15 幕間1 その頃の氷雪①-1
一方、その頃……
馬車で2日、馬車で入れるギリギリの所で降りてから歩く事3日。昼間は熱波で体が高熱のように熱くなり、夜は凍る保寒くなり指先まで冷たくなる。寒いだけよりも、寒暖差のせいでよほど体が付いていくのが大変になる。体を鍛えた冒険者ですら、この環境は堪える。
”氷雪”ではサーリャという魔法操作が卓越している魔術師が居るから、それでもかなり楽だろう。暖を取るのに小さな火を起こしたり、小さな氷を出して冷気を出して纏わせてくれるのは大変に助かる。大きな魔法は力を出せば比較的楽に発動出来るが、魔力が多い物が小さい魔術を使うには繊細なコントロールが必要になるのだ。
今は夜。寒さが肌を刺すように感じる。
少し離れた場所で”悠久の風”が野営準備をしている。合同パーティーと言っても不必要に距離を詰める必要は無い。自分のパーティー内なら気心が知れているが、他のパーティーが入ると気疲れする。
冒険で何が危険かと言うと、精神的に疲労してしまう事だ。体が動けていても精神が弱っていると判断力が鈍るし、逆に気持ちが強ければ多少の無理はきくものだ。
双方火を焚いて、飯の支度をする。ギルドから配給された、栄養は有るがあまり美味しくない固形食糧を食べながら、沸かしたお湯でせめてもとティーパックを入れてお茶を淹れる。
このティーパックは、ギルドで俺らの今回の担当になったセルフィさんからの差し入れだ。乾燥した柑橘系のピールが入った紅茶で、喉がスッキリすると同時に、ホッとする。
サーリャなどはセルフィさんの手作りだと言うだけで喜んでるし、セイカは香りを嗅いでニコニコしている。ガイアスですら、満足して胸から息を吐いている。
彼女の心配した眼差しを思い出すと、少しくすぐったかった。
「あーあ、セルフィちゃんのご飯が食べたいわー。サンドイッチとかおにぎりとか、簡単な物でも、何故かすごーく美味しかったのよね」
サーリャがため息を吐きながら呟く。それには俺も同感だ。
「冒険者は体が資本ですからね。ごはんが美味しければ気力も回復しますし。食料を確保してくれた事だけでも有難くは有りますけどけど……」
セイカも無理に自分を納得させながらも、大して美味しくない固形食物を食べる。
明日は、先日目撃されたエリアに到着する予定なので、少しでも体を休めておきたい。
ここまではただのスコーピオンとクリムゾン・スコーピオンだけで、怪我らしい怪我も無かったが、明日は苦戦するだろう。連携するまでも無く倒せてきた。なにしろ、Bランクのアライアンスのパーティーを半壊させた魔物だ。警戒してし過ぎる事は無い。
そんな物騒な場所なのに、風のない夜の砂漠の空は絵にも描けない程美しい。
口から出る白い息を見ながら、また国に帰る所を思い浮かべた。これが終わったら、また普通の依頼や自分たちの迷宮探索に集中出来るだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・
現地に到着すると、少し小高い岩の上に登る。ここは所々岩も有る砂漠で、岩の上に登ると見晴らしが良い。確かに見ただけでは分からないし、普通は遠くの岩の割れ目から何か大きい物が出てくると考えるだろう。
「それじゃあ、とにかく行ってみるか」
”悠久”のエンリケが即座に岩から降りようとするが、即座にサーリャがフンと鼻をならしながら半目で見る。
「バカね、無防備に降りていくなんて。下から居場所を察知されてパックリか、浮いてきて鳴き声で混乱するかどちらかよ」
「じゃあ、考えがあるのかよ」
エンリケはムッとして反論してくる。
「最初に土魔法で上に人がいると錯覚させるように地面を揺らすわ。そっちの魔術師もそれでいいわね」
「あ、ああ。それでいい」
魔術師が自信なさげで心配では有ったが、問題はヒーラーであった。
「じゃあ、ヒーラーのあなたは最初に自分のパーティーに精神防御の魔法かけて」
「あ?そんなの使えねーよ。俺はただのヒーラーだぜ?怪我の治療が本文だっての」
驚きだ。それでどうやってSランクに上がって来たのだろうか。はーっとガイアスが息を吐く。
「セイカ、”悠久”の分まで頼む」
「いいけど……」
セイカは、明らかに納得していない。うちのパーティーは皆そうだろう。うちはチームワークを大事にしているが、あちらは今まで力押しでランクアップして来たのが容易に想像出来た。
「じゃあ、50Mくらい先の地面を二人でばらけて揺らすわよ」
サーリャがスタッフを構えると、小声で言う。
ゴゴゴゴゴゴゴ
地面が少し揺れ後に蟻地獄のように渦が出来て、次の瞬間サンド・ホエールが砂の中から飛び出してきた。
ドドドドドドド
揺れが酷くて、立っていられなくなって必死に踏ん張る。
ピュイ---------!!!
地面に再び潜る寸前に、鳴き声が直接頭の中に響くような感じで響いた。なるほど、これが恐慌を起こすと言う鳴き声か。
耳が痛くて音が聞こえづらくはあるが、混乱を引き起こすような事は無い。セイカは国の神殿から籍を抜けるのを止められるくらいの優秀なクレリックである。うちに居てくれているのが不思議なくらいだ。
ザザン!!
砂飛沫を上げて再び潜っていく。
これは相当手古摺りそうだ。
戦闘は次回へ
調べてみたら、最近のミリ飯(災害時用の食事)も美味しいラインナップなんですね。缶に入ったスパムみたいなものを想像していました。
ここに出てくるのは高カロリーの、カロリ〇メイト的なイメージです。お水が無いとキツいやつ。あ、カロメは美味しいと思ってますよ!




