116 理由
明日は昼更新です
ギルドで聞いた所によると、最低限の治療をし、各々の家に戻って静養しているらしい。ガイアスさんは実家、セイカさんは神殿へ寄った後に自宅へ、サーリャさんは友達の家に行ったらしい。
イクリスさんは他の場所に行ったという話は無いので、自宅に居るんだろう。
私は食材を買い込み、イクリスさんの家のチャイムを押す。
部屋の奥からガタンガタンと言う派手な音がしてから、ドアが開く。
「セルフィさん、来てくれたの?」
『ワシもおるぞ』
「そりゃ来ますよ……。セイカさんが居てもこれだけの被害なら、かなり強かったんですね」
私はグイグイとイクリスさんの背中を押し、ベッドに連れて行く。そうしてベッドに押し込むと、無理矢理布団をかけて寝かせた。毒が完全に抜け切っていないので、熱が出ている。
私は持ってきた氷嚢に、台所で氷を入れ、イクリスさんのおでこに乗せる。
ちなみに、氷を砕いたのはベルジュのシールド魔法である。本来とは用途が違うが、何事にも応用は大事だ。
「眠りますか、それともご飯食べますか?」
「ご飯が食べたいな」
「分かりました。濡れタオルを渡しておきますので、ご飯を作ってる間に一端、体を拭いておいてくださいね」
私は台所でお湯を浸したタオルを絞り、イクリスさんに渡す。
その間に、お米を研いでから、水と共に火にかけていく。胃に優しいのは卵粥だろうか。
途中でアクを何回か取り、それなりに米が柔らかくなったので、溶き卵を回し入れる。塩の他にちょっとだけ顆粒出汁を入れると、くつくつと鍋が小さく煮立ち、いつでも食べられるように出来上がった。
「良い匂い……」
トレイにお皿とスプーンを乗せ、サイドテーブルに乗せる。
そうすると、イクリスさんはフーフーとしながらお粥を食べ始めた。
顔が赤いせいか、妙に色っぽい。いや、私は病人相手に何を考えているんだ。いかん、いかん。食べ終わるのを見届けると、イクリスさんは、どさりと背中からベッドに寄りかかる。
「何が有ったのか、聞いてもいいですか?」
「そうだね。セルフィさんに言っておいてもいいかな」
話はこうだ。
シーサーペイントと依頼書に書かれていた魔物は、どうやら変異種だったらしく、海から引きずり出す事には成功したのだが、毒の霧を吐いてきたらしい。それ自体はシールドをかけたのだが、あちらの方が一枚上手だった。力も強く、ガードしきれなかったそうだ。
毒の霧も思ったより強く、セイカさんが解毒するも、かなり疲弊したので一度帰って出直す事にしたらしい。
「取り敢えず、熱を下げましょう。セイカさんも神殿に行っているようなので、解熱剤買ってきました。今、水持ってきますね」
「…………………………」
「蜂蜜で溶きましょうか?」
「いや、大丈夫だから」
解熱剤は独特の苦みとエグみが有るので、子供などは蜂蜜に溶いて飲むことが多いのだが、苦いのが苦手なのだろうか。
『ハハッ、苦みの強い物が飲めないなど滑稽だな』
でも、君は食事しないから苦みとか分からないじゃん。
イクリスさんにもプライドがあるだろうから、粉薬と水を渡すと、素直に飲んだ。
「あとは寝ちゃってください。寝入るまで居ますから」
「有難う」
シンとした空間で、イクリスの苦し気な呼吸音だけが響いていた。
それが落ち着いた寝息になるのを確認してから、音を立てないようにドアを閉め、合鍵で鍵をして家を出る。
「さて、お許しは貰えるかな」
『何がだ?』
「王城の鑑定科に、丁度良いアーティファクトが有ったんだ。他国に行くための主要海路だから、借りるのもお許しが出ると思うんだよね」
『どんなものなのだ』
「それは行ってのお楽しみ」
私達はお城につなぎを付けられるギルド長に話しをする為に、ギルドへ向かう。歩く事25分。歩く事に飽きてきた頃に、ようやく冒険者ギルドに着いた。
私は職員用の出入り口から入り、二階のギルド長室前まで来てノックをする。
「どうぞぉ」
「ギルド長、失礼します」
「あら、セルフィちゃん、最近は非番の日にも働いてるのね」
ギルド長はそう言いつつも、ミニキッチンで紅茶を淹れてきてくれる。
「それで、どういう用向きかしら」
ギルド長の、こうズバッと切り込んでくる話し方は、今は楽だ。
「”氷雪”がシーサーペントの討伐を失敗したことは知っていますよね。あそこは国の輸出入の主要回路ですし、鑑定科に有ったアーティファクトを借りたいんです」
ふぅん?とギルド長は首を傾げる。
「じゃあ、話は通してあげるけど、交渉は自分でするのヨ」
「わかりました」
やったね!後は明日の交渉次第だ。
シーサーペントの大きさは資料探しても分かりませんでした……




