48 大きな買い物が出来ちゃうかもしれない件について
いつの間にやら48話。見て下さる方々、本当に有難うございます!!
今日はお城から報酬が出るのをギルドで分配する日である。ナユさんの告白を断って何日も経っていないので、私は控えめに言っても気まずい。
報酬用の金貨を数えながらも気がそぞろで、何度も計算をやり直すはめに陥っている。いかんいかん。ナユさんとは今日も顔を合わせるのだ。落ち着け、自分。
「セルフィちゃん、そろそろお願いね」
「ひゃいっ」
ギルド長に突然声を掛けられ、驚いて変な声が出た。今10cmくらい飛び上がったぞ。金貨の袋をトレイ乗せ、カートでギルド長の後に着いて応接間に入る。
まだ誰も来ていないというのに、ぎくしゃくと準備を始める。
『しっかりせい、女は度胸だと言っておっただろう』
そう慰めのような言葉をかけたと思ったら、頬をぐいーっと強い力で押してくる。”うりうり”とでも言いたいのだろう。有体に言って、かなりウザい。よし、後でお手玉の刑に処す。
ガヤガヤと階段を昇ってくる声がしたかと思うと、ノックをしてから”氷雪”が入って来た。
「おはようございます」
イクリスさんが爽やかな笑みを浮かべる。何故か私はホッとして挨拶を返した。
「おはようございます、良く休めましたか?」
「俺達は冒険者だから、三日も布団の有る場所で休めば全快かな」
「ああ、自分達は体が資本だからな」
”氷雪”の前衛が返事をしてくれるが、確かに体力に関しては羨ましすぎる。私があの冒険に着いていくのは、アーティファクトなどの高価アイテムのドーピングが無ければ、とてもじゃないがついていけない。本当に勘弁してくれ。
そんな風に話していると、扉がバンッと開いた。
「おーす、遅れて……ないよな?」
またもや時間ジャストにナユさんがやってくる。私は少し気まずくて、視線を泳がせてしまう。
そんな私の横を通り過ぎる時に、少し離れた位置からコソッと耳打ちしてくる。
「普通に話してもらっていいし、その方が嬉しいよ」
チラリと見るとナユさん優しく笑っていて、私は頬が赤くなるのを感じながら、コクコクと何度も頷いてしまう。平常心、平常心。何度も深呼吸をして気を落ち着かせる。
「まあ、皆さん座って。セルフィちゃん、報酬の分配をお願いね」
「はい」
ギルド長はそう言って私に金貨袋を持ってくるように指示する。金貨袋は結構重いので、一つ運ぶのも結構大変だ。トレイの上から運んでくると、双方にテーブルへにと袋を置く。
「あ、そうだわ。ナユさんのナイフ、同程度の物を城からぶんどって来たから受け取ってね」
ぶんどって……?ギルド長って、何となく城に強気で出れるんだよなぁ。めっちゃ良い装備を借りて来たりするし、何か強力なコネが有るんだろうか。
ナユさんは箱からナイフを取り出すと、目を眇めて横にしたり斜めにしたりして確認している。柄には古代文字が彫ってあり、そちらも結構な業物だと分かる。
「気に入ったよ。これなら前のナイフと遜色無いわ」
ナユさんはニッと笑って、ナイフを箱をしまう。正直、自画自賛だと思っていたんだけど、ナユさんがあそこまで強いとは思わなかった。シーフというのは、戦闘時は前衛よりは一歩下がって戦う補助職だ。しかし、”氷雪”に交じって、引けを取らない戦闘力だった。
自称だったが、奇態の天才シーフとは、あながち嘘では無いのかも知れない。私は冒険者ではないので判別は付きにくいが、Aランクパーティーと一緒に戦って、勝るとも劣らない動きをしていたと思う。
シーフは一般的にはそこまでの働きを要求されないものだが、前衛っぽい働きが出来るのは中々珍しいのではないか。罠を解除している、合間、合間に敵を屠っていたし。
それにしても、思い返すと本当に酷い目に遭った。ベルジュの30m攻撃を二回もくらい、暗闇に投げ出されるし、一人(と一匹)で心細いソロキャンする羽目になったし。返す返すも本当にとんでも無かった。ギルド長は、私が内勤であるギルド職員なのを忘れていないだろうか。
「じゃあ、セルフィちゃんお願いね」
「はい」
今回は人数分を個人個人で等分に分けて配布する事になった。
「きっちりと数えましたけど、一応中身を確認してくださいね」
私が金貨を皆の前に置くと、各々が中身を確認している。
「確かに頂戴した」
ガイアスさんが厳かに言った。
そこで、予てからの私の疑問をギルド長にぶつける事にした。
「ギルド長、ちゃんと窓口嬢は募集してるんですよね?私をいい加減に鑑定室に戻して下さいよ。最近はずっとフィールドワークでクタクタです。裏方に戻してください」
私が言うと、部屋中の6対の瞳が私を一斉に見たので、ビクッとした。なに、なぜ、なにゆえ?
「確かに、最近フィールドワークに出てもらっているけど、セルフィちゃんにしか出来ない事なのよねぇ」
私を便利に使い過ぎである。労基に訴えたい。
「とにかく、今回の件は解決という事で!解散しましょう」
手をパンと叩いて、ギルド長は無理矢理に話を締めた。話を流されてしまった。全員立ち上がってドアから出る。ギルドの出入り口まで見送ると、全員が手を振って帰って行った。
「セルフィちゃん、今回は報酬の他に、危険手当も入ってるから!また何か有ったらお願いね!」
がたいの良いギルド長に愛想よく言われても嬉しくないんだよなぁ。可愛い女の子に労ってもらいたい。
ここの所の報酬が良すぎて、特に支出も無い私は、このまま依頼をこなせば小さい家さえ買えそうだった。仕方ない、それを目指して頑張るか……。私は心の中で自分を慰めて、1人涙するのであった。
第二部終わりです。第三部を書き溜めねばー。
ブクマとか付けると、始まった時に連絡が行くっぽいですね。何か……ブクマしなくても更新を感じ取って下さい笑 感想とかもいただけると有難いです。
間は特に開けずに書く予定です。




