64 勧誘、お断りします
明日は昼に更新します。
「セルフィちゃん、顔色が悪いわよ」
「疲れてます?ヒールかけますか?」
地上に出て、いの一番にサーリャさんとセイカさんが言ってくれるが、もちろん大丈夫では無い。
「次も”放浪”と一緒なんですかね。ちょっと苦手だなー……なんて」
仕事で相手を選ぶのは良くない事だとは思うが、気持ち的にはどうしようもない。
「じゃあ、”氷雪”が自薦で行けばいいんだよ。こっちも暫く安定した収入になるし、セルフィさんも守れる」
”氷雪”とわいのわいの言ってると、ナユさんが横でくるっと背を向けて言う。
「あそこまでの道は分かったから、オレは次回からはいらないな。また報酬貰う時に会おうね、セルフィちゃん」
振り向きざまに投げキッスを投げてくるが、サーリャさんに叩き落とされている。
「次回も”氷雪”で頼んでみるよ」
おお、遺跡に引きずり込まれることが確定している今、”氷雪”が居る事で私の安心・安全は保障されたようなものである。今回はベルジュも役に立ってくれたけど、敵が複数要ると対処しにくいからね。
とりあえずはこの砂っぽい体を何とかしたい。サーリャさんに頼んで、タオルで顔と体を拭いていただけで、シャワーも浴びて無いのだ。出来るなら湯船にも浸かりたい。フィールドワーク後は大体寝落ちちゃうんだけど。
「街まで行ってから解散しようか。報奨金も数日後だろうし、ゆっくり休もう」
イクリスさんに全面的に賛成だ。
「あ」
あ?
「いや、何でも無い。行こうか」
何を言いかけたのだろうか。口を閉じられると、こちらもしつこく聞けない。必要なら、また後日話してくれるだろう。
そうして街まで戻り、各々家路を辿った。
私はシャワーに直行だ。
「うわーっ、砂っぽいよぉおぅ」
このパサパサを何とかしないと、ベッドにダイブも出来ない。ささっと髪と体を洗うと、ルームウェアに着替えて、髪をタオルドライする。
はぁぁ、手軽に料理も出来ない。私はあの固形食糧で我慢出来ないのでマジックバッグに食材を入れて料理しているだけなのだが、それは自分の為である。
言ってしまえば、自分だけ食べる訳に行かないから皆にも配っているのだ。人を無欲な善人だと思わないで欲しい。私だって人間なのだ。
「はぁ、今回も砂っぽかった。冒険者って汚れるね」
髪の毛を乾かしながら独りごちると、何故かベルジュが胸を張る。
『ふふん、ワシが居た所はもっと砂っぽかったぞ』
どういう自慢だろう。
「でも、今回それより古い遺跡が見つかった訳だけどね。古さでは今回の遺跡が勝ちじゃない?」
『くっ』
何に対抗しているのか、ベルジュは悔しそうに唸った。本当にあの遺跡は不思議だった。壁もつるつるしていて、まるで誰も住んでいなかったかのようだ。でも、古文書は沢山有ったので、全く人が住んでいなかった訳が無いのだ。
「それに、何で私にしか開けられなかったの?」
『それこそ血だとしか言えん。お前の先祖が何かしら関わっていたのだろうな』
5000年以上前の血縁なんて遡れないよ。それに、もしそうでもかなり血が薄まっているんじゃ?
私の疑問にベルジュが首肯する。
『先祖返りと言う訳だろうな。おそらくお前の父や母にも、ワシはおろか、あのプレートも反応せんと思うがな』
むむむむむ。
頭がパンクしそうだ。今日は帰りに出来合いのお惣菜を買っていたので、それを食べると、髪を乾かして夢も見ずに寝た。
3日ほど休暇を貰ってギルドに出勤すると、ギルド長が大慌てで飛んできた。
「ちょっとお、セルフィちゃん、来てるわよ!」
「え、何がですか?」
「応接室に”放浪の旅路”が勢揃いよ!」
嫌な予感は当たるものである。苦手だと思った人が来るなんて。ベルジュはやっぱり呪いの人形なのだ。不幸ばっかり連れてきおって。だからといって無視できるはずも無く、イヤイヤ応接室に行く。
ノック3回。
「何か御用でしょうか、報酬のお支払いは明日の筈ですが」
ドアの所で話す私に、パッと笑顔をよこす。
「もちろん、君を勧誘するためだよ」
な、なんだって!?
どっどどどっどうして。
パニックになっている私の後ろから、ギルド長が背中に庇ってくれる。
「セルフィちゃんは、うちのギルド員だから困るわ」
ギルド長ぉう、感激です。
「だから、給料ならお宅よりも数倍出すと言っているんだ」
「無理ね。セルフィちゃんは、城から鑑定依頼が来るほどの腕だから、国が離さないわよ」
えっ、そんな設定あったっけ?
「へぇ……じゃあ、引き抜きは無理なのか。じゃあ、せめてどこにも属さないで欲しいな」
何でそこまで言われるのか、謎なんですけど。
「”氷雪”とかね」
そこで私は呆然としてしまう。”氷雪”とは、何回か仕事もしてきた。一緒にご飯を食べた事も食べてもらった事もある。
「そんな事言われる筋合いはないです」
私には、そう答える事しか無かった。
「そう?まあ、言ってみただけだよ。気が変わったらいつでも言ってくれ」
アルファさんはそう言い残して、応接室から出て行った。




