11 守備範囲が広すぎるのも問題
アリスさんの癖の話
遺跡の行方不明者探索救助の後は一週間の休みをもらい、結局ギルドを3週間ほど空けてしまうことになった。休みをもらったが良いが3日は疲労でベッドから出られなかった。旅程で周りが知らない人しかいなかったのに加え、スキルの乱用でとにかく疲れていたのだ。
セイカさんの治療と高ランクポーションの手厚い看護が有っても、こればかりはどうしようもなかった。クレリックでも精神の疲労回復は出来ないのだ。
しかし、王国からの手当てと冒険者ギルドからの特別手当が出たので、速攻許した。
尚、ベルジェは自分の力を見せつける事が出来て上機嫌になり『ワシの力がようやく分かったか、敬い畏れ、ひれ伏せニンゲン!』と、私の周りを呪いの歌を歌って踊りながら回るという、迷惑極まりない儀式をしていたのでドールハウスに閉じ込めた。ガタガタとドールハウスが動いていたが、布団を被せて黙殺する事にして放置していた。我の眠りを脅かすものに災いあれー。
そして本日出勤してみたところ、アリスさん始め皆に相当心配をされていた事が判明した。ギルド長には帰ってからすぐに報告したのだが、その場ですぐに家に帰らされたので私は他の人には会っておらず、ギルド職員には大丈夫だとだけ言って済ませていて皆は詳しい事情は知らなかったとか。
「もう!もうもう!心配してたんだからね!怪我とかしてない?」
アリスさんはそう言って、ギュッと私の手を握ったかと思うと、私の周り確認しながら回り始めた。実は戦闘の時に手首を骨折したのでセイカさんに治療してもらったのだが、それは内緒にしておく事を心に決める。大丈夫だと言ってもアリスさんは納得しない様子で「むぅぅ」と訝みながらも解放してくれた。
しかし、結局は無事でおめでとう会という名のお食事会に連れ出されてしまう事になった。場所はいつもの”夜霧のワルツ亭”だ。
アリスさんが飲みたいというだけの説もある。
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席について注文の物が来ると、アリスさんはソルティー・ドッグで口を湿らせながらナッツを摘まむ。今日は、可愛く飲むに留まるのかと思いきや目をキラーンとさせて前かがみになって言う。
「さあ、イケメンとの話を洗いざらい吐いてもらおうか」
酔いが回らない内に肝心な内容を聞きだそうとしただけだったらしい。可愛い時間は一瞬だけだった。
……………………やっぱり、アリスさんはアリスさんである。
話せそうな部分だけを掻い摘んで話すと、アリスさんは時には質問して、時には頷きながら聞き入る。ひとしきり私から話を聞きだすと、机に肘をついて、夢見るように言う。
「はぁぁ、やっぱりイクリスさんって素敵。そんな戦闘を間近で見たら、守ってもらってるみたいで好きになっちゃいそう」
その理屈だと、五匹を一瞬にして瀕死にするという、戦闘で一番活躍したのはベルジェなのだが、物の数には入れてもらえないらしい。兎はだめだね。可哀そうに。
「それで、そのセイカさん?可愛い系でも年上なら合法だよね。戦士じゃないタイプもイイネ!」
ぐっ!と親指でイイネすると、次の瞬間にはアリスさんは目を瞑って妄想モードに入った。こうなると戻ってくるまで時間がかかるので、オリーブでも食べながら放っておくに限る。今までは同世代か少し上程度(に見える)男性の話しかしてこなかったので知らなかっただけで、年齢さえ大丈夫なら、年下(に見える)もいけるらしい。新しい扉を開いてしまったか……。
絵面が完全にイケナイ感じなので、止めたい。
私は、セイカさんがアリスさんに捕食されない事を祈るばかりである。
可愛くカクテルを飲んでいたかと思えば、いつの間にか知らない内に大ジョッキでエールを飲んでいて、ぷはーっ!っといつものように豪快に息を吐く。さっきの夢見る乙女顔も台無しだ。
「それにしても、最近お城に呼ばれる仕事多いわね。城内の鑑定士って無能なのかしら?あ、でもセルフィはいくら給料良くてもお城になんて転職しないで!私を捨てないでぇ」
「縋りつかなくても大丈夫ですよ。いやですね、アリスさん。庶民が城内に上がれるワケないでしょう。酔うのもほどほどにしてくださいよ。ホラホラ、もう帰りましょうね」
「いやいや、まだイケるってぇ」
オリーブとチーズをもぐもぐ食べながらもお酒は進んでいくので、酔いは酷くなる一方である。潰れる一歩手前になってしまったので、支えて歩けるうちに家まで送ってしまおう。前に遊びに行った事が有るので住所は入手済である。
通りで馬車を拾うと、泥酔状態をアリスさんを念のために部屋の中まで送って行った。
次の日に二日酔いじゃなきゃ良いけど。
酒は呑んでも吞まれるな!節度を守って楽しく呑みましょう。
ところで、皆さんは「なろう」って休みの日は何時ごろに読まれるのでしょう?
調べてみたら20時位が多いとの事なのですが。




