108 食事を摂る場所と40m問題
明日は日曜なので、お昼~夕方更新です。
やや湿った空気のダンジョンを、ひたひたと歩く。人工ダンジョンは道が有る程度整備されているので、歩くのは、そこまで苦労はしない。気持ち悪い事は変わりないけど。
セイカさんとサーリャさんの魔法で不自由はしていないのだが、前後が暗い道を進むという事は不安なものだ。
ただ道の途中途中にトラップが有るので、私も”解析”しながら歩く。効果時間が長くなったとは言え、使用時間に限度が有るので、休みを挟み、少しずつ進んでいる。
「しかし、思ったよりトラップが多いんだな。セルフィさんが居るから避ける事は出来るけど」
イクリスさんが進んできた道を眺めて呟く。しかし、私はシーフでは無いので、解除は出来ない。せいぜいが、回避するくらいだ。目をしぱしぱさせて視野を調節していると、その辺を見回っていたガイアスさんが帰って来た。
「この先は迷路になっているな」
「じゃあ、ちゃんとマッピングしないといけませんね」
セイカさんがノートを出し、流麗な文字で図と注意書きを書いていく。何と、セイカさんはマッピングも出来るらしい。何と素晴らしい。
私が尊敬の眼差しで見ていると、彼は照れくさそうに前髪を直す。
「本職みたいに、もっと複雑な場所は無理ですよ。人工ダンジョンはマッピングしやすいので」
残念ながら、私には視界に入れた物しか解析出来ないので、地図が見れるような、オールマイティなものでは無いし、見えない場所に居るモンスターなどは分からない。
けれど、私は私にしか出来ない事をやるのみだ。そう、”解析”とか”解析”とか”解析”とかね。まあ、一応”支配の王笏”も持ってきてはいる、しかし、今だに自分の魔力量を私自身が分かっていないので、どれくらい役に立つのかも分からない。
私はトラップ回避の他に宝箱を見つけつつ、トラップが解除出来ない物は、片っ端からマジックバッグに突っ込んでいる。このダンジョン、結構実入りがいいな。
しかし、その分難易度は跳ね上がっており、”氷雪”が戦っている時は、ベルジュを肩に乗せて後ろに下がって、心の中で応援するばかりである。
大ナメクジや、狼男のワーウルフ、小さいドラゴンとハエを併せたようなドラゴンフライなど。”氷雪”はSランクだから、こんなものはどうって事ないだろうけど、一般人にしてみれば、充分怖い。
敵もBランクなど、結構強いのだ。ギルドの魔物図鑑で見たけど、実物を見るとは思わなかった。
壁で”氷雪”が敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げをしているのを見ているだけでは有るのだが、たまに敵の首がこちらまで転がって来て心臓に悪い。血だけはベルジュがシールドで守ってくれるので、それを気にしなければ、平穏そのままだ。でも、食欲無くすなぁ。
そうは言っても彼らは慣れた物なので、普通に食事を摂っている。今日はお肉とお米を混ぜて作った焼き飯的なメ
ニューと、野菜スープだ。彼等は汗を流しているのでお肉マシマシにして、心持ち塩を多めにした。
私は遠くに有るであろう、魔物の首を気にしない事にして必死にご飯を咀嚼する。食べない事には皆に付いていけないからね。特に私は体力が無いし、食事を摂らないわけにいかない。
今夜は殺戮現場から距離をおいてもらい、テントを張る事になった。
「ここで8階層か……今日は、ここまでにしよう。明日はまた下に降りるから、各自、充分に睡眠をとってくれ」
私は申し訳ないながら寝る前にセイカさんに回復魔法をかけてもらった。疲れすぎても眠れないしね。普段は魔力を使ってもらいたくないから、なるべく我慢しているのっだが、足を引っ張る方が問題だ。
テントに入った所で、私はベルジュの方を見て言った。
「ベルジュが、力持ちだったら良かったのに……」
『ワシは、そのような用途で作られておらんからな。ゴーレムなどとは違う』
ピーン!
「それなら、城に行ってゴーレムと契約すれば、こういう時に運んでもらえたりするんじゃ……」
『や、やめておけ。ゴーレムは簡単な命令しか聞けぬから、意外に役に立たんぞ』
どうやら、ゴーレムと契約するのはベルジュ的にはダメらしい。
「それなら、もう少しセルフィちゃんに優しくすればいいのに」
後からやってきたサーリャさんに、私が思っていた事を言う。
ベルジュは私がベルジュの事を敬っていないと言うが、主従の関係では私が主なので、ベルジュが私を尊重すべきだ。私が居なければお城に置いて……いや、だめだな。40m問題が有る。
私が吹っ飛ぶか、ベルジュが吹っ飛んで、どちらかがそれなりの痛い目をみるのだ。それは避けたい。あれから巻取り型の紐をベルジュに着けているが、いつベルジュが突っ走るか分からない。一応以前の事で懲りたと思いたいけど。
「ふあー、疲れたわね。今日は、もう寝ましょう」
「そうですね。私も明日に備えないと」
その夜は、セイカさんにかけてもらった回復魔法が効いて、健やかに眠る事が出来た。




