35 困った時の……
「アラそう、ベルジュちゃんが行ってくれるの?」
アリスさんからの、報告とも言えない報告を聞いたギルド長が、ウキウキしながらお茶を勧める。それをゲッソリしながら眺めると、テーブルの上は、さながらアフタヌーンティーでも開いているかのような華やかさで、所狭しとデザートが並んでいる。わぁ、デザートの宝石箱だ。
「はい、ベルジュだけが行きます。私は行きません」
『ワシはお前から遠くに離れられないのだから、セルフィも行くに決まっておろう』
「なんで!?」
こういうのは……行きたい人(?)が行くべきじゃない!? だいたい罠とかどうするのっていう話だし、戦闘要員もヒーラーも無しで、ソロ到達出来る訳はない。今回は、それ以前に国から借りたような装備も無いし、ドーピング無しで行ける訳は無いのだ。ナイナイ尽くし、ナイ尽くしというものである。
「今回、私のスキルとか必要じゃないのに、私行くんですか?」
「ベルジュちゃんが、メインだからねぇ」
ギルド長も酷な事をおっしゃる。しかし、その口調だと私とベルジュの事を、本気で行かせようと思ってますよね。
「あ、丁度セルフィちゃんの事を勧誘したいって言ってた子居たわよ?その子の事を連れて行ったらどう?」
そんな話は、ちょっと聞いてないぞ?
次の日、予想通りと言えば予想通りだが、鑑定室の扉の外で私の前の事を待っていたのは。
「よっ、ナユでーす。迷宮ダンジョンの付き添い、俺がしよっかなーって」
自称・稀代の天才シーフのナユさんが、私を廊下で待ち伏せしていた。
「はっ!?」
一般冒険者が立ち入るべきではない場所に、居てはならない人が出現したことに驚いて、10cmは飛び上がった。思わず後ずさって扉をバタンと閉めるが、閉めたからと言って何かが解決するわけではない。一呼吸おいてから、もう一度そろ~っと少しずつ扉を開けると、見間違いでも何でも無くナユさんがいた。幻であってほしかった。
「ここ、関係者以外立ち入り禁止ですよ!?」
「いやー、ギルド長にもどうかって声かけられたし? せっかくだから誘おうかなって」
一体どこから侵入して来たのか分からないが、ナユさんは悪びれずに壁に肘をついてニコニコしている。
私が、ため息を吐いて眉間を揉んでいると、後ろから「ぽすぽすぽすぽす」と間抜けな音が聞こえた後に踏み込んだ音がしたかと思えば、ベルジュが顎の下からナユさんを吹っ飛ばしていた。ナイス・アッパー。
壁に叩きつけられて、ナユさんが目を白黒させている。今度こそ学習して欲しい。
「いったぁ……いや、本当にギルド長に言われたからセルフィちゃんの事を勧誘に来たんだって。それにしてもその兎、本当に物騒だね」
ごもっともなご意見だが、ベルジュは兎と言われるのが嫌いなので、足を踏み鳴らしながらナユさんの脛を的確に攻撃している。だめだコイツら、早く何とかしないと。
「仮に私とナユさんが行くとしても、残りの人はどうするんです?」
私は諦めて扉から出ると、腕を組んで壁に寄りかかった。
「えっ、それはもちろんーーーーーーーーー」
じゃーん!とナユさんが、依頼ボードの前でパーティーを手の平で指し示す。
「困った時の”氷雪の鷹でしょ!」
いくらAランクパーティーだからって、何でも押し付けられすぎだから、もっと反抗した方がいいよ!?
「イ、イクリスさん達は、良いんですかそれで……」
「まあ、さほど遠くないし、他のパーティーが潜らない階層まで行くならドロップも良さそうだから良いかなと」
良い人すぎて泣けちゃう。
「そうそう、それにベルジュちゃんが居るなら、セルフィちゃんを守りながら戦う必要が無いから、他の人を入れるよりは断然、気楽よ」
「珍しく、僕もサーリャさんに同意です」
「自分も全く異論は無い」
サーリャさん、セイカさん、ガイアスさん達にも口々に賛成されてしまった。
「ううーーーーーーー……んんんんーーーーーー……」
確かにウォーキングを続けていて、冒険者には遠く及ばないながらも、以前よりは体力は有る。防御面はベルジュが居るし、罠解除はナユさんが、戦闘は”氷雪”にお任せだ。冒険者なら、この上も無く良い条件だ。後は、私の覚悟だけか。いや、でもしかしな。
ーーーーまあ、どうせ悩んでも結局は行く事になるだろう。
「…………分かりました。でも、本当ーーーにっ!今回、私は役立たずですよ?」
「セルフィちゃんは、居てくれるだけでいいのよ」
サーリャさんはニコニコして頭を撫でてくる。これではまるで、ペット枠である。ああ、また野宿生活かぁ……。
明日からは昼・夜更新になります。でも一日一話の方が、読む方は面倒くさくないんですかね……。
考え中です。




