47 閑話4 Love me do
今回は短いです。閑話みっつ
只今、昼12時、夜20時更新となっております。
一日1本の場合は、20時目安とさせていただいております。
Side:ナユ
扉を出ると、”氷雪”のイクリスにばったり会う。
「げっ、もしかして立ち聞きしてた?良かったね、オレがフラれて」
「そんな事は言っていないだろ」
「どうだか」
この街で一番モテル男。沢山の物を持ってるやつなんかが、セルフィちゃんの傍に居るのは正直、腹立たしかった。ただでさえ”氷雪”の仕事は高レベルのものが多く、セルフィちゃんが担当する物も多い。
本当に心から気に入らない。
「いや、預かっていた荷物を返しに来ただけだ。道すがら人に聞いてきた。男一人で、招かれてもいないのに、直接家に届ける訳にいかないだろう。……テラス席だから、話は少し聞こえてしまったが」
それは確かに。
「はー、告白は断られたけど、別にあんたに負けた訳じゃないから。嫌いとか言われなかったし、あんたの事が好きだとも聞いてないから」
我ながら、負け惜しみだ。でも、こいつはまだ自分の事を分かっていないし、セルフィちゃんの気持ちもどう変化するか分からない。つまり、オレは完全敗北した訳じゃない。
こいつは不思議そうな顔をしているが、それも心底腹が立つ。
「それじゃあな。もう一緒に仕事しない事を願うよ」
オレはさっさと背を向けて歩く
「……………………………………………………」
何も言い返してこないか。本当に自分に関しては鈍いんだな。当分顔は見たくないもんだ。
Side:イクリス
彼女が俺に預けていた髪留めを返そうと思って追って来た。今日の話し合いが終わったら、城からの報酬が出るまでに少し間が開いてしまうので、その間はギルドを訪ねる事は無いと思ったからだ。
俺の横をさっさと通り過ぎるナユの背中を、ぼんやりと眺める
話を聞いてしまったが、フラれて良かったかは……俺はどう思った?”氷雪”と一緒に居てくれている彼女の隣が心地いいとは思っている。だが、女性として好きかと言われたら良く分からない。
だが、ナユの言った「別にあんたの事が好きだとも言われてない」に胸がざわざわした。テラス席に座っている彼女を見る。もちろんその背中が俺に語り掛けて来る事は無い。
そよそよと小さい風が吹き、彼女の髪がそよりとした。
どんな顔でナユの告白を受けたのだろうか。
こんな俺を見たら、セルフィさんは何と言うだろうか。とてもじゃないが今は直接顔を見て話せる自信が無かった。
本当は今日返す筈だった髪留めを、そっと懐に戻す。少し時間が経ったら……次に依頼を受けるまでは預かっていよう。時間が経ったら、普通に顔を会わせられるだろう。
俺は声を掛けずに踵を返し、自分の家路に着いた。
Side:セルフィ
テーブルで今起きた事を反芻しながら考えるが、未だに信じる事が出来なかった。自分が恋愛対象として見られる事なんて、考えてもみなかった。
鞄が一際ガタタッっと揺れたと思うと、ベルジュが鞄から顔を覗かせた。ようやくハンカチの結び目が解けたようだ。ぽんっとコミカルな音がしてテーブルに降り立った。
『フゥ、良かったのか?あの小僧を逃がして』
頭だけを鞄から覗かして、その朝焼け色の目を細める。
古代のアーティファクトに人の複雑な人間関係なんぞ分かる訳も無く。
「私は捕食者じゃないんだよなぁ。好きじゃないのに試しに付き合ってみて、やっぱり無理ですってなったら、職場なのに気まずいでしょ。それなら最初から付き合わない方が良いよ」
『そんなもんかの。ニンゲンのやる事はわからんな。短い寿命しかないのに、恋だ愛だとずっと一人と番う事をしない者が多い。時間の無駄だ』
そりゃ君の人(兎)生と比べれば、瞬きをする時間にも値しないけど。私が思考の海に沈んでると、ベルジュは残った紅茶をスプーンでかき回し始める。
ティーカップの中の水面はゆらゆらと波立ち、私の心の内を表わしていた。
次からは普通の話に戻ります。
短いので、もう一本上げます




