59 行きつ戻りつ、足して引いて
試験的に18時更新、1話にしております。
何かありましたコメでお願いしますといいつつ、なろうアカウント無いと書き込めないんですよね。悩。
繰り返す事計四回。あとは中心に麒麟が居るか居ないかという話になる。頼むからドアだけ開いてて御終いにして欲しい。
念の為に中心部屋を覗いてみると、やっぱり居たよね。力を示せって書いてあったし。幻かと思って、目をこすったりしても、その姿が消える事は無い。古代人め、野暮な事をしおって。
麒麟とは、体が鹿、頭は狼、尾は牛、蹄は馬、頭に一本の角が生えていると言う、とんでも生物である。四聖獣もそうだが、吉兆の印を倒して良い物なのか。逆に呪われない?……主に私以外の人が。
ベルジュが鞄の紐を肩までよじ登ってからバカにしたように言う。
『あれは、お前達だけでは倒せぬぞ』
「そんなの戦ってみないと分からないだろ!」
”放浪”の魔術師は激高した。そりゃSランクパーティーが、ぬいぐるみにそんな事言われたら、プライドが傷つくよね。
わかるわかる。
『事実だぞ。この中に、ドラゴンスレイヤー程の腕が有るものもおらんだろ。アレは、それ以上の力が有る強さだ』
「ぐっ……」
”放浪の風”のアルファさんが歯を食いしめる。麒麟が強いと言うのは有名だが、SランクとBランクでも手に余ると言う事は、今は突っ込むことは無謀と言う事だ。再編成が必要という事である。
「ベルジュのワンパンは効かないの?」
私がそう言うと、ベルジュは周りを見回して嘲る。
『ワシが一人で戦ったところで、一階層が吹き飛ぶが良いのか?役立たずを庇いながらだと、障壁を張る、高位の魔法使いかクレリックが必要だぞ』
言・い・方 !!
「一回地上に戻った方がいいんじゃね?マッピングも済んでるんだから、次に来る時はもう少し楽でしょ」
ナユさんが、欠伸交じりで伸びをしながら言う。”放浪”のアルファさんが、それを受けて、深く息を吐いた。
「確かに、今の編成で飛び込むのは無謀だな。地上へ戻って、ランクAかランクBのパーティーを探そう」
遠目から見ると空間にふよふよ浮いているだけでシュールな絵面なのだが、戦闘になると、近接有・遠隔ありで攻撃がすさまじいらしい。そうなると、非戦闘員を庇いながら戦うのは骨が折れるし、戦闘員も増やしたいと言う所だろう。
取り敢えず満場一致でこの場は切り上げて、地上に帰るという事になって帰途についた。
ようやく帰ってきたところで、私は疲れすぎて、砂っぽい体と髪を辛うじて寝洗い、タオルドライをしている途中で寝落ちして、気付いたら次の日の昼過ぎだった。うわ、12時間以上寝てしまったぞ。
私は、タオルドライだけで寝てしまったせいで絡んだ髪の毛を梳いて、ヘアオイルを塗ってダメージをリペアする。サーリャさんと一緒じゃない時は自由に水を出してもらえないから、髪を洗う程の水も出してもらえない。いや、そんな事の為に一緒に居る訳じゃないんだけど。
ムムムと唸ると、私は出かける事にした。心当たりが無い事も無いからだ。ベルジュは当たり前のように肩に乗り、鼻歌気分で呪いの歌を歌っている。私には効かないとは言え、体の中がぞわぞわするのでやめて欲しい。
大通りに出てから歩く事10分。一本奥に入ると、閑静な住宅地エリアに入る。私のアパートが有るのは平民ゾーンだからね……素直に羨ましい。
そこで気を取り直してチャイムを鳴らす。
カランカラーン
軽やかなベル音がして、扉の奥からサーリャさんが顔を出した。
「あら、セルフィちゃんじゃない。どうしたの?いらっしゃい、お茶でも飲んでいく?」
急な来訪にも関わらずサーリャさんの厚意を受けて、家の中に案内してもらう。数回来ただけだが、煌びやかな家だ。私が庶民の間では有名なお茶請けを出すと、「有難う!」と笑顔で受け取った。ーーーーーーのだが。
「でも、次はセルフィちゃんの手作りがいいなぁ~」
と、チラ見される。お菓子は不得意なんだけどな。お菓子作りは分量が繊細で、食事程はアバウトに出来ないし。それでも、お世話になっているし、今度は勉強して食べられるものを持っていこう。
「機会が有ったらですかね、ははは」
私は乾いた笑いを零す。サーリャさんはキッチンへ行ったと思うと、紅茶(ちょっとだけ渋い)を淹れてくれてソファに座った
ソファへ座るように言われてそちらに行くと、早速ベルジュが降り立ってあちこちを見て回る。
「お行儀が悪い!」
『セルフィの家とは規模が異なるのだな。こちらの方が断然広いぞ』
私が注意すると、ベルジュは平然と答える。平凡なギルド職員と有名冒険者を比べないで欲しい。収入が違うのだよ、収入が。
サーリャさんも向いのソファに足を組んで座ると、いきなりぶっこんでくる。
「今噂の、遺跡の15階層の件でしょう?」
「えっっ、顔に出てました?」
「うーん、ギルドから直接”氷雪”に仕事を持ち込まれるのが普通だけど、セルフィちゃんが私達を頼ってくれるって事なのよね?」
「はい、どうせギルドからは連絡が行くと思いますけど、私だけ先に声を掛けておこうと思いまして」
「なるほど、なるほど」
サーリャさんは色っぽく足を組み直すと、何某かを考えているようだった。
やがて、一つ頷くと私に笑顔を向けて言った。
「セルフィちゃん、行くわよ」
「え、どこにですか?」
「第47回、氷雪会議よ」
サーリャさんは、怪しい笑みを湛えた。




