50 悪夢はオレンジと紫と女の子
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翌日城に行くと、本当に”氷雪の鷹”が揃っていた。
「イクリスさん、本当に仕事選んだ方がいいですよ!?」
毎回言ってるけど、色んな人に押し付けられすぎる。
「確かに上から言われた事だけど、セルフィさんが行くなら俺達も助けられるかと思って」
「うぅ」
気心の知れた”氷雪”に来てもらえるのは有り難い。今回はベルジュも別行動だし。でも、毎回と言う事が申し訳なさすぎる。
しかし、背に腹は代えられない。
「それでは危ないですが、お願いします」
有難すぎて、深く頭を下げてしまう。
「ベルジュちゃん、夢の中に入れるってどうするの?」
『まずは、症状の有るヤツの近くに行かねばならんな』
サーリャさんとベルジュが話し合っているが、セイカさんがおずおずと会話に入って行く。
「先ほど室長さんに聞いたら、患者は神殿に居るらしいんですけど、ベルジュさんって神殿に入って大丈夫なんですか?」
その質問にベルジュが半眼になって答える。
『ワシをどうにか出来る者は、 現代でも然う然うおらぬ。もっとも、神殿で不遜な態度でも取られるようなら、呪殺してやるが』
あ、まだ自分が呪いのアーティファクトって言う自覚は有ったんだ。もう忘れてるかと思った。
『とにかく、症状のある者の近くにいる必要がある。遠隔では出来ぬぞ』
「それだと、神殿に行くしかないな」
「それでは馬車を出しますので、それに乗って神殿へ行ってください。くれぐれもお願いいたします」
深々と頭を下げる室長さんのいう通りに、馬車に乗る為に城門まで戻る。
神殿の門をくぐると、すぐに神官が出てきて、セイカさんの姿を見ると深々と頭を下げる。やっぱり、セイカさんって神殿内で一目置かれているんだろうな。籍を置いてるだけとは言っていたが、実力も有るし、結構上の地位なのかもしれない。
神官の衣擦れの音だけがサラサラとし、廊下を静かに案内される。
10分ほど歩くと、どん詰まりの部屋を案内された。窓は少し開けており、爽やかな風が入って来ててシンとしていた。
ベッドには5人が静かに寝かせられている。この人達全員が呪いの人形に閉じ込められているのか。
見ているだけなら、ただ寝ているだけに見える。
ベルジュが肩から降りて、寝ている人の顔を一人一人見て回る。
『ふむ、全員が夢に捕らわれているな。人形は持ってきたか?』
「うん、これどこに置けばいいの?」
人形は呪いがかかっているので、私しか持てない。
『ここの花活けの所に置け、ここから夢に入れる陣を引く。お前らは他のベッドにでも寝ると良い』
指示されるままに、この部屋のほぼ真ん中に居る人の近くに女の子のぬいぐるみを置く。そして、指示の通りにそれぞれベッドに入った。
私はそのままの服装で入れば良いが、”氷雪”は武器防具を装備したままベッドに入らねばならない。しかし、装備が夢に持ち込めると言うのも謎ではある。
ベルジュは部屋の真ん中に立って、何かの呪文を唱えていた。呪文が終わったと思うと、部屋中に光る魔法陣が浮かび上がる。光る魔法陣とは言え神官が使う光り輝くような物では無く、赤黒い光だった。流石は、呪いのアーティファクトだ。本分発揮といった所だろう。
『よし、送るぞ。目を閉じろ』
その声を聞くや否や、世界が逆さまになったような浮遊感を感じた後に、無理矢理意識が刈り取られた。
軽い頭痛の後に目を開けると、辺りは草原だった。空は暗いオレンジで、あちらこちらに紫の雲が浮かんでいる。辺りには壊れた玩具が散らかり、山となっていた。
自分のすぐ近くを見ると”氷雪”がまだ目を覚ましていない。
とりあえず、回復魔法が使えるセイカさんから起こす事にする。
「セイカさん、セイカさん、起きてください」
私がユサユサと揺すると、セイカさんが薄目を開けた後、長いまつ毛をパチパチとさせる。
「あ、セルフィさんの方が早く目覚めたんですね。他の人も起こしましょう」
”覚醒”
まだ目を閉じてる三人が、ぼんやりと目を開ける。私は呪いがほぼ効かないし、セイカさんはジョブ的にに精神防御力が強いからだろうそこまで引きずらなかったのだろう。他のメンバーは、まだ頭がスッキリしていないようだ。
「少し休んでから進もう。中心がどこか分からないが、多分雲が集まっている場所だと思う」
10程休んで意識をハッキリさせた後、イクリスさんが言う通りに、紫の雲が一か所に向かって渦巻いている方向に足を進める。足元は草だが、何やらフワフワしていて夢心地だ。中心と思われる場所に行くにつれて、薄紫の靄のような物が足元に広がって来ている。更にずんずん進んでいくと、中心に行くにしたがって、空も足元も靄が濃くなってきた。
歩く事2時間、そろそろ中心かと言う所で、今まで見えなかった大木が急に出現した。色は青緑で高さは50mほどか。葉が風も無いのにさわさわと揺れている上に、体に悪そうな薄い緑の靄がかかっている。
木の上を見上げながら歩いてると、急にガイアスさんが立ち止まったので、余所見をしていた私は激突してしまった。
「わぷっ」
もう少し可愛い悲鳴を上げられないものか。ベルジュが居たらバカにさせそうだ。
「どうたんですか、ガイアスさん」
「セルフィ嬢、あの木の根元を見てくれ」
ガイアスさんの肩越しにそちらを見ると、木の下に一人、年齢が5歳頃の、場違いなパステルカラーの女の子がいた。
女の子はこちらを見ると、邪気の無い可愛らしい笑顔を浮かべた。
「お客様なのね、来てくれてありがとう」




