34 嬉しくない呪物と噂話
お昼休みに固定で読んでいる方っていらっしゃいます?
予約投稿でいいのか悩み中です。
冒険者ギルドも、受付よりも鑑定の方が忙しくなってきたという事で、最近は私も鑑定科の方へ戻っている。
東の迷宮ダンジョンは実入りが良くなったという話ではあったが、冒険者が増えてしまったので、それに反して宝箱の出現が悪くなってしまったらしい。
そうなると、欲をかいて先に進んで行ってしまう冒険者が出る可能性がある。罠自体はシーフが居るので然う然う問題にはならないのだが、ミノタウロスが出たと言われているのに、更に下に潜るかどうかでパーティー内で揉める所も出ているんだとか。
私だったらそんな危険な階層までは潜らないが、彼らは危険を犯してもリターンを求めるフシがあるからね。
『宝石の鑑定依頼ばかりじゃのう。こう……呪われた武器はないのか』
ベルジュは呪われた武器や防具を見るとテンションが上がるので、宝石ばかりだと退屈してくるのだ。私はベルジュによって呪いが効かないので、他の人より怪しい鑑定が回ってくる。と言うより、呪われている・いないでより分け、呪われていない物を他の人に鑑定してもらってる。
『もっと、手に取ったニンゲンが狂気に憑りつかれて自滅するようなものが良いな』
「お母さん、それはこの間やったでしょ」
『誰がお前の母か!』
そう、少し前に呪われた腕輪によって破滅した男の事件の事だ。
「そう言えば、血が合わないとは言え、何であの時あいつと契約しなかったの?」
ベルジュが”うーむ”と唸りながら腕を組み、首を傾げる。いや、あなたぬいぐるみじゃないって、普段自分で言ってるでしょ。兎のぬいぐるみのように、あざといよ。
『自分から契約させるならともかく、ニンゲン側から言われても、契約する気が無くなるというものよ』
天邪鬼か!
右から左へ、呪われている物と呪われていない物、依頼した人の名前のタグを整理する。
「あ、呪われた指輪みーっけ」
『どれ、見せてみよ!』
ベルジュが横から素早くシュバっと飛んでくる。
”解析”
スキルを使うと目に熱が集まり、情報を伝えてくる。
・狂乱のピジョンブラッドの指輪・
爆発的に攻撃力が上がるが、指輪が壊れるか、使用者が力尽きるまで持ち主から離れない
こわ!こんな指輪は嬉しくないなぁ。持ち込んだ人が素手で触らなくて良かったけど、鑑定結果にガッカリするに違いない。これって解呪したら壊れるやつだよね。いざという時の、自爆用だとしか思えない。
『ぬう、大したこと無いな』
「大した事、有る有る。どういうのを期待してるの」
『所有しただけで国が亡ぶ剣とかだな』
「腕輪だったけど、それもつい最近に似たような事が有ったでしょ。ボケちゃったの?」
『アーティファクトが、ボケる訳なかろう!』
ボケツッコミしつつ作業をしていると、日がとっぷりと暮れて終業時間になった。
「うーん」
伸びをしながら首をバキバキ言わせていると、アリスさんが鑑定室のドアからひょこっと顔を出した。
「セルフィ、もう仕事片付いた?”夜霧のワルツ”行かない?」
「いいですよ」
”夜霧のワルツ”はお酒よりも料理が人気な、女の子にも人気な酒場と言うかお食事処と言うか、そんな場所だ。店に着くと、ほどなくして席に案内される。
「っはー!!美味しい!!」
いつ見てもアリスさんの飲みっぷりは気持ちいい。あまり強くはないのだが、お酒が好きなのだそうだ。私はライムジュースを飲みながら、茹でた枝豆を摘まんでいる。ベルジュは何故か、出されたお手拭きでアヒルを作っていた。こういう知識、どこから拾ってくるんだろう。
「へへっ、セルフィ呑んでるー?ミノタウロスが更に一階層上に上がって来たって聞いた?」
「げほっ!」
驚きすぎて枝豆が変な所に入った。ベルジュが『汚いヤツめ』と呟いてる。
「元々、最初の目撃情報だってそんなに深い階層じゃなかったんだけど。最近噂になっていたのは地下12階層だったのが、昨日来た冒険者は地下11階層で見たって言ってたよ」
どうやらその冒険者はサッサと帰って来たので実害はなかったらしいが、強い魔物が階層を移動するのは大問題だ。普通は迷宮の深くに潜っていて、そこからは動かない。ミノタウロスの目撃例も今までは地下14階層だったのが、この間の時点で地下12階層だった。
「これは困った事になりましたね」
「困ったわね~。”氷雪”が行ってくれれば一発なんだけどな~」
アリスさんが、意味深に私をチラチラ見てくる。だが、私はそれぞれの家を知っている訳では無いし、個人的にこちらから頼めるほど、親しくはない。そう私達が話していると、ベルジュが恐ろしい事を言いだす。
『最近はニンゲンしか吹っ飛ばしていなかったから、久々にもう少し大きいのをやってみたいな。その小僧達と行けば、戦えるのか?』
何言ってるんだ、この兎!考古学チーム救出事件の事を思い出して、悦に入っている。私が冷や汗をかいて縮こまっていた事なんか、ベルジュの記憶には無いらしい。いやいや、元々私を守る契約なのに、わざわざ危険に飛び込んでどうするのだ。
「ちょっとちょっと、私にも仕事有るからね。それって業務外だから」
『何者からもお前を傷つけさせぬから、大丈夫だぞ!』
それ、口説き文句で、人間に言われたかったな……。しかも、もっと安全な状態で。私がふるふると左右に首を振っているのに、アリスさんがニパッと笑顔になった。
「明日、ギルド長に話してみるね!」
あなたは鬼か。
アリスさんに悪気はありません。




