22 図書室で捕まえて
明日仕事行ったら、(大体の人は)もう休みですね。GW明けの仕事キツイですが、何とかやりすごしましょう。
「セルフィちゃん、ギルド長室にちょっといいかしら?」
「…………………………」
その日は心穏やかに鑑定業務を行っていたところに、ギルド長の呼び出しを食らった。その言葉だけで、初手から、それはそれは嫌な予感がした。
手元の鑑定素材と書類を横へまとめてギルド長室へ向かう。
いつもと言えばいつも通りに紅茶が出てくる。今日のお茶のお供はフィナンシェだ。美味しいおやつで説得されると思ったら、大間違いですよ?
ギルド長は自分のデスクの縁に体を預けると、こちらを見る。
「先月の悪霊の討伐クエストを”氷雪”がやったのを知っているわよね」
「はい」
「その場の悪霊は倒せたけど、大元の元凶は解決できなかったでショ?」
「そうですね」
「今回は、術者の討伐依頼が国から出てるわ。セルフィちゃんに手がかりを探して欲しいそうよ」
「えぇぇ……」
私に討伐出来る力はないのだが……。半目になって若干引いているといると、肩に居たベルジェは息まいてシャドーボクシングをしてヤル気を出している。はた迷惑な。
『ワシを術に巻き込もうとするヤツなど無礼千万。おい、ニンゲン。今度こそ仕留めるぞ!』
その様子は意気衝天といった様子であるが、ベルジュは忘れているようだ。
「いい加減、私を他の人と識別して固有名詞で呼んでって言ってるよね?思い出せないようなら昆虫標本みたいに貼り付けにして壁に飾って思い出す時間を上げますよ。神棚みたいで嬉しいですよね」
『う、むむぅ……セ、セルフィよ、今度こそ術者を血祭りにあげるのじゃ』
ようやく名前を引き出す事に成功するが、問題はいくつも有る。護衛はどうするか、手がかりは有るのか。何も痕跡が無いのなら解析の使用も無い。
それを伝えると、まず城へ行くようにと言われた。場所は王室内の図書室。入城証を渡されて、あっさり城へ送られる。
騎士の案内から、司書に引き継がれる。図書室に入った所には考古学科の室長が居た。
「今回は悪霊だと聞きましたので、文献から特徴が似た物を書き出しました。セルフィさんと、そちらのアーティファクトに頼んで見分ける事は出来ますか?」
室長は奥に招くと広い机の両端に本が山と積まれていた。
「その場合、現状は触れる物の無い私の方には何も出来ないですね。ベルジェは何か分かる?」
『フン……ワシより後の時代の術式を持ってこい。どうせ貴様らでは読み解けていない陣もあるのであろう。おそらく手法から言ってワシの時代から相当後だ。現代に近い。術式の時流を見ねばならん』
室長は脇に居た2人に命じて、時代順に魔法陣を抜き出させ始めた。
ベルジュは、一見協力的に見えるがそうではない。この間の事で、比類なき高さのプライドをへし折られたのだ。ここで引き下がる選択肢は無いだろう。
ベルジュは速読のように次から次へと魔法陣をより分けて並べている。
小一時間くらい経ったくらいだろうか。恐ろしいスピードで山を片付けていたベルジュの動きがピタリと止まった。邪魔にならないように後方のテーブルでお茶を飲んでいた私に向かって振り返る。
『並べ替えが終わったぞ。そっちのニンゲンも来い』
室長さんをそんな風に呼ぶのは止めなさい。
ざっと魔法陣を何らかの順番に並べているのが見える。
「これは……?」
室長さんも訳が分からないようだ。術者本人が書いたわけでは無いので、私にも内容は読み解けない。
『この一番時代の古い陣を見ろ、基本はこの形だ。そこから時代を経るにしたがって、中心から外回りに向かって変化していっておる』
つーっと魔法陣の中心から外側に腕を動かす。
『ここにある一番古い物は悪霊が影を操り、捕らえた人間から死に至らせ、死体を砂に変える術式が発動するものじゃった。これは、ワシの時代に有った陣とさして変わらぬから同じものだろう。しかし、時代が経るにしたがって、かの時代の者共より現代のニンゲンの魔力は劣化しておる者が殆どだ』
次々と紙を指してゆく。
『かつて陣の中心には術式のキモが凝縮されておったのだが、時代を経るにしたがって、中心の線が減って来て、代わりに外側に線を足しておる。再現しきれなくて、外に書き足して術を似たようなものに維持しているのであろうな。おそらく、この紙が先日の件に近い魔法陣だろう』
一番端に並べた紙をペタリと押す。
『これに似た陣を見つけるか、この陣を使う術者を探すか、だな』
「なるほど……」
考古学的に価値のある解説だったろう。どんな長生きの人間でも、5000年以上の時代の中で変遷してきたものを読み解ける者など居ないからだ。
陣が特定出来た所で、一番最後時代の陣の写しをもらって王城を後にした。
これで目印になる陣のヒントは手に入れた。あとは術者にかかわる材料が有れば良いだけだ。
ここまでくると、流石に私もスキルで役に立ちたい。今日の私は後ろでお茶を飲んでベルジュのちっちゃい背中を見ていただけだ。ベルジュに負けるのは何となく悔しい。
明日から、頑張るぞい!




