57 さすS(流石Sランクパーティー)
只今、一日1話、20時目安更新になっております。
今回の遺跡ダンジョンは、随分と砂っぽい。私は念の為にマスクを持ってきたので、鞄から出して耳にゴムをかける。
「お、セルフィちゃん準備良いね」
「予備も持ってきたので、ナユさんも着けますか?」
「いや、いいよ。襟元のバンダナを口元に宛てれば即席マスクだからね」
周りを見ると、殆どの人がそうしていた。見かけだけ見ると、大掃除中の集団みたいである。尤も、持ってるのは掃除用具では無く武器だが。
アルファさんと、おそらくパーティーメンバーであろう一人のシーフが横並びで歩いている。中衛に私達とナユさんと考古学チーム、後衛にエインズさん達のパーティーという並びだ。先頭と後ろで煌々と魔法の灯りを点けているが、広がって歩くと、中間は少々暗くなってしまう。その為に中衛は団子になっている。戦闘が有れば私達はお荷物だ。
遺跡内は若干熱く、地面は平だが曲がり角が多い。道の幅は10m程で、戦うのは少し手狭だろうか。
戦闘が無い事を祈るが、そんな訳にもいかないだろう。私は何度も怖い目に遭った経験も有り、不必要にキョロキョロしてしまう。ベルジュが乗っている鞄から、ぐりんと顔を上げて言った。
『この遺跡は呪いの気配はないぞ、つまらんのう』
ベルジュはブツブツと文句を言うが、つまらなくていいんだってば。……契約者と言う割に、未だに私の事は慮る気は無いらしい。
呪いが無いとベルジュは言うが、それ以外にも罠はいっぱい有る。足元から延びるワイヤーに引っ掛かると矢が飛び出してくるメジャーな物から、手をつくと電気が走るものなど様々だ。
二時間くらいは大きな事件も無く、ひたすら歩く。尤も小さい戦闘は有るのだが、アルファさんのパーティーだけで殲滅している。Sランクが居る上に、殿はエインズさんのパーティーだ。遺跡に居る事自体が私には問題だが、比較的安全な位置取りだと言える。
何も無いと言うと、実際には何か起きてしまう訳で。突如大型のクレイ・ゴーレムが曲がり角から、ぬっと現れる。大きさは8m程。ほぼ、二階建ての大きさだ。
一部は苔が生えており、無傷なので、今までこの遺跡に入ったパーティーにはエンカウントしなかったのだろう。かなり育ってしまっている。ゴーレムは時間が経つほど周りの土を吸収して大きくなってしまうのだ。
ゴーレムは、ぐっと力を溜めると、力任せに隊列の中心を狙って石……と言うか岩を投げて来た。
ズドン!
岩が私達がいる、中衛まで届く。
ベルジュはシールドで投げられた岩を砕き、ナユさんは私を抱えて、大きく後ろに飛びしさる。
ゴーレムは今度は大きく足を上げて、踏みつぶそうとしてきたが、アルファさんの大剣が足に当たって僅かに軌道をずらした。
前衛の”放浪”とエインズさんのパーティーが、ゴーレムの前に躍り出る。”放浪”の魔術師が杖を高く掲げる。
「ウォーター・トルネード!」
こんな広くない所で、大丈夫なのかと思ったが、流石はSランクパーティーと言うべきか。水の奔流は寸分違わずにゴーレムを渦で削ってゆく。
それと同時に、土が大量の水を含んでどろりとしてくる。
体に水がしみ込んだゴーレムは少しずつ脆くなっていく。それでもずるずるとこちらに寄ってくるが、水を吸い過ぎて自分の体が重かったのか、動きも先ほどと比べて格段に遅くなった。”放浪”も、慣れているのだろう。頭を大斧で崩し、核を露出させる。それを砕くと、あっという間にゴーレムの体が崩れ、後には泥だけが残された。
今回は、ベルジュもゴレームの戦闘自体には出る幕無しである。比較的、私の身の安全を優先してくれたと言えるだろう。今の攻撃を見た後だと、あまり離れて欲しくない。
気が付くと、まだナユさんに抱き上げられていたので、ジタバタして下ろしてもらう。下心が無いのは分かるけど、すこぶる恥ずかしい。自分の顔をむにむにして、真っ赤になっているであろう顔を冷ます。
「いやー、流石はSランクパーティーだねぇ。あっという間だ」
ナユさんは私をそっと下すと、口笛を吹きながら言う。正直、早業すぎて分からなかったのだが、冒険者のナユさんがそう言うのなら早いのだろう。
鞄の上でベルジュが『つまらんわ』と言っていたが、何も無いようで何よりだ。
遺跡の道はかなり複雑だったが、”放浪”のシーフが優秀なのか、さしたる苦労も無く下の階層へ降りていく。と言っても、私の隣でナユさんも「念の為」とマッピングしていた。
「問題の石碑が有ったのって、何階なんですか?」
「15階ですね。そこで扉が開かないんです」
隣に居る、考古学科の職員さんに話しかけると、そう答えが返ってくる。
まだここは4階なので、何回か休憩を挟まないと辿り着かないな。
今回は、食事も固形食だけなので寂しすぎる。早く地上に解放して欲しいものである。
……実はこっそりマジックバッグにおにぎり入れてきちゃったけど。後で隠れてたーべよっと。




