42 二度ある事は……
只今、昼12時、夜20時更新となっております。
一日1本の場合は、20時目安とさせていただいております。
目が覚めて、昨日の内にサーリャさんから出してもらっておいた水で顔を洗い、身支度をする。今日は意外にスッキリと目が覚めた。テントから出て、ぐいっと伸びをする。
昨日の夜も使った焚火の上に、洗った鍋を置いて、手早く火を点ける。
マジックバッグからパンを出して、軽く炙る。流石にトーストとまでは出来なかったが、簡単に炙るだけでバターの染み込みが違うのだ。タッパーから厚切りハムとトマトとレタスを取り出して挟んでいく。それだけだと冒険者には軽すぎるので、スープにじゃがいも、マメ、ニンジンとベーコンを入れて、くつくつ煮る。
丁度、出来上がる頃には匂いで皆が起きてくるという寸法だ。
そうして毎日料理を作っているが、正直に言うと、この信じられない程お高いマジックバッグが、ただの食糧庫に見えて来た。国としての本来の使い方は、古代の碑石の写しや、古代の遺物の持ち帰りなどに使われるのであろう。私とて、”氷雪”と一緒だから安心してご飯を作っているのであって、一般パーティーだったらこんなに匂いのするものは作れない。その前に、一般パーティーには私が付いていくような仕事は無いんだけど。せいぜいが、持ち帰られた物の鑑定・解析くらいだ。
探索の方向性としては、階層を丹念に探索して安全を確保し、次の階層への階段が見えた所で小休憩というペースにする事に決まった。今回は討伐対象を倒して終わりではなくて、原因を探らないといけないからだ。
ナユさんが罠を解除しつつ進んで、戦闘が有れば皆が総出で戦う。ベルジュでさえ(距離を弁えて)戦っているので、私に出来るのは天井のシミを数える事か応援くらいである。もちろん未知の魔物が出たならば弱点を解析する事は出来るのだが、今の所ギルドの資料で見た事のある魔物ばかりで、弱点も把握済みである。
く、悔しくなんてな……くないな。やっぱり悔しい。私が、あまりにも役に立っていなさすぎる。
「しっかし、13層に入っても、それらしい原因は見つからねぇな~」
ナユさんが、ノールックでローパーをスライスしていて、器用極まりない。スライスされたローパーの触手が宙を舞い、グロくもあるが、さながら打ち上げ花火である。
「この辺の魔物は、多分以前と分布が変わらないのであろうな」
ガイアスさんはそう言うのだが、出現数が異様に増えて来た。体感で、一階層降りる毎に1.3倍と言った所であろうか。
「このダンジョンって、こんなに敵が多い物なんですか?」
私の素人質問に、イクリスさんが丁寧に答えてくれる。
「いや……俺達も以前来た事が有るけど、ここまで多くなかったよ。ミノタウロスが階層移動してきてたことも有るし、やっぱりダンジョン内で何かが起きているんだろうね」
戦闘が一区切りし、セイカさんがみんなを癒して回っている。これが幾度となく繰り返されて、階層全体を探索している訳である。異常一つ見逃す訳にいかない。
階層を、一つ、また一つと降りて行くと、流石に私でも資料で見た事が無い魔物も出てくる。しかし、”氷雪”とナユさんは見慣れているのか、チームワークを発揮して難なく倒していく。
深層の魔物の資料がギルドに無いのは、冒険者が特には報告書に書かないからだな。あとは、単に潜れる冒険者が少ないかだ。その辺は義務じゃないからね。
『未だ歯ごたえの有るやつは出て来んな。もう退屈だ』
ベルジュは体が小さいので、戦闘では動きが追い付かないかと思ったのだが、スピードが半端ではないのと、体の小ささを生かして、かえって味方の攻撃を縫って隙間から敵を難なく攻撃している。
しかし、敵を倒すごとに何故か私の肩まで器用に跳んで戻ってくる。これは、おそらく自分で歩きたくないだけだろうな。疲れはしないだろけど、面倒くさいんだろう。
降りる事、地下15階層。流石に私も戦闘場所との距離の取り方が難しくなってきた。敵の数も増えて来て、あまり近づくと邪魔になるし、離れるとベルジュか私が吹っ飛ぶのだ。ソロソロと壁際に避けていると、壁に妙な出っ張りが有った。これは勝手に触ったらダメなヤツである。戦闘が終わったらナユさんに報告しないと。
私がジッと出っ張りを見ていると、不意に”くんっ”と体が引っ張られる感覚が有った。またベルジュが離れすぎたのであろうか。今度こそ飛ばされてなるものか。
そう息巻いたものの、踏ん張る為に掴まれるような引っ掛かる物は無い。オロオロとしていると、予想に反してベルジュが吹っ飛んできた。
『うおっ』
そんなバカな。前回と違ってベルジュが飛んで戻ってきた。体が反射的に避けようとしてしまい、壁に手をついてしまう。”ガコン”と壁の出っ張りを押してしまい、壁が一部ボコッと無くなる。
「なんでっ!?」
私はベルジュと一緒に後ろの暗闇に投げ出されてしまい、壁は無情にも音を立ててふさがってしまった。




