54 遺跡おかわり
6部始まりです。これからも頑張って書ききります。
只今、夜20日更新となっております。
「遺跡への同行ですか?」
その日、私は屋上のベンチで持ち帰りハンバーグ弁当を食べていた。珍しく、昼休みなのにギルド長がわざわざ屋上まで来たのだ。
「お昼を食べながら聞いて頂戴。今、お城の考古学科から連絡が有ったんだけど、ダンジョンにセルフィちゃんに付き添ってほしいそうよ」
それは、とてもではないが、ご飯どころでは無い話である。
「な、なぜ、なにゆえですか……」
「北東に有る遺跡ダンジョンの攻略が、滞ってるんですって。何でも、開かない扉の前に碑文が立っていて誰も解読出来ないんだけど、セルフィちゃんなら、もしかしてって」
「扉なんて壊せばいいですよ」
何と迷惑な。私は半分ヤケになって言う。
「そう考えた人も居たみたいだけど、なんと、土で出来た扉なのに、傷一つつかなかったんですって!
今までの階数は楽に下に進めたんだけど、急に通せんぼよ。結局、碑文が読めないと扉は開かないだろうって事で、一端は戻って来たけど、もう一回編成し直して調べたいって話よ」
何故、私をそこに入れようと思ったのか、小一時間、問い詰めたい。
まさか、あの優しい鑑定科の室長が私を売ったのではあるまいな。もしそうなら、私は人間不信に陥ってしまうぞ。
「荷物持ちの人も居るみたいだし、身軽で入れるわよ」
そういう問題ではない。何で、それでいいと思った!?今まで指名依頼はマジックバッグを貸してもらっていたので、今更荷物持ちが必要かと言われれば、そうではない。
「あ、今回は何故マジックバッグが無いかって考えてるでしょ」
ぎくり。
「今回は、もし奥へ行けたら何か持ち帰れるかも知れないという事と、城の考古学科で食料を余裕を持たせた上で管理したいんですって。
だから予定より長い日数かかったもしもの時の為に、マジックバッグを二つ持たせるらしいわよ。国の機関に仕える人たちが行くなら、流石に街のギルド員には持たせられないわよねぇ」
確かにそうだ。今までは”氷雪”と一緒か、救助の関係で私が持っていたのだが、ただの庶民である私が所持した場合、エリートの彼らの中で不満を持つ者も出るだろう。
『しがらみや対面ばかり気にして、本当にニンゲンは疎漏だな』
ベルジュが弁当の持ち帰り用のビニール袋から、にょっと顔を出す。さっきからカサカサしていると思ったら、いつの間にそんな所に入ってたんだろう。
「そうよねぇ、私もそう思うわ。でも、結局はセルフィちゃん頼みになるから……ベルジュちゃん、セルフィちゃんをお願いね」
ベルジュはギルド長に胸を張って答える。
『クックッ……ワシが居れば100人力……いや、1000人力だな』
君は人では無いし、二回もポカやったから、私は自分の身が心配だよ……。
「食料は当日配られるそうよ。これは支度金ね。装備とか揃えておいてね。5日後迄に準備しておいてねん」
ギルド長は言いたい事は言ったとばかりに、さっさと屋上から出ていってしまった。遺跡の救助からこっち、私の命が軽んじられている気がする。気軽に何でも任せすぎである。
城の人達も、私を便利に使い過ぎである。国の事はお城で解決してほしい。
『毎回毎回、良くも巻き込まれるものだな。感嘆ものだ』
それは、私が望んでやっている事じゃないから、喜んでやってるんじゃないよ。
『奸悪なやつらだな、上層部というのは。尤も、ワシの時代の方が身分制度は厳しかったぞ』
「そりゃそうよ。ベルジュみたいなアーティファクトを、ポンポン製造出来る時代だと、現代は、もっと上層部から圧制を敷いられただろうからね。今よりもっと身分差がきつくて当たり前でしょ」
『ウム』
いつの時代も貴人は、民草への事情などお構いなしなのである。世知辛い物だ。お弁当を食べ終わり、ゴミをまとめた私は、足を組んで考える。お金を渡してきたって事は、自分で好きに装備を整えろって事だ。
戦闘面では期待されてないから、武器はナイフとか適当に装備しておけば良いけど、防具は或る程度の物じゃないとな。と言うより、防具をきちんとしないと普通に死ぬ。
困った、そういう目利きが出来ない。防御力などは解析できるから良いのだが、動きやすさとかをどう判断していいのかがわからない。
取り敢えず仕事に戻ろう。私はゴミを投げて、箱に一発で入ったので拳をグッと握って喜んだのだが、中にベルジュが紛れ込んでいたので、救出する羽目になった。道理で重心が取りやすくコントールが取りやすかった訳だ。結んでいる時点で、ちゃんと言ってほしい。出て来たベルジュは、デミグラスソース臭かった。
この後ベルジュを水洗いし、給湯室に干すはめになった。ベルジュは考えうる限りの罵詈雑言を並べるが、スルーすれば私は鑑定室に戻るので、大丈夫である。窓口なら居るなら一緒に居てもらった方が心強いけれど、今日の私は無敵の鑑定室業務だ。
冒険の事は冒険者に聞けばいい、とばかりに、サーリャさんの住所を教えてもらえることになった。
本当は個人で冒険者の住所を手に入れるのは首が飛ぶようなことなのだが、今回は特別と言う事だ。なんというだろう。このギルドの個人情報の管理は、大丈夫だろうか。わが職場ながら心配である。




