18 閑話2 お休みは着せ替え(にされます)
GWも最終日。夜にも更新に来ます。
サンド・ホエール事件から一ヵ月が過ぎた。
本日、私は休暇である。
ギルドは聖ノエルの日を除いて364日開いているのだが、流石に中の人も年中無休という訳では無い。ギルド嬢にも休みは有る。
今日は食料品と雑誌を買うために商店街に来ている。元々雑誌は雑貨やファッション誌を買っていたのだが、ベルジュが最近メキメキ現代の文字を習得してきていて、自分の時代とは違う時代の本を強請ってくる。
ジャンル問わずにやたらめったらと欲しがるので、一か月に一冊に決めさせた。諦めずに私の雑誌も読んでるけど、ベルジュにとって面白いのかは謎だ。
一通り買い物してから、お気に入りのカフェに入る。暑くなってきたので、今日はアイスティーの気分だ。一緒にツナサンドと卵サンドも頼む。天気のいい日のテラス席は控えめに言っても最高。(但し、パラソルの下に限る)
「あら、セルフィちゃんじゃない?」
聞き覚えのある声に振り向いてみると、サーリャさんが居た。爽やかな水色のワンピースを着ていて、今日は黒髪もおろしている。
「相席いいかしら?」
「どうぞ」
サーリャさんは向かいに座ってコーヒーを頼む。
それと同時に私が頼んだモンブランが来た。サーリャさんは私の方の荷物を認めた後、スプーンで遊んでるベルジュを見ながら言った。
「今日は買い物なのね」
「はい、食料品と雑誌ですね」
「もうお食事も終わりかしら」
「そうですね」
サーリャさんは、ニコっとして手をポンと打つ。
「じゃあ、服を買いに行かない?セルフィちゃんを着せ替えしたいわ」
着せ替えをしたい……?キャッキャウフフしながらお互いに服を合わせてみたりするわけでなく?
何か嫌な予感がしつつも、このキラキラした眼差しを見たら断りづらい。
「は、はい、いいですよ……」
私がタジタジしながら返事をすると、ベルジュはニヤッとニヒル……に見える仕草をした。
『フン、女の買い物は長いと雑誌に書いてあったぞ。ニンゲンの人生は短いというのに、そんな事に時間を使うとは無駄な事だな。劣等種め』
「どこから仕入れたのか、余計な知識に毒されているみたいね。教育が必要かしら。あなたに似合う、ぬいぐるみ用のフリフリバレリーナの服を着せてもいいのよ?」
『ばかめ、アーティファークトが服を着るか』
「古代遺跡から、服を着てる子供の人形が発見されてるわよ」
『ワシは玩具ではない!!』
私達が喧々囂々と言い争っていると、サーリャさんが取り成す。
「はーいはいはい。その貴重な時間は女の子には必要だから行きましょうねー」
こうしてカフェのお会計を済ませると、ブティックに連行されるのであった。
・・・・・・・・・・・・
商店街を抜けつつ、私でもギリ入れそうな敷居のブティックに連れて行ってもらう。ターゲット層は20歳前後だろうか。サーリャさんはトップス、ボトムス、ワンピースなど、次々に手に取ってゆく。
ほ、本当に着せ替え人形にする気だ……!
「これとこれとこれ……あ、これも似合いそうね!」
すごい量の服をどっさりと私に手渡して、サーリャさんはご機嫌だ。
そうして、試着室に放り込まれる事一時間。私がヘトヘトになっているのを他所に、サーリャさんは上機嫌に服をより分けている。既に服が山となっている、本で見た貴族の服選びみたいだ。
ほぼ、「あちらからこちらまでいただくわ」状態である。
「これ、買うわ」
店員が服を入れた手提げ袋が、既に三袋になっている。
「え、いくら何でもそんなに買ってもらえませんよ」
「大丈夫。この間の依頼が、すっごい実入り良かったから!私のお遊びに付き合ってくれたお礼よ」
「す、すみません。有難うございます」
お遊びというだけあって、すごい量になってしまった。もう、この季節洋服買わなくていいな。使われた金額が気になるが、怖いので聞かない事にしよう。
「私のせいで、荷物多くなっちゃったから送るわ」
「そんな、悪いですよ」
「大丈夫なのに」
そうなると、流石に手ぶらでは帰せないなー。
「晩御飯、食べて行きますか?」
「本当!?セルフィちゃんの料理、また食べたかったのよねー。氷雪のメンバーに言ったら這いつくばって悔しがるわ」
「!?這いつくばって!?」
喋りながら歩いていると、20分ほどで私のアパートに着く。
ガチャっとドアを開けると、テーブルの席を勧めてお茶を出す。
「わ、有難う。……セルフィちゃんのお家って意外にシンプルなのね。ベルジュちゃんが浮いてるわ」
『ワシが家具に負ける事なぞ無いわ』
「あ、でもドールハウスが有るわ。可愛い!」
『それはワシの城じゃ。羨ましかろう』
「へー、一国一城の主なのね」
ベルジュとサーリャさんは意外にスムーズに話している。それを背中で聴きながら調理を始める。パン粉を牛乳に浸している間に、玉ねぎをみじん切りにし、バターで飴色になるまで炒める。粗熱を取って挽肉とパン粉と卵と玉ねぎを合わせて、タネを整形していく。裏表に焼き色を付けると、蓋をして蒸し焼きにしていく。蒸している間にソースを作る。
レタスとトマトでサラダを作って、ハンバーグを一緒に乗せて出来上がりだ。トーストしたバゲットも一緒に出す。
「うわぁぁぁ、セルフィちゃんの手作りハンバーグ!!絶対美味しいヤツね!」
「いえ、レストランとかではないので、普通に家庭の味ですよ」
「でも、すごくいい匂いするもの!」
そう言うと、手を合わせてからハフハフと食べ始める。一人暮らしで普段は人と食事をしないので、誰かが自分の手料理を食べて喜んでくれるのは新鮮だ。
二人と一匹。一匹は食べないが、誰かと食卓を囲むのは、たまにはいいものだ。
だが私が良い気分になってる所に、スプーンをテーブルから落とす遊びをしだしたベルジュをデコピンで弾き飛ばしておいた。




