114 食事の後は
ちょっと短いです。
明日はお昼〜夕方更新です。
「まあ、それはともかく、少し休んだらまた新しい依頼受けないとね」
サーリャさんが、ポリポリと揚げパスタを食べながら言う。ちょっとお行儀が悪い。
『冒険者と言うのは、根無し草なのだな』
「それでも私達はマシじゃない?それぞれ、家を借りてるもんね。本当に根無し草だったら、宿屋で済ましてるわ」
『フム……そういうモノか』
「そういうモノよ、ベルジュちゃん」
サーリャさんはベルジュとお店の紙ナフキンを使って、紙相撲をしている。
ベルジュは地上に出てからというもの、私と同じタイムスケジュールで動いている。朝明るくなってから起きて、定時に退勤するのが普通だ。冒険者の生活は、ベルジュにとっては不思議なのだろう。
「次は、セルフィさんを休ませてあげられる依頼が良いですね」
「そうだな。ここの所ずっと同行を頼んでいる」
セイカさんとガイアスさんは先ほどとは反対に落ち着いていて、こちらの事を慮ってくれた。
嬉しいような、嬉しくないような。
視線を感じてイクリスさんの方を見ると、何とも言えない渋い顔をしていた。私と同じで複雑な心持ちなんだろうか。私はへにょっと笑い、小さく手を振って見せる。
私を休ませる依頼か……嬉しいような寂しいような。
「正直、暫くは明るい場所の依頼が良いですね。僕らも暗い場所ばかりの依頼だと体がおかしくなりそうですし。そうなると、うーん……外の討伐系ですかね」
サーリャさんも頷く。屋内だと打てる魔法も限られてるのよね。爆発系とか出来ないし」
サーリャさんはトトトン!と指で机をノックして、ベルジュの駒を倒す。ベルジュは四つん這いになって悔しがっていた。相変わらず負けず嫌いだな。
それより、サーリャさんの魔法は、あれ以上に強いと申すか。十分怖いんですけど!
「では、屋外の討伐系で探そう」
ガイアスさんの言葉に、皆で首肯する。
「各々5日くらいゆっくりしてから、ギルドの依頼ボード前に集まろうか」
五日後に集まる予定を立てて、その日は解散となった。
「セルフィさん、この後の時間は暇?」
「ええ、今日は休みを入れてますけど……」
「じゃあ、せっかくだし、デートしよう」
イクリスさんは私の手を軽引き椅子から立たせると、上着を持ってきて、肩にかけてくれた。私はそのスマートさに驚くばかりだが、慣れるって事は、それだけ付き合ってた人がそれなりに居たのかもしれない。私は宙をみながらぐぎぎと歯ぎしりすると、横からイクリスさんが顎を肩に乗せ、すり寄せて腰を引き寄せる。意外に犬っぽい所が有るんだな。
私はイクリスさんの過去の事情など彼方へ飛んで行ってしまい、頭をなでなでした。
そうすると、イクリスさんが大きく目を開き、驚いた顔をする。
「あれ、頭を触られるのとかダメでした?」
「いや、そんな風に扱われるのは初めてで、ビックリしただけ」
そう言えば、恋人間で女性が男性の頭を撫でるのってどうなんだろう。今まで「そういう経験」が無かったから、何が正解か分からない。
「私が嫌な事したら、嫌って言って下さいね」
「多分無いと思うよ」
イクリスさんが口の中で「寧ろ俺が……」とブツブツ言っていたが、よく聞き取れなかった。
『お前らの仲は、スカラベの歩みより遅いな』
どういう例えだ。
ベルジュが目を眇めて、ため息交じりで言うが。これ以上、速攻で来られたら、私が死んでしまう。
兎には分からないだろうけど、人の歩みはそれぞれなのだ。
「さ、行きましょう」
私は家を出た時と反対に、自分からイクリスさんの手を引っ張った。イクリスさんは一瞬手をこわばらせたが、素直に私に従う。
さて、この後はどうしようか。娯楽と言えば美術鑑賞とかオペラ鑑賞、図書館かショッピングくらいしか思い当たらない。
「どこに、行きたいですか?」
「それ、大体の場合は、男が女性に聞く事だよね。そうだな、映画館とかどう?」
なるほど。たしかにデートと言えば映画館と言えない事も無い。私達は手を繋ぎ、映画館へ足を向けた。




