120 海上の戦い
明日もお昼更新です
一晩経った本日は薄曇り。戦う前に、すでに私の心も薄曇りだ。
手伝いを申し出はしたけど、別にリヴァイアサンと進んで戦いたい訳では無いので、気分は上がるわけが無い。
しかし、セイカさんに睡眠魔法をかけてもらって一晩ぐっすり寝たので、体調は悪くない。ハーフパンツの下に黒いトレンカを履いて、聖者のブーツを合わせる。軽く体を解すと装備の位置を見て確認する。
腰から巻取りリールのハーネスをベルジュに着けて、肩に乗せる。ベルジュはぶちぶち文句を言ってたけど、私達には40m問題が有るので、離れすぎないように付けておかないといけないのだ。
「みんな、これを指に着けてくれ」
そう言って、イクリスさんが一つ一つ指輪を配っていく。それは、街中を駆けずり回って揃えた「水渡りの指輪」だ。これを付けていれば水上歩行が可能になり、水に浮くので今回のシーサーペント戦では必要不可欠だ。それに加えて、私は《切り取りの匣》を手に持つ。この小箱が鍵だ。
しかし、そもそもどうやって見つけるのだろう。相手は魚と同じで、どこに居るか分からない。私の疑問が伝わったのか、サーリャさんが横から声を掛けてくる。
「雷魔法を、あちらこちらに落とすの。立て続けにやれば、あっちはイライラして出てくるから」
そ、そんな荒業を……。
「準備はいいか?」
イクリスさんが確認を取ってくるので、ベルジュ以外は全員頷く。
私も、”支配の王笏”と《切り取りの匣》を構える。
ベルジュだけは暢気に肩で準備運動をしている。君、ほぐれるような体してる?
陸からはおよそ50m程。それでも水深は結構深いそうだ。前回は陸まで乗り上げて来たと言っていたけど、どうやってやったんだろう。
サンダー!
サンダー!!
サンダー!!!
サンダー!!!!
サーリャさんが海面に、不規則に雷を落としていく。
雷は局地的な雨のように降り注ぎ、降っては止み、降っては止みを繰り返している。それをしばらく続けていると、海面が泡立った後に、ググッと持ち上がった。リヴァイアサンだ。海上に出ている部分だけで20mほど。水面下にどれだけの体が潜んでいるのか、正確には分からない。私が予想したよりも、ずっと大きかった。
シャーーーッ!
リバイアサンは、水面が揺れる程の大きな鳴き声を出した。”水渡りの指輪”は水に直接足を付いている訳ではないので、波に足をとられるということは無い。逆に水面下には入れないので、攻撃できるのは水面上だけだ。
アイスフィールド!
サーリャさんの魔法で、水面の広い範囲が凍り付く。
「あまりもたないわよ!」
言葉通りに、リバイアサン(仮)はギリギリと力を入れて、氷を砕かんとする。その隙に私はスキルを使った。
”解析”
視界の中に色々な情報が見えるが、情報を引き絞っていく。
・シーサーペント
大きなエラを持つ。体の殆どは水の下にあり、呼吸の時のみ海面に上がってくる。
濃い毒の息を吐き、生物を死に追いやり捕食する。
弱点は雷、左エラの内側。
わぁ、前回捕食されなくて良かったね……。
私の解析結果を聞くと、ガイアスさんは正面で囮になり、イクリスさんは左の方へ回る。私は《切り取りの匣》を使うべく、ガイアスさんの後ろに位置どった。
右手に持ったナイフで指を傷つけ、左手にもった”支配の王笏”を構えて発動させる。
数えきれないほどの荊がシーサーペントの首にからみつくと、何か言いたげな視線が一瞬皆から感じるが、今はそんな場合では無いので、知らんふりをする。
その隙にサーリャさんの雷魔法が降り注ぎ、イクリスさんはエラの後ろに回り込んで、その後ろからグサリと突き刺した。
痛さのあまりにリバイアサンはのたうち回り、その拍子に私の荊は力尽きて消失する。荊が消えてから口を閉じ、溜めの姿勢を作った。
「集まってください!」
これがおそらく毒のブレスの前触れだ。シーサペントはググっと口を膨らせると、ブワッと息を吐く。
私が《切り取りの匣》の蓋を開けると、毒の霧はどんどん小箱に吸い込まれていった。一瞬空気が無くなったかのようない息苦しさを感じたが小箱の範囲内だったからだろう。光も吸い込まれるので、一時視界が悪くなったが、それはあちらさんも同じだろう。
『仕方ない奴らだな』
ベルジュは手の平から黒い影を迸らせてリバイアサンを捕獲した。どうやら、ベルジュの呪いの力の方が強いらしく、シーサーペントはそれから逃れようと焦って体を捻る。
「氷が割れるから張り直すわ!」
サーリャさんが高らかに声を上げたその刹那、リバイアサンは近くに居イクリスさんに狙いを定めた。
「ダメ……!」
危ないとは思いつつも、私の体はそちらに向けて走り出した。
私の身一つで、何が出来ると言うのだろうか。
頭では理解していても、感情は着いてきてくれなかった。
ブクマとか星とか御手間でなければ宜しくお願いします。




