
私がそう言うと、皆が頷いてくれた。
しかし、私は幽霊が嫌いだと言うのに。呪いを集めないといけないのだが、こんな依頼で呪いが集まるのだろうか。
私はため息を吐きつつ、お茶を飲み干した。




