56 ”放浪の旅路”と行く、遺跡ツアー
只今、20時目安更新になっております。
買い物から五日経過して、本日はダンジョンへ潜る日だ。
現地集合なので、ダンジョンの入り口の前迄行くと、30分前なのに既に30名くらいが揃っていた。
多分、20名くらいは護衛の為の冒険者だろう。
この大人数の中に、私は馴染めるかな……。考古学科にはたまに行くので、辛うじてうっすらと見た事が有る程度の人も居る。ただ、見た事がある、程度で知り合いではない。
つまるところ、これは確実にボッチである。助けて。
「あれ、セルフィちゃん?」
後ろから声が掛かり、そちらを見ると、ナユさんがこちらに向かって歩いてきていた。
「知ってる人が居た……」
私がジーンとして鞄を握りしめていると「ああ」とナユさんが頷いた。
「今回は隣国から帰って来てたランクSパーティー、”放浪の旅路”が来てるよ。正真正銘Sランクだから安心して良いと思う。何か、ちょっと前に”らしくない”Sランクパーティー来てたらしいね?”放浪”は安心して良いよ」
そう言われても、眉間に皺が寄ってしまう。ムムム。
”氷雪”以外のパーティーと行動したことが無いので、勝手が分からないのだ。ナユさんが私の眉間をぐりぐりしだすと、後ろから声が掛かる。
「おう、嬢ちゃんじゃないか」
馴染みの冒険者、エインズさんとパーティーの仲間が来る。彼とは顔を合わせる事が多いので、ホッとする。
「知らない人ばっかりで、どうしたらいいかと心細かったですが、これで少し安心です」
私が深く息を吐くと、エインズさんが大きくガハハと笑う。
「”放浪”や”氷雪”ほどじゃないけど、うちも補助くらいは出来ると思うぜ。頑張るからな」
た、頼もしい。
「”放浪”にはシーフも居るし、オレも補助的な役割だから、横で補助するよ。っと、ヤバ。ベルジュはどこに居るの?」
ナユさんが警戒して辺りをキョロキョロと見回すが、ベルジュは斜め掛け鞄の蓋に乗っている。今回はギルド長の言っていた、巻取りリール型のハーネスタイプを採用しているのだ。肩に乗るのはワイヤーが絡まって危ないので鞄に乗る形を採用している。これで30m問題も解決だ。もっともベルジュは無言で怒りを伝えてくるが、私も面倒なので汲み取らないことにする。
「とうとうお散歩紐かー、これでセルフィちゃんに面倒掛けないね。ははっ」
ベルジュはナユさんの肩に移ると、髪の毛を引っ張って抗議する。人間だったら顔を真っ赤にしていたに違いない。プンプンとしている空気が伝わってくる。
「ほら、ナユさんに迷惑かけない!戻ってきなさい」
私が首根っこを掴んで位置をリセットすると、エインズさんが興味深げにベルジュを見る。
「へー、受付にいるアーティファクトじゃないか。やっぱり持ち主と一緒に来るんだな」
エインズさんは感心しきりに言うが、物理で距離を取れないだけだし、ただのアーティファクトでは無く、呪物だ。本当の事は敢えて言うまい。
そうこうしていると、”放浪”の一人がこちらに歩いてくる。
「俺は、今回の探索任務の指揮を執っている”放浪の旅路”のリーダーのアルファだ。よろしく頼む」
そう言うと、彼は私達一人ずつ挨拶を交わす。
「もう少ししたら出発するから、その辺に座っていてくれ」
アルファ氏は斜め前に有る、古臭いベンチを指す。ダンジョン前のベンチで休憩する人もいるのかな。こんなところにベンチが有るのも謎では有るが、誰も管理する人は居ないようで、良い感じに風化している。
アルファさんは、明るい水色のウルフカットの、20代後半くらいの男性だ。歴戦の戦士の風格と言うか、安定感が違う。パーティーメンバーも全員がガッシリしていて、魔法使いの人ですら素手でゴブリンくらいなら殴り殺せそうな、つよつよパーティーらしい。力で押すタイプかと思いきや、この王都の判定でのSランクパーティーなので、もしもと言う事も無いだろう。ウチのギルドの判定は、よそのギルド支部より厳しいらしいからね。
「オレも出発前にメンバーと打ち合わせしてくるぜ」
エインズさんはそう言い残して自分のパーティーの方へ行ってしまって、ベンチには、私とナユさんの二人が残った。
「今回もオレが守るから、安心してね」
「えっ、は、はい」
「セルフィちゃん固すぎ、冗談だったのに」
「えっ、冗談だったんでですか!?」
「守るって言うのは本当だけど、ベルジュが怖いからね。そういう心づもりだ……って、やめて」
引き戻したベルジュが、もう一度ナユさんの肩に乗るが、今回は殴っている。もっとも、ベルジュの体自体は固くないので、魔法を使わない限り痛くは無いだろう。
ただただ「ぽむぽむ」と言う音が繰り返されるのみである。
それでも暴力は暴力なので、リールを巻きとって強制的に引き戻す。ベルジュは体重が軽すぎるので、リールを巻きとると簡単に戻ってくるのだ。
しばらくして考古学チームとアルファさんの打ち合わせが終わったようで、ダンジョンに入る事になった。
「何もなきゃいいねぇ」
ナユさんが独り言のように呟くが、それはフラグと言うやつだ。私がソレにどれくらい酷い目に遭わされてきたか、ナユさんはご存じない。
私の心はたちまち虚無になり、チベスナ顔になってしまう。
平穏で退屈な日々に戻してくれ。
そんな中、アルファさんの号令が飛ぶ。
「よし、行くぞ」
私の胸の内は、不安でいっぱいである。




